トンガ 海底火山大規模噴火から1年 津波被害からの復興誓う

南太平洋の島国トンガの沖合で海底火山の大規模な噴火が発生してから15日で1年です。現地の教会では犠牲者に祈りがささげられ、参加した人々からは復興への決意のことばが聞かれました。

トンガでは去年1月15日、海底火山が噴火し、トンガ政府によりますと、最大15メートルの津波が押し寄せ、関連死を含めて4人が亡くなりました。

災害から1年となった15日、国民のほとんどがキリスト教徒のトンガでは、国内各地の教会で犠牲者を追悼する礼拝が行われました。

このうち、首都ヌクアロファにある国内最大のカトリックの教会には朝から1000人以上が集まり、はじめに全員で1分間の黙とうをささげました。

このあと聖職者が「皆で協力して復興を続けよう」と呼びかけ、教会には人々の祈りの歌声が響き渡りました。

礼拝に参加した60歳の主婦の女性は「津波から必死に逃げた1年前のことを思い出すと、今でも涙が出ます。無事でいられたことを感謝しています」と話していました。

また、26歳の農家の男性は「トンガはより良い未来に向けて、復興の歩みを続けています。つらい経験を忘れず、協力し合って前進していきたいです」と話していました。

災害の影響が続く現地の農業や水産業

トンガの主要産業である農業と水産業は、いずれも日本への輸出が長年続き日系人が活躍するなど、日本とも深い関係があります。

このうち、日系2世の川口正洋さんは、主に日本向けにもずくを生産しています。

首都ヌクアロファがある島の沖合の養殖場では、津波で海中の網などがすべて流され、所有していた5隻の船も損壊しました。津波のあと、古い網などを使って生産を再開しましたが、おととし200トン近くあった日本への輸出は、去年は15トンにとどまりました。

川口さんは「ほとんどの器具は買ったばかりだったので、津波で流されてとてもショックでした。さらに火山灰によるもずくの品質への影響を心配する取引先もいて、注文は減ってしまいました。今できることを続けて前に進むしかありません」と話していました。

こうした中、噴火で大量に積もった火山灰を活用できないか模索する人も出ています。

日本向けのカボチャなどを生産している日系3世のミノル・ニシさんが所有する、およそ100ヘクタールの畑では火山灰で作物が枯れるなどの被害が出ました。

大量の灰を取り除くには膨大な労力と費用がかかるため、灰をそのまま土と混ぜて栽培を再開したところ、例年より生育は遅れたものの、かんきつ類などが問題なく生産できているということです。

火山灰を農業に活用できるのか、現在、トンガ政府は成分の分析を進めていて、ニシさんは事務所の屋根などに積もった火山灰を保管して将来、活用したいと考えています。

ニシさんは「私たちトンガの人々はとても強いので、かならず復活します。自然災害に耐え、今、自分たちの周りにあるものを最大限に活用することが求められています」と話していました。