大谷翔平 規定投球回に到達 規定打席と同時は今の大リーグ初

大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手が今シーズン最終戦のアスレティックス戦に先発登板してシーズンの規定投球回「162」に到達しました。大谷選手はバッターとしてすでに規定打席には到達していて、大リーグで今の2リーグ制が始まった1901年以降では初めて、同じシーズンで規定打席と規定投球回に達した選手となりました。

【記事後半に「大リーグ5年目 今季も数々の記録」あり】

大谷選手は9月29日のアスレティックス戦で8回を無失点に抑えて15勝目をあげ、シーズンの規定投球回「162」まであと1イニングに迫っていました。

5日は相手の本拠地オークランドでアスレティックスとの今シーズン最終戦に先発ピッチャー兼3番・指名打者で出場し、1回の第1打席でアウトコースの変化球にうまくバットを合わせてライト前にヒットを打ちました。

そのウラ、大谷選手は先発投手として今シーズン28試合目のマウンドに上がり、先頭バッターを見逃し三振、続くバッターをセンターフライ、3番バッターもショートゴロに打ち取って立ち上がり、1人のランナーも出さずに無失点で危なげなく3人で抑え、シーズンの規定投球回に到達しました。

大谷選手はシーズンの規定打席「502」には、すでに8月に到達していて、同じシーズンで規定打席と規定投球回に達したのは、大リーグで今の2リーグ制が始まった1901年以降では大谷選手が初めての快挙です。

大谷選手は昨シーズンは規定投球回に31回と3分の2イニング届きませんでしたが、開幕投手を務めた今シーズンは、エースとして先発ローテーションを1度も飛ばさずに守りきって最終戦で大リーグで初めての規定投球回到達を果たし、また1つ、歴史を塗り替える快挙を成し遂げました。

5回1失点 好投も16勝目はならず

大谷選手はその後も、今シーズンさらにキレを増したスライダーや新しい球種のツーシームを効果的に使って4回までは1人のランナーも出しませんでした。
しかし5回にフォアボールとツーベースヒットで1アウト二塁三塁と初めてのピンチを招いて犠牲フライで1点を先制され、この回でマウンドを降りました。

球数は69球で打たれたヒットはわずか1本、フォアボールが1つ、三振は6つ奪って5回1失点で今シーズンの登板を終えました。
バッターとしては、3回の第2打席はファーストゴロ、6回の第3打席は空振り三振、8回の第4打席は強い当たりのサードゴロで4打数1安打でした。

エンジェルスはトラウト選手に40号ホームランが出ましたが同じアメリカンリーグ西部地区で最下位のアスレティックスに2対3で敗れて3連敗となり、73勝89敗の地区3位でシーズンを終えました。

大谷選手は負け投手となり大リーグ5年目は15勝9敗でした。

大谷「いろいろ試しながらレベルアップはできた」

試合後、大谷選手は「中指のまめが1回にむけてしまった。規定投球回は本来はこだわりはないが、2つやっている段階で規定に乗るのか、自分として目指す数字なのかは本当にやってみないとわからないので、それがわかったのはよかった」と、規定投球回に到達した最終登板を振り返りました。
今シーズンも投打の二刀流で、ベーブ・ルース以来の2桁勝利、2桁ホームランなどの歴史的な偉業を成し遂げましたが、いちばん印象に残っているものを聞かれると「前のことはほとんど忘れてしまった」と笑顔を見せ「いろいろ試しながらレベルアップはできたので、来年以降ももっと工夫しながらできれば、もっともっといい数字が残ると思う」と話していました。

一方でチームは、ことしもプレーオフ進出を逃し「きょうで終わってしまうのは不本意なこと。本来ならここからがスタート、本番くらいの感じでいければいいが、それを目指して来年頑張りたい」と悔しさをにじませました。

来シーズンの開幕前にはWBC=ワールド・ベースボール・クラシックが開催されますが、出場を希望している大谷選手は「シーズンが終わったばかりなので少しリラックス、息抜きをしながらゆっくり考えたい」と話し、投打での出場の可能性については「求められれば光栄なこと。体調面も含めて自分が万全な状態で出られるのかというところが、まずいちばんかなと思う」とコンディション次第になるという考えを示しました。

