「今年の漢字」は「戦」 ウクライナ侵攻や物価高との「戦い」

ことし1年の世相を漢字ひと文字で表す「今年の漢字」が京都の清水寺で発表され、「戦」の文字が選ばれました。

「今年の漢字」は京都市に本部がある「日本漢字能力検定協会」が、その年の世相を表す漢字ひと文字を一般から募集し、最も多かった字が選ばれます。

ことしは先月1日から今月5日までの22万3000通余りの応募の中から最も多い1万804票を集めた「戦」の文字が選ばれました。

京都市東山区にある清水寺では午後2時すぎ、森清範 貫主が大きな和紙に「戦」の字を一気に書き上げました。

「戦」が選ばれたのは、アメリカの同時多発テロ事件などがあった2001年以来、2回目です。
協会によりますと「戦」の字が選ばれた理由について、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻など戦争を意識した年であったことや、円安・物価高など生活の中での「戦い」を応募者の多くが体感したことをあげています。

またサッカーワールドカップの日本代表が強豪のドイツやスペインを破ったほか、冬の北京オリンピックで日本人選手が活躍するなど、スポーツの熱戦が繰り広げられたこともあげています。
清水寺の森貫主は「『戦』が選ばれたのはロシアによるウクライナへの軍事侵攻が非常に強い印象を残したためだと思います。来年は皆が心安らかに日々をおくれるような年になるよう願っています」と話していました。
岸田総理大臣は記者団に対し「今年の漢字」に「戦」の文字が選ばれたことについて「ウクライナをはじめ、いろいろな事態があった。納得できる部分もある」と述べました。

そのうえで自身のことしの漢字について「『進』、進めるという字を選びたい。歴史を画するようなさまざまな課題に直面し、『新しい資本主義』やG7=主要7か国の取り組みなど、一つ一つ進めていく1年だった」と述べました。

「今年の漢字」トップ20

今回、「今年の漢字」に寄せられた文字は人々に不安を与えた出来事に関連する漢字に多くの票が集まった一方、明るさを感じさせるものも入っています。

「日本漢字能力検定協会」によりますと、2番目は「安」で、記録的な円安のほか、事件や事故などで安心安全が脅かされ、人々が不安を感じた1年だったとする理由が多かったということです。1位の「戦」との差はわずか188票の1万616票でした。
3番目には「楽」(7999票)が入りました。

協会では新型コロナの影響による行動制限が緩和され、旅行やイベントなどを楽しむ人が増えてきたことを理由にあげています。

4位以降は以下のとおりです。

4位「高」(3779票)
5位「争」(3661票)
6位「命」(3512票)
7位「悲」(3465票)
8位「新」(3070票)
9位「変」(3026票)
10位「和」(2751票)
11位「円」(2739票)
12位「幸」(2410票)
13位「勝」(2394票)
14位「平」(2275票)
15位「壺」(2262票)
16位「二」(2236票)
17位「金」(2021票)
18位「乱」(1969票)
19位「死」(1923票)
20位「旅」(1787票)

歴代の「今年の漢字」

「今年の漢字」は、京都市に本部がある「日本漢字能力検定協会」が27年前の1995年に始めました。

その年の世相を表す漢字ひと文字を全国から募集し、最も多かったものを「今年の漢字」として、毎年12月12日前後に京都市東山区にある清水寺で発表しています。

大きな和紙に一気に書き上げる様子は師走の風物詩になっているほか、その年を振り返るきっかけのイベントとして多くの報道機関がニュースにするなど注目を集めています。

2021年「金」

夏の大会としては56年ぶりに日本で開催された東京オリンピック・パラリンピックで日本選手が多くの金メダルを獲得しました。
「金」は2000年、2016年にも選ばれています。

2020年「密」

新型コロナが流行し、感染防止のため「3密」を避けるよう呼びかけられました。

2019年「令」

元号が「平成」から「令和」となりました。

2018年「災」

北海道胆振東部地震や西日本豪雨など大きな災害が相次ぎました。

2017年「北」

北朝鮮が弾道ミサイルを繰り返し発射したほか、九州北部豪雨で大きな被害が出た年でした。

2012年「金」

京都大学の山中伸弥 教授がiPS細胞の研究でノーベル賞を受賞したほか、ロンドンオリンピックでの日本選手の活躍がありました。

2007年「偽」

この年、食品の産地偽装や賞味期限の改ざん、それに年金記録の問題が明らかになりました。

2002年「帰」

この年、北朝鮮に拉致された5人が24年ぶりに帰国しました。

1995年(第1回)「震」

この年には阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件などが起きました。