海外往来で違法薬物の“運び屋” に 事件巻き込まれに注意

新型コロナウイルスの水際対策の緩和で海外との行き来が再び活発になる中、旅行客が違法薬物のいわゆる「運び屋」に仕立てられ、密輸事件に巻き込まれるケースがあるとして、警視庁と東京税関が羽田空港で注意を呼びかけました。

東京税関によりますと、去年1年間に羽田空港や成田空港で覚醒剤や大麻などの違法薬物を手荷物に隠して密輸したとして摘発した件数は72件と、新型コロナの水際対策の緩和を背景におととしの3.6倍に増加しています。

中には、日本からの旅行客が違法薬物の「運び屋」に仕立てられ、密輸事件に巻き込まれるケースも相次いでいるということで、10日警視庁と東京税関が羽田空港で注意を呼びかけました。

この中では「お土産を日本の友達に渡してほしい」などと言われ、預かった荷物の中に違法薬物が隠されていたケースを紹介し、海外では知らない人から荷物を預からないよう呼びかけていました。

警視庁薬物銃器対策課の高橋雅代課長は「春の卒業旅行シーズンを迎え、学生など若い人たちも海外旅行に行く機会が増えると思うが、知らない人から荷物を届けてほしいなどと言われても、絶対に断ってほしい」と話していました。

手荷物に隠しての密輸増加

東京税関によりますと、去年1年間に羽田空港や成田空港で覚醒剤や大麻などの違法薬物を航空機の手荷物に隠して密輸したとして摘発した件数は72件と、おととしの3.6倍に増加しています。

内訳は覚醒剤が41件、大麻が14件、コカインなどの麻薬が14件となっています。

また、押収量は合わせて124キロと、おととしの2.4倍に増加しています。

新型コロナウイルスの水際対策で外国人の入国が制限されていたこともあり、日本人が関わるケースが多かったということです。

中には旅行先で知り合った現地の人から「荷物を届けてほしい」などと頼まれ、気が付かないうちに密輸に協力してしまったケースや、SNS上で高額報酬をうたう、いわゆる「闇バイト」として密輸を持ちかけられたケースもあったということです。

あなたも“運び屋”に? 「絶対に誘いに乗らないで」

東京税関によりますと、海外に出かけた旅行客などが違法薬物が隠された荷物を預かって帰国し、摘発されるケースが相次いでいます。

去年5月、40代の自営業者は、知人から紹介された人物から「航空券とホテル代は負担しお礼もするので、フランスに行って荷物を受け取ってきてほしい」と持ちかけられ、フランスに渡ったということです。

指定されたホテルで外国人風の男から食料品とシーツが入ったスーツケースを受け取り、帰国しました。

ところが、スーツケースの型枠の中に末端の密売価格でおよそ1億6000万円分の覚醒剤が隠されていることが分かったということです。

SNS上で高額報酬をうたう、いわゆる「闇バイト」として持ちかけられたケースもありました。

去年8月、50代の自営業者は、「30万円の報酬がもらえる」というSNSの書き込みを見つけ、応募すると、「スティーブ」と名乗る人物から「南アフリカで荷物を受け取り、持ち帰ってきてほしい」と依頼されたといいます。

その後、南アフリカに渡って、「スティーブ」の知人を名乗る人物から2冊の本を受け取り、帰国しました。

ところが、本の中がくりぬかれ、末端の密売価格でおよそ1億4000万円余りの覚醒剤が隠されていたことが分かったということです。

いずれのケースも覚醒剤を密輸したとして逮捕・起訴されました。

東京税関羽田税関支署の江口司次長は「お礼をするので荷物を日本に運んでほしいと頼まれたとしても、不審な荷物は絶対に預からないでほしい。現地で摘発されて重い責任を問われたり、拘束されて日本に帰れなくなったりする可能性もある。甘い話には必ずわながあるので、絶対に誘いに乗らないでほしい」と話しています。

税関では、密輸に巻き込まれているのではないかと不安に感じたら、次の番号に連絡するよう呼びかけています。
0120-461-961