三菱重工業 国産ジェット機「スペースジェット」事業撤退発表

三菱重工業は、国産初のジェット旅客機「スペースジェット」の開発を取りやめ、撤退すると正式に発表しました。巨額の開発費を投じたものの、採算が見込めず、撤退に追い込まれました。

スペースジェットは、2008年に「MRJ」=「三菱リージョナルジェット」の名称でプロジェクトがスタートし、国からおよそ500億円の支援も受けて開発が進められました。

しかし、技術力の不足などで、たび重なる納期の遅れが生じたうえ、コロナ禍の2020年には、航空需要の回復が見通せないとして、事実上、開発が凍結されていました。

撤退の理由について三菱重工業は、開発の継続には、年間1000億円規模の費用がかかるうえ、今の市場環境では採算性の確保が難しいとしています。

会社によりますと、これまでに、およそ270機を受注しているということですが、開発の中止に伴う補償などについては、今後、発注先の航空会社と協議することにしています。

また会社では、開発を担っていた子会社の三菱航空機を清算する方向で、出資した企業と話し合いを進めるとしています。

泉澤清次社長は、7日の決算会見で「多くのご支援やご期待をいただいていたが、開発中止に至り誠に残念だ。機体を納入できず申し訳なく思っている」と述べました。

“日の丸ジェット”とも呼ばれ、官民が連携して巨額の開発費が投じられたプロジェクトは、事業として実現することなく、終わりを迎えました。

松野官房長官「今後の取り組みに期待」

松野官房長官は午後の記者会見で「今回、開発中止に至ったが、これまでの取り組みを通じて、人材育成も含め、わが国の航空機開発の技術、能力の向上に寄与したものと考えている」と述べました。

そのうえで、「三菱重工は、これまでスペースジェット開発で培った経験や人材を、次期戦闘機開発などのプロジェクトに生かしていく方針と承知しており、今後の取り組みに期待したい」と述べました。

西村経済産業大臣「目的達成できず極めて残念」

西村経済産業大臣は記者団に対して「事業性の見通しが立たず開発中止に至ったが、国産旅客機の商業運航という当初の目的を達成できなかったことは極めて残念であり、重く受け止めている」と述べました。

そのうえで「これまでの取り組みを通して人材育成を含め、日本の航空機開発の技術、能力の向上に寄与した部分もある。航空機産業は、大きな産業構造の変革期なのでこれをチャンスと捉えて次世代航空機の実現に向けた取り組みを進めることが重要だ」と述べ、三菱重工業には引き続き、航空機産業の発展に貢献してほしいという考えを示しました。