東京都 温暖化などを想定 防潮堤かさ上げでパブリックコメント

東京都は、地球温暖化による海面上昇や台風の強大化を想定に入れた防潮堤のかさ上げ計画を全国で初めて取りまとめ、7日からパブリックコメントを実施し、順次、工事を進めていく方針です。

国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」の最新の報告書では、2100年までに世界の平均気温が産業革命前と比べて2度上昇した場合、平均海面水位が2014年までの20年間の平均と比べて最大でおよそ60センチ上昇するなどと予測され、高潮被害の深刻化が懸念されています。

都は現在、東京湾に、
▽総延長およそ60キロ、
▽最も高い所で8メートルになる、
防潮堤を設けていますが、地球温暖化による海面上昇や台風の強大化を想定に入れて、今ある防潮堤を、かさ上げする計画の案をまとめました。

専門家などとのシミュレーションを踏まえ、
▼防潮堤がかさ上げされる距離は、
▽全体の半分のおよそ30キロで、
▼かさ上げの高さは、
▽豊洲地区で60センチ
▽晴海地区で80センチ
▽東部地区では最も高い1.4メートル
などとなっています。

都は7日から、この計画の案を提示したうえで、都民に広く意見を求めるパブリックコメントを実施し、今後、優先度が高いと判断した所から工事を進めていく方針です。

国土交通省によりますと、地球温暖化を踏まえ防潮堤のかさ上げが計画されるのは、全国で初めてだということです。

防潮堤かさ上げ案

今回、防潮堤のかさ上げの案が示されたのは、東京都の「東京湾沿岸海岸保全基本計画」です。

これは、高潮を防ぐ防潮堤などの施設の整備や利活用の方針を示したもので、国の法律に基づいて平成16年に策定されました。

今回、主に防潮堤の整備方針の部分が改定され、地球温暖化による海面上昇や台風の強大化を念頭に、具体的にどの部分の防潮堤を、どの程度かさ上げするかが示されました。

海岸の防災計画の策定 対応急ぐ国の動き

きっかけになったのは、国の動きです。

国は、温暖化の進行で、2100年までに海面が上昇すると予測する国連のIPCC=気候変動に関する政府間パネルの報告書を踏まえ、今後、全国で高潮被害の深刻化が懸念されるとして、おととし、都道府県に対して温暖化の影響予測を踏まえて、海岸の防災計画を策定するよう求めました。

さらに、去年には都道府県に対し、対応を急ぐよう令和7年度までに計画を策定することが閣議決定されました。

気温2℃上昇で将来的に被害防げない可能性

こうした中、都は、まず、専門家の議論を踏まえて、2100年までに気温が2℃上昇する想定で高潮のシミュレーションを行いました。

具体的には、
▽海面は、最も深刻とされるおよそ60センチ上昇することを基準にし、
▽台風は、昭和34年に大きな被害をもたらした「伊勢湾台風」を上回る勢力のものを想定しました。

さらに、
▽上陸までのルートも3つ想定し、最悪の被害をシミュレーションしました。

その結果、都が現在、東京湾に設けている、
▽総延長およそ60キロ
▽最高8メートルの防潮堤では、
将来的に被害を防げない可能性があることがわかったのです。

具体的な計画案は

そこで、都は今回、
▽2100年の海面上昇と、
▽台風の強大化による高潮と波浪の増大、
▽そこに30センチの余裕を持たせた想定で、
計画案をまとめました。

それによると、
▼かさ上げの対象となるのは、
▽防潮堤の半分のおよそ30キロで、
▼かさ上げの高さは、
▽豊洲地区で60センチ
▽晴海地区で80センチ
▽東部地区では最も高い1.4メートル
などとなっています。

さらに、気候変動によって、
▽雨の量も増え、
▽内水氾濫のおそれが強まるとして、
水門の内側にたまった水を、東京湾に流す排水機場の能力を上げることも示されています。

具体的な着工時期や予算などは

今回の計画案は、2100年までに整備をしていくという方針のみで、具体的な着工の時期や予算などは盛り込まれていません。

都は7日から、この案を提示したうえで、都民に広く意見を求めるパブリックコメントを実施し、今年度中の策定を目指し、来年度から防潮堤の具体的な調査に入って、優先度が高いと判断した所から工事を進めていく方針です。
東京都港湾局の枡山了太水防対策担当課長は「海岸防災の新しい脅威が、気候変動だと考えている。将来を見据えたうえで、段階的に工事を行っていきたい」と話していました。