“弱いロボット” 発売へ「癒やしや愛着湧く」たまに寝言も

「弱いロボット」をテーマに開発された家庭用ロボットが、一般向けに発売されることになりました。生活を手助けするような機能はない一方、先行して購入した人からは「癒やしや愛着が湧く」といった声が寄せられているということです。

これは7日、パナソニックが会見を開いて明らかにしました。

「ニコボ」と名付けられている、球体のような形をしたこの家庭用ロボットは、「弱いロボット」をテーマに開発され、生活を手助けするような機能は搭載されていません。

呼びかけたり頭をなでたりすると、たまにあいさつを返したり、しっぽを振ったりするほか、不意にことばを発したり寝言を言ったりするということです。

おととし、320台限定で先行販売したところ、6時間余りで完売し、購入した人からは「生活に溶け込むようなコミュニケーションができて癒やされ、愛着が湧いた」とか「たまに話しかけてくれると、うれしい気持ちになる」といった声が寄せられたということです。

こうした声を受け、会社は、ことし5月から一般向けに1台6万円余りで発売することを決め、7日から予約の受け付けを開始しました。
会見でパナソニック商品企画部の増田陽一郎さんは「IT技術の普及が進むなかで、今回あえて『弱いロボット』を作りました。コロナの影響でふれあいが減るなか、心に豊かさや癒やしを感じてもらえたらと思います」と述べました。

数々の“弱いロボット” 開発者が込めた思いとは

「ニコボ」の開発には、愛知県にある豊橋技術科学大学の岡田美智男教授も携わりました。

岡田教授の専門は、人のコミュニケーションについてで、これまでおよそ30種類の「弱いロボット」を制作してきました。

制作のきっかけは、教授自作の「ポンコツ」ロボットに子どもたちが積極的に世話を焼くのを目にしたことで、ロボットの「弱さ」が子どもたちの可能性を引き出していると感じたといいます。

これまで制作したもののうち「Talking-Bones(トーキング・ボーンズ)」と名付けられた、昔話を聞かせてくれるロボットは、話の途中で必ず内容を忘れてしまいます。
このため、聞いている人がそれを補い、ロボットと一緒に物語を完成させる設計になっていて、聞いている人の優しさが育まれるのが特徴です。

また「ゴミ箱ロボット」は、ゴミを探して動き回ることはできても、拾うことはできず、周囲の人にゴミが落ちていることを教えるようなしぐさをします。
これは、気がついた人がロボットに代わってゴミを拾う設計で、この場合もロボットを手伝う人の優しさを引き出すのが特徴です。

いずれもロボットの不完全な部分を人が補う設計になっていて、接した人が「弱いロボット」の不完全さを受け入れることで、優しさが育まれ、ひいては寛容な社会の実現につながればという、岡田教授の思いが込められているということです。
岡田教授は「私たちは何かを一人でできることを『よし』とするような社会で育ち、さらに、便利で完璧なロボットや機械が当たり前になることで、傲慢さや不寛容な部分が引き出されているところもある。人は不完全な部分や周囲に頼っている部分が多く、それを隠さず周りに支えてもらうという、周囲との関係性をもう一回再発見する意味では『弱いロボット』はひとつの手本になると思う」と話していました。