スマートフォンなど影響? 子どもの睡眠時間少ない 睡眠障害も

スマートフォンの普及などによって夜更かしする子どもが増えていると指摘されるなか、十分眠れているかなど、子どもの睡眠について詳しく調べる研究プロジェクトが始まり、22日、子どもの睡眠を考えるシンポジウムが開かれました。

このプロジェクトは東京大学の上田泰己教授などのグループが計画し、22日はプロジェクトを紹介し、子どもの睡眠について考えるオンラインのシンポジウムが開かれました。

この中で東京大学の岸哲史特任講師は、日本の子どもの睡眠時間は推奨される時間と比べて1時間程度短く、スマートフォンなどの普及で夜型の生活になっていることが多いことから、学業や精神的な発達などへの影響が懸念されると指摘し、実態を把握する意義を強調しました。

プロジェクトの対象は小学生から高校生までで新たに開発した腕時計型の機器をつけて1週間生活してもらい睡眠中の体の動きを計測することで、睡眠時間だけでなく、脳が眠っている状態と心身の不調にもつながるとされる一時的に脳が起きている状態の割合など、子どもの睡眠の実態を詳細に把握する計画です。

2025年度までに全国およそ5万人分のデータの収集を目指していて、データは子どもたちにも伝えて生活習慣の見直しや睡眠障害の早期の発見に役立ててもらいたいとしています。
上田教授は「正確な実態調査ができれば、睡眠が心や体にどのような影響を与えるかを調べることができる。子どもたちの睡眠をよりよく変える土台にしていきたい」と話しています。

学年が上がるほど睡眠時間が少ない

子どもたちの睡眠時間について、アメリカ睡眠医学会は健康のためには小学生の年代にあたる6歳から12歳では9時間から12時間、中学生と高校生にあたる13歳から18歳では8時間から10時間の睡眠時間が必要だと2016年に提言しています。

日本の子どもたちの睡眠時間について、スポーツ庁が行った子どもたちの体力調査の中で全国200万人を超える小学5年生と中学2年生に毎日の睡眠時間を尋ねたところ、
小学生で睡眠時間が9時間未満だったのは2017年には
▽男子が61.5%、
▽女子が59.0%だったのが、
去年は、
▽男子が63.8%、
▽女子が61.6%と
睡眠時間が短くなる傾向になっています。

中学生で睡眠時間が8時間未満だったのは2017年には男子が71.9%、女子が78.0%で、去年は男子が70.9%、女子が78.4%で、70%を超える状態が続いています。

また、東京大学などのグループが2016年に中学生と高校生合わせて1万8000人余りを対象に行った調査では、平均の睡眠時間は、
中学生の男子は、
▽1年生が7.9時間
▽2年生が7.6時間
▽3年生が7.2時間
中学生の女子は、
▽1年生が7.6時間
▽2年生が7.3時間
▽3年生が7.0時間
高校生の男子は、
▽1年生が7.0時間
▽2年生が6.8時間
▽3年生が6.8時間
高校生の女子は、
▽1年生が6.7時間
▽2年生が6.6時間
▽3年生が6.6時間と
年齢が上がるにつれて短くなる傾向がみられました。

さらに、2014年に文部科学省が小学5年生から高校3年生まで全国の2万3000人余りを対象に子どもの睡眠と生活習慣について尋ねた調査では、深夜0時以降に就寝している中学生は22%、高校生は47%となっていて、携帯電話やスマートフォンを使っている時間が長いほど遅くなる傾向があったということです。

睡眠障害に悩む子ども増える

子どもの睡眠障害などの治療を行っている東京都内のクリニックでは、スマートフォンの普及やライフスタイルの多様化などで、子どもたちの受診が多い状況が続いています。

東京 千代田区にある「瀬川記念小児神経学クリニック」には毎月200人以上、睡眠障害で悩む子どもたちが診療を受けるために訪れます。

このクリニックに通う、横浜市の高校3年生の女子生徒は、中学3年生だった3年前の10月ごろから朝に起きるのが難しくなり、午前中は頭痛やけん怠感が抜けず遅刻や欠席をすることが多くなりました。

当時は、ピアノを専門的に学べる高校を目指して練習に明け暮れていたほか、深夜までスマートフォンで動画などを見る日々が続いて生活のリズムが崩れ、眠りにつく時間が深夜0時をすぎるようになっていったということです。

症状は次第に悪化し、高校2年生だった去年には眠りにつくのが朝6時になることもあったということです。

このクリニックにはおととしから通っていて、自律神経の働きが乱れ、朝になかなか起きられなくなる「起立性調節障害」と診断されました。

薬による治療や生活習慣の改善でいまでは寝つきや寝起きが少しずつよくなってきましたが、まだ遅刻や欠席をしてしまうことがあるほか、薬の影響で夜の早い時間に眠くなることがあるということです。

女子生徒は「学校に遅刻すると、進級が難しくなってしまうので悩んでいます。夜も本当はピアノの練習がしたいのに、薬で眠くなってどうしても寝てしまいます。症状は以前よりはよくなっていますが、まだ光が見えるところまではきていません」と話していました。
クリニックの福水道郎医師は「睡眠障害で診察する子どもたちの多くが、動画配信サイトやオンラインゲーム、塾や習い事などで夜遅くまで明るい光を見たり、興奮したりする状況にあると考えています。家族が夜型の生活になっていて子どもが影響されて睡眠時間が短くなっているとみられるケースもあり、社会全体で遅寝遅起きの問題を解決していかないといけないと思います」と話しています。