先生は地域の中学生!笑顔あふれるスマホ教室

シニア世代の皆さんにとって使いこなすことが簡単ではないスマートフォン。

活用したいけど、携帯ショップまで行くエネルギーはない…
家族に聞くと、丁寧には教えてもらえない…

そんなおじいちゃん・おばあちゃんをサポートしたいと、高齢化が進む大阪府の町で、地域の中学生が立ち上がりました。

町内で開いた「スマホ教室」は、喜びあり、ため息あり、爆笑あり。
“先生”役の中学生にも思わぬ変化が。

こんなに“しあわせな”スマホ教室、見たことない!
(大阪放送局 しあわせニュース取材班 小野田真由美)

「何がわからないか、わからない」

「スマホの使い方がわからないけど、近くに聞ける人がいない」

大阪府北部の豊能町にある吉川中学校に地元の高齢者からこうした声が寄せられていました。学校と生徒会では少しでも力になりたいと、2年生と3年生の有志の生徒14人が“先生”を務める、スマホ教室を開くことにしました。
今月11日に開かれた教室には開始10分前にすでに30人近くが来場。

参加する人たちはスマホを片手に、ソワソワし、「とにかく全部、ほとんどわかっていないです。スマホを持ってるだけで。何か1つでも、わかるようになったらうれしい」などと話していました。
中学生の“先生”はテーブルに分かれて、参加した人たちそれぞれが持参したスマホを一緒に操作しながら質問に丁寧に答えていきます。

「家族と顔を見て話したいけど、ビデオ通話ができない」
「QRコードが読み取れない」
「写真の保存方法を知りたい」

参加した人たちは基本的な操作すらわからない状態でした。

連絡先は交換できたけど…

「LINEの連絡先の交換はどうしたらいい?」

友人どうしという女性2人は、お互いを「友だち」に「追加」することを習いました。

そして早速メッセージを送ってみますが、なぜか、届きません。

画面をよーく見ると…。
「あ!息子のところに行ってるー!」

こうした失敗のたびに大いに盛り上がりながら、中学生は丁寧に教え、最後は参加者どうしでスタンプを送り合えるようになりました。

女性2人は「一番聞きたいことが聞けたので、うれしい」と笑顔で会場をあとにしました。

町も中学生を頼りに

このスマホ教室には、豊能町も期待を寄せていました。

町は今月、移動手段に困っている町民のためにと、乗り合いの車を無料で利用できる実証実験をスタートさせました。

この車の予約は電話でもできますが、スマホのアプリなら24時間、いつでも予約が可能です。

しかし、使い方が分からない高齢者が多く、スマホ教室で中学生に使い方を教えてもらうことにしたのです。

自宅で練習する“先生”も

先生役を務めた中学2年生の津野樹璃さんは、そのアプリの使い方を自信を持って説明できるよう、“リハーサル”をしました。

一緒に暮らす、おじいちゃん、おばあちゃんを相手に練習します。

おじいちゃんとおばあちゃんは津野さんとは違う機種のスマートフォンを使っていて、機種によって操作方法が違うことにも気づかされ、津野さんはこうしたことを参考に、教室に臨むことにしました。
練習の成果は早速現れました。

乗り合いの車は、町内の115か所で乗降でき、アプリではよく利用する場所を「お気に入り」に登録することができます。

津野さんは、乗車を希望する女性に、その機能を伝え、自分では当たり前に分かっている言葉も、相手に伝わるよう、言いかえて説明していきます。

女性は操作がなかなかうまくいかず、ため息もついていましたが、津野さんは根気よく、丁寧に教えていました。

説明を受けた女性は「主人に聞くと厳しい言葉が返ってくるけど、優しく説明してくれて。ダメな“生徒さん”で申し訳なかったけど、本当にありがとうという気持ちです」と話していました。

津野さんは「分かりやすくは伝えられたかなと思います。手応えありです!」と話しました。

“先生”にも思わぬ変化が

参加した人たちから「とても助かる!」と好評だった教室は、中学生にも変化をもたらしました。

生徒会副会長の依田真実さんは、教室に参加するまで、地域のお年寄りとあいさつすることさえ、ためらっていたと言いますが、「教室で話してみると“こんないい人ばっかりなんや”って、むっちゃ変わりました」と話していました。
さらに、少しでも力になりたいという思いも芽生え、説明した内容をわかりやすくメモにすることにしました。

お年寄りが、自宅に戻ってからも1人で操作できるようにという思いからです。

依田さんは「感謝されるのがすごくうれしい」と話していました。
会場のかたわらで、生徒たちを見つめていた吉川中学校の遠藤克俊校長は「子どもたちの順応性・対応力は、本当に感心します。全員すごく輝いていて、自信をつけたのではないかなと思ってます」と話しました。

「第3弾はいつですか?」

“先生”となった中学生たちは得意なスマホを通して、地域の人たちを手助けしました。

学校には「次回のスマホ教室は決まっていますか?必ず行きたいです」といった問い合わせが寄せられているということで、学校や生徒会ではまた機会を設けて教室を開きたいとしています。

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