【詳しく】中国 61年ぶり人口減に転じる 今後の影響や見通しは

中国政府は、去年末の時点の中国本土の人口が推計で14億1175万人と、前の年に比べて85万人減ったと発表しました。中国の人口が減少に転じるのは61年ぶりで、この傾向が続けば今後の経済成長に影響を及ぼすことも懸念されます。

中国国家統計局は17日、中国本土の人口が去年末の時点の推計で14億1175万人と、前の年に比べて85万人減ったと発表しました。

これまでに中国の人口が減少に転じたのは、大衆を動員し鉄鋼や穀物の増産を短期間で目指した「大躍進」政策が失敗し、多くの餓死者が出た時期にあたる1960年と1961年の2回だけで、61年ぶりとなります。
また去年1年間に生まれた子どもの数は推計で956万人で、前の年より106万人減少しました。

人口1000人あたりの生まれた子どもの数を示す「出生率」は去年末の時点で6.77と1949年の建国以来、最も低くなりました。

一方、65歳以上の高齢者の数は2億978万人と、人口の14.9%を占めるということです。

65歳以上の高齢者の数は前の年と比べて922万人増加し比較できるデータのある1990年以降、最も多くなり少子高齢化が進んでいます。
中国では急速な少子高齢化に伴う労働人口の減少などが社会問題となる中、長年続いたいわゆる「一人っ子政策」が7年前に廃止され、おととしには3人までもうけられるよう緩和されました。

しかし、子育てにかかる経済的な負担が大きいことや価値観の変化から結婚や出産を望まない人も増えていて、少子化に歯止めがかからない状況が続いていました。

中国は人口の増加を追い風に世界2位の経済大国となりましたが、人口の減少傾向が続けば今後の経済成長に影響を及ぼすことも懸念されます。

人口が世界1位でなくなった可能性も

国連が去年発表した報告書は、インドの人口がことし中国を上回り世界最多になるという見通しを示していました。
国連が示した去年のインドの人口は推計で14億1200万人です。

今回、中国政府が発表した中国の去年末の時点の人口は推計で14億1175万人で、比較するデータは違いますが、国連が推計した去年のインドの人口を下回っていて、中国の人口が世界1位でなくなった可能性もあります。

結婚を選択しない人も

中国では、最近結婚しない人も増えていて、経済的に豊かになる中、人々の価値観の変化がその背景にあるとも指摘されています。

中国国家統計局によりますと、初めて結婚する人は8年連続で減少していて、10年前、年間2385万人余りでしたが、おととしには、1157万人あまりとおよそ半分になりました。

このうち上海で飲食店を経営する30代の女性も今のところ結婚する考えはないという1人です。
内陸部の内モンゴル自治区出身だというこの女性は、大学卒業後、企業で務めたあと、10年前からバーなどの飲食店を経営しています。

趣味のゴルフだけでなく定期的にジムにも通い体を鍛え、長期休暇には海外旅行をするなど、仕事以外の時間を自分だけのものとして楽しんでいるといいます。

女性は、結婚したり出産したりして夫や子どもなどに関わることになれば自分だけの時間が減り、いまのような生活はできないとして結婚は考えていないといいます。

女性は「家庭というのは自分1人だけでなく多くの責任が伴います。結婚をすれば多くのことを犠牲にしなければならず、少なくとも人生の半分の楽しみは妥協せざるを得なくなります。仕事やプライベートを重視する今の自分は結婚生活は向いていないと思います」と話していました。

人口減少の影響は

日本総研の野木森稔主任研究員に聞きました。
中国本土の人口が減少に転じたことによる経済への影響について、野木森さんは「厳しい『ゼロコロナ』政策の下で人の行き来が制限され、子どもがなかなか産めないといった状況もあり特殊な環境にあったことを考慮しても、人口減少が速いペースで進んでいる。中国はこれまで世界の工場として世界経済の需要を取り込んで経済発展をしてきたが、必要なのは豊富な労働力だった。そこがどんどん縮小していくと、製造業で大きな力を持つことが難しくなり経済成長が低下していく可能性がある」と述べました。

また、人口減少のトレンドが今後も続くのかについては「中国では都会に出て行く女性も増えている中で、子供を産むことに弊害を感じるようになってきている可能性がある。経済がしっかり回復するような状況にならないと、中国の人たちが子どもを安心して産める環境にはならない。中国がしっかり回復基調に経済を乗せていけるかが重要なポイントになってくるとみている」と話しました。