長野 小谷村 心肺停止の2人死亡 雪崩に巻き込まれた外国人か

29日に長野県小谷村のスキー場のコース外にあたるバックカントリーで起きた雪崩で、外国人の男性2人が取り残された現場周辺から心肺停止の状態で見つかった男性2人の死亡が確認されました。
警察は、雪崩に巻き込まれた外国人の男性2人とみて確認を進めています。

29日午後2時半ごろ、長野県小谷村にある栂池高原スキー場のコース外にあたるバックカントリーで雪崩が発生し、スキーなどをしていた外国人の3つのグループの合わせて10人以上のうち4人が巻き込まれ、このうち、男性2人が意識不明になっていました。

警察は、2人が取り残された現場周辺の捜索を行い、午前10時半すぎに1人を、さらに10分後にもう1人を、いずれも雪の中から見つけました。

警察によりますと、2人とも男性で、心肺停止の状態で見つかり、いずれも死亡が確認されたということです。

警察は、雪崩に巻き込まれた外国人の男性2人とみて確認を進めています。

現場は、白馬乗鞍岳にある標高2100メートル余りの天狗原の東側の斜面だということです。

「バックカントリー」で毎年100人前後が遭難

警察庁によりますと、毎年100人前後がバックカントリースキーで遭難しているということです。

遭難した人の数は
▽統計を取り始めた平成27年が114人
▽平成28年が104人
▽平成29年が142人
▽平成30年が140人
▽令和元年が164人
▽令和2年が95人
▽令和3年は94人にのぼり、
このうち8人が死亡しています。

また、日本を訪れた外国人観光客が遭難するケースもあって
▽平成30年が61人
▽令和元年が50人
▽令和2年が31人となっています。

新型コロナウイルスの影響で、外国人の入国制限が行われたおととしはゼロでした。

「バックカントリースキー」 とは

【バックカントリーとは】
「バックカントリー」は、スキー場の敷地外にあたり、私有地ではない誰もが利用できる山岳エリアのことで、滑走は禁止されていません。ただ、危険な箇所もあるため、注意を呼びかけているスキー場もあります。

【BCスキーとは】
こうした手付かずの自然の中でスキーすることを「バックカントリースキー」と呼び、スキー場にはない急な傾斜や、まだ誰も滑っていない、ふかふかの雪の上を滑ることができるため、日本人だけでなく外国人のスキーヤーからも人気を集めています。

【毎年相次ぐ遭難】
しかし、急な傾斜や未整備のところを滑るため、事故も相次いでいて、長野県警察本部によりますと、バックカントリーでの遭難事故は統計をとりはじめた平成27年以降、多いときで7人にのぼり、毎年、少なくとも2人が死亡しています。ことしは、まだ1か月もたっていませんが、長野県内では2人が死亡し、2人が行方不明になっています。

【危険性】
日本バックカントリースキーガイド協会の長井淳さんは、バックカントリースキーの危険性について「スキー場のように雪崩が起きないように管理されていないので、その分のリスクはある。雪崩だけなく、木への衝突や滑落の可能性も高くなる」と指摘します。

長井さんは「吹雪で雪が多いなら雪があまり降っていないところに移動するとか、急斜面がダメだったら急斜面ではなく楽しめるところを選ぶ。天気やコンディションによって遊ぶ場所を変えることが大事だ。楽しさよりも、安全度の高い山の尾根や傾斜の緩やかな場所を選ぶことが重要だ」と、天候条件や地形を調べ、楽しさより安全度を重視すべきだといいます。

専門家「厳冬期に起こりやすい表層雪崩か」

相次いでいる雪崩の事故について、雪崩が起きるメカニズムに詳しい防災科学技術研究所の山口悟総括主任研究員は「現地の気温や雪の状況などから雪の中の弱い層から上が崩れる『表層雪崩』が起きたとみられる」と指摘しています。

山口研究員によりますと、地面に積もった雪がすべて滑り落ちる全層雪崩が気温が急上昇した際に起きやすいのに対し、表層雪崩は気温が低い厳冬期に起こりやすいということです。
固まりにくい性質の雪が降るなどして崩れやすい層ができ、その上に雪が積もると一気に滑り落ちることがあり、今回、雪崩が相次いだ長野県や群馬県でもここ数日の気象状況から崩れやすい雪の層が作られていた可能性があるとしています。

山口研究員は表層雪崩の特徴について、雪に亀裂が入るなどの前兆現象がなく、規模が大きいものでは速度が時速200キロに達することがあり、気付いてからでは逃げられないとしています。

そのうえで「人は雪に40センチ埋もれると動けなくなるので、雪崩に巻き込まれたら自力で脱出するのは難しい。バックカントリーでは雪を整備しておらず雪崩の危険性が高いので、まずは危険な斜面に近づかないことが重要だ」と話していました。