一方、来シーズンの契約が大リーグの日本選手では史上最高額の年俸3000万ドルとなったことについては「早い段階で球団といい関係を築けたのは1ついいこと。多くもらうからには活躍して当たり前みたいなところがあると思うので、その分、来年しっかり頑張りたい」と話していました。

地元 岩手県では号外

大谷選手の出身地、岩手県では、盛岡市に本社がある「岩手日報社」が6日正午すぎからJR盛岡駅前などで号外を配りました。
号外には大谷選手の写真とともに「投打の金字塔」や「『大谷流』唯一無二」という大きな見出しが記されていて、買い物に訪れた人たちなどが次々と受け取っていました。

盛岡市の20歳の専門学校生は「大谷選手は私たち若者にも岩手県民で良かったと思わせてくれる人で誇りに思うし、毎日、希望をもらっています」と話していました。

また、大谷選手と同じ奥州市出身の80代の男性は「けさも5時に起きてテレビで応援していました。本当にすばらしい記録だと思います」と話していました。

号外は盛岡市や奥州市、大谷選手が通っていた高校がある花巻市など岩手県内各地で配られるほか、アメリカ・ロサンゼルスなどでも英語版のページを追加して、あわせて6万7000部が配布されるということです。

少年時代の元指導者「本人の努力の結果」

大谷選手は岩手県奥州市にあるリトルリーグチーム『水沢リトルリーグ』に小学2年から中学1年まで所属していて、現在、このチームの監督を務め、コーチとして大谷選手を指導した佐々木一夫さん(58)がNHKの取材に応じました。

佐々木さんは、大谷選手が規定打席と規定投球回に達したことについて「すごい活躍で夢のようでうれしい。近くにいたはずなのに遠い存在になってしまった。毎日試合に出続けて快挙を成し遂げたことは、本人が目標を成し遂げるため努力を続けた結果ではないか」とたたえました。

そのうえで「根本的に野球が好きなことは少年時代から変わらない。好きな野球で勝ちたいという思いが快挙につながっていると思う」と話しました。

そして今後について「とにかくケガをせず長く野球を続けてグラウンドで活躍する姿を見せてほしい」と話し、かつての教え子を気遣っていました。

大リーグ5年目 今季も数々の記録

去年に続いて、投打の二刀流で長いシーズンを戦い抜いて数々の記録を作った大谷選手。今シーズンの道のりです。
ことしは大リーグ5年目で初めて開幕投手を務め、今シーズン新たに導入されたルールを適用して、史上初の先発ピッチャー兼1番・指名打者で出場し、勝利こそなりませんでしたが開幕戦から新たな歴史を刻みました。
バッターとしては、5月14日に大リーグ通算100号を達成。日本選手では松井秀喜さんとイチローさんに続いて3人目で、最速での達成でした。
その後も順調にホームランを打って開幕から49試合目の5月29日に2桁ホームランを軽々とクリアし、6月21日にはスリーランホームラン2本を含む4打数3安打8打点の大活躍を見せました。
1試合8打点はプロ野球・日本ハム時代も含めて自己最多で、大リーグの日本選手でも松井秀喜さんや井口資仁さんの7打点を超えて最多となりました。

一方で、チームは序盤こそ好調でしたが、5月25日から泥沼の連敗が始まり6月7日にはマッドン監督が解任されました。
その2日後、大谷選手が投げては7回を1失点、打っては逆転ツーランホームランと投打にわたる活躍で勝ち投手となり、球団最長となっていた連敗を「14」で止めました。

大谷選手はこの試合から自身6連勝で一気に勝ちを伸ばし、前半戦だけで大リーグでの自己最多に並ぶ9勝をあげました。
後半戦も大谷選手の活躍は止まらず、8月9日のアスレティックス戦ではピッチャーとして6回無失点、バッターとしてはホームランと、またも投打の活躍で10勝目をあげ、ベーブ・ルース以来、104年ぶりとなる「2桁勝利、2桁ホームラン」の偉業を達成しました。
その後、8月22日には2年連続でシーズンの規定打席に到達し、9月29日のアスレティックス戦で8回を無失点に抑えて15勝目をあげて規定投球回まで、あと1イニングに迫りました。
そして、5日の最終戦で規定投球回にも達し、大リーグで今の2リーグ制が始まった1901年以降では初めて、同じシーズンで規定打席と規定投球回に達した選手となり、2シーズン続けて、投打で歴史的な活躍を見せました。

