巨大地震 被災地にどう向かう?全国から消防隊員が集結し訓練

南海トラフ巨大地震の発生を想定した「緊急消防援助隊」の過去最大規模の訓練が静岡県で行われました。訓練には、47すべての都道府県からおよそ3000人の隊員が集結し、被災地にたどりつく方法などを確認しました。

訓練は、南海トラフ巨大地震が発生して建物の倒壊や津波による浸水など甚大な被害が出たという想定で、静岡県内12の会場で行われ、47すべての都道府県からおよそ600隊、3000人の「緊急消防援助隊」が参加しました。

メイン会場の静岡空港では、土砂災害や家屋の倒壊、列車の脱線、地下街の崩落など想定される被害の状況が実際に準備され、助けを求める人を救助する訓練が行われました。

このうち、地震による土砂災害を想定した訓練では、3年前に新設された「土砂・風水害機動支援部隊」が活動しました。

地震の際の救助では、土砂災害や津波による浸水などで救助の場所までたどりつけないことがあり、こうした課題を解決しようと新たに導入されたのが大型の水陸両用車です。

この車両が崩れた土砂やがれきの上を進んでいき、土砂に埋もれた住宅の近くまで近づいて、中から助けを求める人を運び出していました。

また、地下街が崩落したことを想定した訓練では、粉じんが舞って呼吸しにくい状況を改善するため、巨大なファンを搭載した特殊車両が風を送り、救助活動を支援していました。

47すべての都道府県から集まる緊急消防援助隊の訓練は、5年に1度行っていますが、今回は新型コロナの影響で7年ぶりの実施になったということです。

総務省消防庁広域応援室の高田雅人係長は、「新しい部隊の連携を確認することができた一方で、全国から駆けつける部隊の移動については、より一層検証が必要だと感じた。遠方から最大2日かけて車で移動した隊もあり、今回の訓練で船舶や航空機など、車以外を利用した隊員にも意見を聞き取りながら、さらに改善を進めていきたい」と話していました。

北海道の部隊 日本海から静岡に向かう

東海から九州にかけての広い範囲で甚大な被害が出ると想定される南海トラフ巨大地震。消防などは被災地にたどりつく方法を確保することが必要になります。

このため今回は、全国各地の「緊急消防援助隊」が実際に想定される方法で静岡県の訓練会場に向かう訓練も行われました。

このうち北海道の部隊は、3日前の11月10日、苫小牧東港に隊員83人、消防車両17台が集まり、民間企業のフェリーに乗り込みました。

津波の被害で、太平洋側からはたどりつけないことを想定して日本海を進むルートを選択し、11日の夜、福井県の敦賀港に到着しました。消防車両が次々にフェリーを降り、その日は、福井県の消防学校に宿泊。

不慣れな土地のため、行程表や移動経路が書かれたプリントをもとに今後のスケジュールを入念に確認していました。翌朝、出発して夕方に静岡県に到着したということです。

被災地に向かう際、過去の災害で課題となった一つが、車両への給油です。

緊急消防援助隊北海道大隊によりますと、東日本大震災のときは、消防の車両の給油が一部のガソリンスタンドに集中し、給油に時間がかかって到着が遅れたり地元住民の反発を招いたりしたことがありました。

このため、今回は走行距離を計算したうえで、複数のガソリンスタンドに分散して給油を行う計画を立て、到着に遅れが生じないかなどを検証したということです。

北海道大隊の坂井充宏大隊長は、「実際の災害では、もっと道路状況が悪かったり、燃料が少なかったりする中で被災地に向かわなければならないこともあると考えられる。訓練を通してしっかりと確認していきたい」と話していました。

今回の訓練では、北海道大隊以外にも各地の消防隊が航空機や船を使うなど、スムーズに被災地にたどりつくための訓練を行ったということです。

南海トラフ巨大地震の救助計画は

南海トラフ巨大地震では、どのような救助が計画されているのか。

総務省消防庁は、全国各地の「緊急消防援助隊」を被災地に一斉に派遣する計画を定め、各都道府県の部隊を、どの県の被災地に入れるかも事前に決めています。

国の被害想定にもとづいて中部と近畿、四国、それに九州の4つの地域が大きく被災した際の派遣計画をケースごとに定めていて、実際の被災状況に合わせて1つの計画が選ばれ、部隊を派遣します。

「緊急消防援助隊」は、ことし4月の時点で、6606隊、2万5476人が登録されていて、地震が発生した際は、この中から派遣可能な部隊が出動することになります。

ただ、実際に巨大地震が発生すると、道路の寸断や渋滞、港湾や空港の損壊、それに後に続く地震のおそれなどから、計画どおり被災地に向かうのが難しいケースも予想されます。

このため各消防は、被害の状況に応じて陸路や海路、空路などさまざまなルートで被災地にたどり着けるよう検討を重ねています。