【Q&Aで】東京都 新築住宅に太陽光パネル設置義務化 条例成立

温室効果ガスの排出量の削減に向け、東京都で新築住宅への太陽光パネルの設置を義務化するための条例が、全国で初めて成立しました。

すべての新築住宅が対象になるのか。住宅の価格はどのようになるのか。記事の後半でQ&A形式で詳しく解説します。

全国で初めて成立

15日に開かれた都議会の本会議では、2025年4月から都内に新築される住宅に太陽光パネルの設置を義務化するための条例の改正案の採決が行われました。

その結果、改正条例は都民ファーストの会や公明党、共産党、それに立憲民主党などの賛成多数で可決・成立しました。

都議会第1党の自民党などは「太陽光発電は推進する立場だが、現時点で義務化は都民に十分に理解されておらず、納得してもらえる状況にない」などとして反対しました。

この条例は大手住宅メーカーを対象に、太陽光パネルを設置できる新築住宅の数や、日当たりの条件などから算出された発電容量の目安の達成状況を毎年、都に報告することを義務づけるもので、全国で初めて成立しました。

本会議では、一般会計の総額が1100億円余りの補正予算も可決・成立し、義務化に向けて、メーカー側が設計や施工の技術を向上させる取り組みを支援する費用や、条例の内容に関する相談窓口の設置や啓発事業などとしておよそ300億円が盛り込まれました。

このほか、物価の高騰対策として、住民税の非課税世帯などに国産の米や野菜を配送する事業が盛り込まれていて、都は来年2月から事業を開始したいとしています。
東京都の小池知事は記者団に対し「多くの会派の賛同をもらい成立した。2030年までに温室効果ガスの排出量を半減させる『カーボンハーフ』などの実現を確実にしていく。これから1つずつ理解を深めてもらいながら、前へ進んでいきたい」と述べました。

義務化の内容は【Q&Aで詳しく】

新築住宅への太陽光パネルの設置を義務化するための東京都の条例。すべての新築住宅が対象になるのか。住宅の価格はどのようになるのか。首都圏局の生田隆之介記者が解説します。

Q.東京都内で新築住宅を購入する全員に義務づけられる?

A.義務づけの対象は、われわれ消費者ではなく、大手の住宅メーカーなどになる、というのがポイントです。新たな制度では、義務づけの対象は、住宅を購入する消費者ではなく、都内で住宅を供給する延べ床面積の合計が年間2万平方メートル以上の大手住宅メーカーです。

大手住宅メーカーは延べ床面積が2000平方メートル未満の新築住宅について、次の点を、東京都に毎年報告することが義務づけられます。

▽太陽光パネルといった再生エネルギーの発電設備を設置できる住宅の供給数
▽地域ごとの日当たりの条件に応じた係数
▽1棟あたり2キロワットとする基準量を掛け合わせて算出された発電容量の目安の達成状況

目安を達成できなくても罰則はありませんが、達成への取り組みが不十分だと判断された場合、東京都は、助言や指導を行った上で、改善が見られない場合は事業者名の公表を検討するとしています。

Q.私たちにとっては、住宅価格が上がることになる?

A.そこが一番気になるところですが明確にはわからないというのが実情です。太陽光パネルの設置にかかる費用は、一般的にはおよそ100万円ほどとされていますが、これがどれだけ住宅価格に転嫁されるかはわかりません。

一方でパネルを付ければ電気料金がある程度抑えられます。

東京都は、設置にかかる初期費用は10年ほどで回収できるとしています。さらに、東京都は、今回の補正予算に盛り込んだ支援事業によって初期費用を抑えることで負担を減らそうとしています。

Q.3年後から義務化に向けて課題は?

A.課題の1つは廃棄の問題です。始まる前からと思うかもしれませんが、現在の太陽光パネルの耐用年数は30年程度とされていて、大量のパネルをどう廃棄するのか。

廃棄せず、リサイクルするにしても家庭用のパネルはそうした実績はほとんどないため、新たなリサイクルルートを確立する必要があります。

Q.新たな制度で、温室効果ガスの削減効果はどの程度ある?

A.東京都によりますと、この義務化の効果を含めると、都内の家庭からの温室効果ガスの排出量は、2030年の時点で、43万トン削減できる試算です。これは都が掲げる、家庭から出る温室効果ガスの削減目標のおよそ5%にあたるということです。

この数値をめぐっても受け取め方はさまざまだです。

条例をきっかけに、この温室効果ガス削減の問題について少しでも実効性が高まるよう私たち市民も考えていく必要があります。

専門家「リサイクルや回収方法について検討を」

今回、太陽光パネルの設置を義務化するための条例が成立しましたが、今後の課題として廃棄処理の在り方を指摘する声もあります。

太陽光発電協会によりますと、現在の太陽光パネルの耐用年数は30年程度とされています。

条例改正に向けて議論を行った都の審議会で座長を務めた早稲田大学創造理工学部の田辺新一教授は「今後パネルをどのように廃棄処分するか、今から考えておくことが重要だ。これまで便利さを理由にペットボトルを使ってきたが、現在、マイクロプラスチックの問題が出ている。今から環境に負荷が出ないようリサイクルや回収方法について検討することが大切だ」と指摘しています。

そのうえで「いきなり気候変動対策だからパネルをつけなさいと言っても理解が難しいと思う。都には今ある補助制度を使えば6年程度で設置費用の元が取れるようになること、そして温室効果ガス削減のためにも一大エネルギー消費地の東京でエネルギーの地産地消が重要だということを都民に丁寧に説明してほしい」と話していました。