大相撲春場所 新関脇 霧馬山が初優勝 優勝決定戦 大栄翔に勝つ

大相撲春場所は千秋楽の26日、新関脇の霧馬山が小結・大栄翔との優勝決定戦に勝ち、初優勝を果たしました。

春場所は25日の14日目を終えて優勝争いは2敗で単独トップの小結・大栄翔と3敗の関脇・霧馬山の2人に絞られました。

千秋楽の26日は結びの一番で2人の直接対決が組まれ、霧馬山が突き落としで勝って12勝3敗で並び優勝決定戦が行われることになりました。

そして優勝決定戦では、霧馬山が土俵際で大栄翔を突き落とし、物言いがついたものの協議の結果、軍配通りに霧馬山が勝って初めての優勝を果たしました。

千秋楽の直接対決でトップに並び、その後の優勝決定戦も制したのは平幕の阿炎が初優勝した去年の九州場所以来です。

霧馬山は新たに関脇に昇進した今場所、6日目の錦木との取組後に左腕を痛めたようなそぶりを見せたほか、7日目で3敗目を喫するなど苦しい前半戦となりました。

しかし、中日8日目以降は持ち前の動きのよさを生かしてまわしを取る展開に持ち込んで白星を重ね、12日目には3敗で並んでいた関脇・豊昇龍に勝って優勝争いに踏みとどまりました。

春場所は昭和以降初めて横綱と大関が不在となる中で霧馬山が初優勝し、関脇としての存在感を示しました。

霧馬山「最後に勝って最高」

初優勝を果たした霧馬山は「本当にうれしい。すごく緊張している。そんなにいい相撲ではなかったが、最後に勝って最高だった」と心境を明かしました。

いつから優勝争いを意識していたかを問われると「あんまり考えていなかった。1日一番という感じだった」と話しました。

星の差1つで追う展開で千秋楽を迎えたことについては「少し緊張していたが自分の相撲を取ろうと思っていた」と述べました。

そして大関昇進がかかる来場所に向けては「15日間、1日一番しっかり頑張る」と意気込みを示しました。

大栄翔「悔しい気持ちを忘れずに稽古」

単独トップの2敗で千秋楽を迎えた小結・大栄翔は関脇・霧馬山に逆転優勝を許し、「悔しい。気合を入れていったが、土俵際の甘さが自分の弱いところだ」と振り返りました。

そして、来場所に向けては「今場所はいい相撲が多かったので、来場所もいい相撲を15日間通して取れるように頑張りたい。悔しい気持ちを忘れずに稽古したい」と前向きに話していました。

また、2回目となった技能賞の受賞については、「押し相撲で技能賞はなかなか取れないと思うが、評価を頂いて、本当に自信になるし、もっともっと突き押しの技術を極めていきたい」と話していました。

八角理事長「どっしりとしてきた」

日本相撲協会の八角理事長は優勝した霧馬山について「きょうもそうだがどっしりとしてきた。駆け引きなくいって、だからいなせたというか、はたけた」と相撲の内容を評価しました。

また、大関昇進を目指すにあたって課題について聞かれると、「立ち合いで押し込まれたが、押し込まれないこと。立ち合いの重さや速さが出れば、楽に勝てるようになる」と話していました。

また、優勝決定戦で敗れた大栄翔については、「立派に12番勝っているわけだから、来場所頑張ってほしい」と期待を込めていました。

今場所は昭和以降で初めてとなる横綱と大関が不在の場所となりましたが、「横綱・大関はいないが、最後の一番まで優勝がわからないということは、三役が頑張ってくれたということだ」と話しました。

