ビワの種には有害物質 粉末食品食べないよう呼びかけ 農水省

果物のビワの種について「食べるとがんに効果がある」という情報がSNSなどで広がっていますが、農林水産省はビワの種には有害物質が含まれ、粉末にした食品などを多く摂取すると健康を害するおそれがあるとして食べないよう呼びかけています。

果物のビワやあんずなどの種や未熟な果実に含まれている「アミグダリン」という物質について、SNS上では「がんに効果がある」などとして種をそのままかじったり粉末にして食べたりすることを勧める情報が広がっています。

これについて農林水産省は、「アミグダリン」は天然の有害物質の「シアン化合物」の一種で、体内で分解されると青酸ができ、大量に摂取すると頭痛やめまい、おう吐などの中毒症状を引き起こすおそれがあるとして注意を呼びかけています。

ビワは熟した果肉を安全に食べることができますが、農林水産省は種を乾燥させて粉末に加工した食品などについては、有害物質を一度に大量に摂取する危険性が高まるとして、食べないよう呼びかけています。

また、農林水産省は、葉や種を砕いたものをティーバッグに入れてお湯で抽出して飲むものについて、一定の濃度以下で適量であれば安全に飲むことができるとしていて、個別の食品に含まれるシアン化合物の濃度については製造元に問い合わせてほしいとしています。

「アミグダリン」のがんに対する効果について医薬基盤・健康・栄養研究所は臨床研究の結果、がんの治療や症状の改善に効果がないと結論づけられているとしています。

専門家「天然ということばが『安全』意味しているわけでない」

SNSなどで広がる医療に関する情報の中には効果に科学的な根拠がなく、天然であることをうたっていても逆に健康を害するおそれがある物質を含むものもあり、専門家も注意が必要だと指摘しています。

標準の治療法とは異なる「代替医療」について詳しい島根大学の大野智教授は「自然や天然、ナチュラルという表現は体に優しく、よいものだというイメージを持ちがちだ。しかし、自然界にはふぐの毒に代表されるように体に害を及ぼすものが多く存在しており、天然ということば自体が『安全』を意味しているわけではないことをぜひ知っておいてもらいたい」と話しています。

また、こうした情報が広がる背景について「たとえばがんと診断されれば、誰であっても程度の差はあれショックを受けて落ち込み、人によっては冷静な判断ができなくなる。手術の合併症や抗がん剤の副作用など治療で体に負担がかかるという情報によって病気に対する恐怖がさらに増幅されることもある。インターネットを含め、世の中には情報があふれかえっていて、『まやかしの安心感』が得られる情報もある。不安を情報で埋めようと調べ続けると、そうした情報に簡単にたどりついてしまう」と述べ、情報の受け止め方に注意するよう呼びかけました。

さらに大野教授は「インターネットの検索エンジンやSNSでは、一度興味のあることを調べると興味関心が高いと思われる情報を勝手に推測して、類似情報ばかりが出てくるようになるという仕組みがある。そうすると出てきた情報が世の中で主流になっていると錯覚しがちだ。情報を調べるときにはこうした危険性があることをしっかり認識して、不安な気持ちや副作用への恐怖感などは医療者に素直に伝えてもらいたい。相談すること自体で不安が軽減されたり解消したりする可能性もある」と話しています。