読書感想文コンクール AI悪用への懸念から応募要項を改定へ

小中高校生の読書感想文コンクールを主催する全国学校図書館協議会は、AI=人工知能を悪用して作成された感想文が応募されてくることを懸念して、来年度の応募要項を改め、盗作や不適切な引用があった場合に審査の対象外となり、事実上の失格となることがあるとする規定を追記することを決めました。

「青少年読書感想文全国コンクール」は、半世紀以上の歴史がある読書感想文コンクールで、小学校から高校まで、学校を通じて応募を受け付け、毎年、表彰が行われています。

コンクールを主催する「全国学校図書館協議会」によりますと、文章が生成できる対話型のAIの利用拡大を受け、コンクールの応募要項について昨年末から検討を続けてきた結果、AIの悪用の懸念が払拭できないとして、応募要項を改めることを決めたということです。

具体的には「盗作や不適切な引用等があった場合、審査対象外になることがあります」という規定を追記します。

AIが生成した文章をそのまま引用し、さらに執筆者本人がAIの利用を認めた場合などに適用されるということです。

一方、文章の校正にAIを使うことについては問題ないとしています。

新しい応募要項は来年度のコンクールから適用されるということで、来月1日以降にホームページなどで周知されるということです。

専門家「一定の理解できる あらぬ疑いかからないよう配慮も」

人間とAIの関係などを研究する情報学が専門の国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、「読書感想文コンクールの趣旨、児童生徒が本を読む楽しさを体験し、本を通じて考える力や人間性を育むという観点から考えると、AIに頼ることはその趣旨に合いません。その意味で言うとAIの利用を制限することは一定の理解ができます。一方で、文章を見るだけではAIを利用したのか、そうでないかは分からず、応募者にあらぬ疑いがかからないように配慮することも大切です。AIを利用できる範囲と禁止する範囲を明確化することも今後、求められると思います」などと話しています。

海外では規制の動きも

文章を生成するAIの利用は世界中で拡大していますが、教育現場などでは一部、規制の動きもあります。

海外では1月にフランスの大学が「盗作」などへの懸念から、論文やプレゼンテーションの作成に対話型のAIの「ChatGPT」やそのほかのAIをベースとしたツールの使用を禁止すると発表しました。

また、アメリカでもニューヨーク市の教育委員会がことし1月、子どもたちがみずから考え、問題を解決する力を養う妨げになるおそれがあるとして、「ChatGPT」の使用を禁止しました。