商品渡すのは「クマの手」 対面せず接客のカフェ できた理由は

店員がカウンターで顔を見せて接客するのではなく、カーテンに覆われた窓から「クマの手」がのびて商品を渡してくれる、ちょっと変わったカフェが、大阪の百貨店に登場しています。

この「クマの手カフェ」は、大阪 北区の阪急うめだ本店で開催されているバレンタインフェアの一角に、期間限定でオープンしています。

注文を受け付けるカウンターには壁とカーテンに覆われた窓が設置されています。

店員の姿は客からは見えません。
カフェの商品の準備ができると、ふわふわの毛で覆われた「クマの手」が出てきて、商品を手渡してくれます。
パフェを注文した6歳の女の子は、窓から出てきたクマの手と握手したり、手を振りあったりして、「かわいかった」とうれしそうに話していました。

対面せずに接客 “安心して働ける”

「クマの手」として働いているのは、うつ傾向にあったり、落ち込みやすいなど、人とのつきあいが苦手な人たちです。

このカフェでは、対面せずに接客できるため、安心して働けるということです。

モニター越しに、お客さんの反応も見ることができます。
19歳の大学生は、摂食障害になり、去年の4月から大学を休学していますが、「クマの手カフェ」で働きながら自信を取り戻してきているということです。
大学生は「休学中は誰とも会わないので、ひとりで考え込むことも多かったのですが、こうやって外に出ることができて、すごく楽しいです。お客さんもすごく優しいので、毎日が充実しています。職場の人が摂食障害というのを理解してくれるのか心配していたんですが、安心して新しいスタートが切れたなと思います」と話していました。
別の20歳の大学生は「普通のバイトだと、お客さんと対面しないといけないとか、人との交流が多くなるけれど、ここは手だけの安心感があります。クマの手袋をつけてると、お客さんが喜んでくれたり、人と関わることは怖くないと思えるようになりました」と話しています。

柔らかく人と人とをつないで

「クマの手カフェ」は、大阪 八尾市のカウンセラー養成学校が出店しました。

店内にはカウンセラーの資格を持つスタッフもいて、困ったことがあったらサポートする仕組みになっています。

カフェを通じて、柔らかく人と人とをつないで後押しできればとしています。
運営する平村雄一郎学園長は「壁1枚はさむことで、傷つきやすい繊細な人たちも安心感を持って働ける。社会のスピードが速く、ミスを許す社会ではないが、クマの手が、失敗してもいいよ、ゆっくりでいいよ、そういう社会が広がっていく一石を投じることができたら」と話しています。