霧馬山 モンゴルでは遊牧民として生活

初優勝を果たした霧馬山はモンゴル出身の26歳。

左前まわしを取っての寄りや投げ技が持ち味です。

モンゴルでは遊牧民として馬などの家畜を飼いながらゲルと呼ばれる移動式の住居で生活していました。

来日してからは陸奥部屋に入門し、平成27年夏場所の前相撲で初土俵を踏むと三段目で優勝を果たすなど1年で幕下まで番付を上げました。

その後は左ひざのけがなどに苦しみましたが初土俵からおよそ5年で新入幕を果たし、次の年には新三役となる小結に昇進しました。

同じモンゴル出身の元横綱、鶴竜親方の指導も受けながら実力を伸ばし、ことしの初場所では三役で初めてのふた桁となる11勝を挙げ、今場所は新関脇として臨んでいました。

元横綱 鶴竜親方に刺激受け稽古

初優勝を果たした霧馬山、同じモンゴル出身の元横綱に刺激を受けて相撲に打ち込んできたことで着実に実力を伸ばしてきました。

霧馬山が新入幕目前だった令和元年の九州場所の前、元関脇・逆鉾の井筒親方の死去に伴って当時、横綱だった鶴竜親方が陸奥部屋に移籍してきました。

これをきっかけに霧馬山は毎日、稽古をつけてもらうようになり横綱を胸を借りることで「すごいな。もっと上に行きたいな」と意欲を高めていったといいます。

鶴竜親方からも目をかけてもらい、体を大きくするよう指導を受けると食事の量にも気を配るようになったということで体重も10キロほど増えました。

おととし鶴竜親方が引退してからも引き続き指導を受け、特に立ち合いでの当たりやまわしを取ってから頭をつけて攻めることを徹底するよう教わってきました。
そして、こうした技術を、霧馬山は精力的にほかの部屋に出稽古に出向いて磨きをかけてきました。

特に春場所の前は若隆景、若元春の兄弟三役や大関経験者の朝乃山などと「自己最長」という出稽古を実施。

「強い人とやると負けても自分の中で自信になる」と精力的に番数をこなしました。

その成果が今場所で発揮されました。

前半戦で3敗を喫する苦しい展開となりましたが、中日以降は相手に押し負けずに有利な体勢を作ったり、まわしを取って頭をつけて寄り切ったりするなど鍛えてきた相撲で白星を重ね、鶴竜親方も「力強くなった」と今場所の成長に目を細めました。

初優勝の霧馬山、三役で2場所連続のふた桁勝利を挙げたことで、来場所は大関昇進に期待がかかります。

憧れの横綱に近づくためにも来場所は霧馬山にとってさらに重要な場所になります。

新関脇での優勝は4回目

新関脇での優勝は去年の春場所の若隆景以来、4回目です。

モンゴル出身力士の初優勝は9人目で去年の名古屋場所の逸ノ城以来で、10日目の終了時点でトップと星の差3つから優勝したのは、平成29年秋場所の元横綱・日馬富士以来となります。

日馬富士はこの場所、10日目で4敗目を喫しましたがこの時点で1敗でトップに立っていた元大関・豪栄道が終盤戦で連敗。

日馬富士が千秋楽で豪栄道との直接対決で勝って優勝決定戦に持ち込んだ末の優勝でした。

霧馬山 夏場所は大関昇進かかるとの見解

大相撲春場所で12勝3敗で初優勝し、ここ2場所の勝ち星の合計を「23」とした関脇・霧馬山について、日本相撲協会の審判部は次の夏場所は大関昇進がかかる場所になるという見解を示しました。

霧馬山は小結だった先場所、11勝を挙げ、新関脇で初優勝した今場所は得意の左四つの相撲などで12勝3敗の成績を残してこの2場所の勝ち星の合計を「23」としました。

大関昇進の目安は三役で直近3場所の勝ち星の合計が「33」とされています。

日本相撲協会で審判部長を務める佐渡ヶ嶽親方は千秋楽の取組のあと次の夏場所で、霧馬山の大関昇進がかかるかと問われると「そうですね。三役でふた桁勝っている」と述べて来場所で大関昇進がかかるという見解を示しました。