規定投球回の到達 近年は減少傾向に

先発投手にとって規定投球回の到達は、シーズンを通して大きなケガもなく、ローテーションを守りきったことの証しですが、近年は減少傾向にあります。

大リーグの規定投球回はシーズンの試合数×1イニングで通常のシーズンなら162回となります。

到達者は2011年は両リーグ合わせて93人いましたが、2019年には3割以上減って61人、新型コロナウイルスの影響があった昨シーズンは39人にまで減りました。
今シーズンも規定投球回に到達したのは両リーグで45人となっていて、日本選手ではパドレスのダルビッシュ有投手が194回と3分の2イニングを投げて最多でした。

かつては各チームのエース級はシーズンの投球回が200回に到達することも珍しくありませんでしたが、2011年に両リーグ合わせて39人いた200回の到達者も2019年は15人、昨シーズンは4人に減り、今シーズンも8人にとどまりました。
一方で、野手のレギュラーの証しとなる規定打席の到達者は2011年が145人だったのに対して昨シーズンは132人、今シーズンも130人とほぼ横ばいで、投手が規定投球回に到達する方が難しくなっています。

その背景には、ケガを防止するため多くの先発投手が100球前後の球数でマウンドを降りることが増えたほか、戦術にデータ分析が重視されるようになり、好投していても対戦相手などでデータが不利なケースでは早い回に中継ぎ投手に交代することが増えたなどの事情があります。
また、大リーグの一般的なチームは5人の先発投手が中4日から5日で登板するのに対し、二刀流の大谷選手を抱えるエンジェルスは先発投手を6人に増やして中5日や6日の間隔で登板することから規定投球回の到達はより難しく、大谷選手は今シーズン、チームでただ1人の到達者になっています。

【今季 投手成績】

▽先発 28試合15勝9敗(勝利数リーグ4位/チーム1位)
▽防御率 2.33(リーグ4位)
▽奪三振 219(リーグ3位)
▽投球回 166回
▽奪三振率 11.87(リーグ1位)
(※奪三振率=9イニングあたりの奪三振数)

大リーグ5年目で規定投球回に初めて到達。昨シーズンの9勝を上回る2桁勝利をあげたほか、日米を通じて初めてシーズン200奪三振を達成するなど、ピッチャーとしては、いずれも大リーグで自己最高の成績を残しました。

<昨シーズン>
▼先発23試合9勝2敗(チーム1位)
▼防御率3.18
▼奪三振156(チーム1位)
▼投球回130回1/3

【今季 打者成績】

▽主に指名打者として157試合に出場
▽ホームラン34本(リーグ4位)
▽打率 2割7分3厘
▽打点 95(リーグ7位)
▽盗塁 11
▽三塁打 6(リーグ4位)
▽長打 70(リーグ3位)
▽敬遠 14(リーグ3位)
▽四球 72(リーグ7位)
▽出塁率 3割5分6厘

ホームラン数は昨シーズンを下回ったものの、松井秀喜さんとイチローさんに続き、日本選手で3人目となる大リーグ通算100号を達成しました。また、ベーブ・ルース以来、104年ぶりとなる「2桁勝利、2桁ホームラン」を達成したほか、今の2リーグ制が始まった1901年以降では初めて同じシーズンで規定打席と規定投球回に達するなど、投打の活躍で今シーズンも大リーグの歴史を塗り替えました。

<昨シーズン>
▼主に指名打者として155試合に出場
▼ホームラン46本(リーグ3位)
▼打率 2割5分7厘
▼打点 100
▼盗塁 26(リーグ5位)
▼三塁打 8(リーグ1位)
▼長打 80(リーグ2位)
▼敬遠 20(リーグ1位)
▼四球 96(リーグ3位)
▼出塁率 3割7分2厘(リーグ5位)