【国葬】国葬めぐって分かれる賛否

安倍元総理大臣の国葬が27日、行われます。
安倍元総理大臣の「国葬」をめぐって、NHKの世論調査では、賛否が分かれています。

NHK世論調査では

【7月の調査】
政府が「国葬」を行う方針について
▽「評価する」が49%
▽「評価しない」が38%で、
「評価する」のほうが多くなっていました。

【8月の調査】
▽「評価する」が36%
▽「評価しない」が50%と
「評価しない」が上回りました。

【9月の調査】
▽「評価する」が32%
▽「評価しない」が57%と、差が開きました。

また、9月の調査では、「国葬」についての政府の説明が「不十分だ」と答えた人が72%でした。

国会での閉会中審査で岸田総理大臣みずからが実施の理由や法的根拠について説明したものの、野党側からは「説明が不十分だ」という指摘が出たほか、与党内からも「旧統一教会をめぐる問題への反発が大きいのではないか」という見方が出ていました。

岸田総理大臣は、今月22日のニューヨークで行った記者会見で「あらゆる機会をとらえ、できるかぎり政府として説明の努力を行ってきたが、今なお説明が不十分だという意見や批判があることは真摯(しんし)に受け止めなければならない」と述べ、「国葬」の実施まで丁寧な説明を続ける考えを示していました。

国葬実施を決めた経緯は

岸田総理大臣は、安倍元総理大臣が亡くなった6日後の7月14日、記者会見で「国葬」を行う方針を表明しました。

国葬を行う理由については
▽憲政史上最長の8年8か月にわたり総理大臣の重責を担ったこと
▽東日本大震災からの復興や日米関係を基軸にした外交などで大きな実績を上げたこと
▽外国の首脳を含む国際社会から高い評価を得ていること
▽民主主義の根幹である選挙が行われている中の蛮行で亡くなり、国内外から幅広く哀悼の意が寄せられていること、
という4点を挙げました。

関係者によると、岸田総理大臣は、安倍氏の死去からあまり時間がたたないうちから、「国葬」の実施に法的に問題がないか調べるよう政府内に指示を出すなど、「国葬」の実施に向けた検討を進めていたということです。

自民党安倍派をはじめとする党内や一部の保守層から「国葬」の実施を求める声があがっていたことから、こうした声に配慮したのではないかという見方も出ています。

しかし、その後、旧統一教会と政治家との関係をめぐる問題もあって「国葬」に対する賛否が分かれる状況となり、野党などが実施を決めた経緯などについて政府に説明を求めたことなどから、岸田総理大臣が国会の閉会中審査に出席し、説明するという対応をとりました。

安倍元首相の政治実績は

岸田総理大臣は、今回、「国葬」の実施を決断した主な理由の1つとして安倍元総理大臣の政治実績を挙げています。

安倍氏は、平成18年に戦後最年少の52歳で総理大臣に就任し、およそ1年で退陣しましたが、その後、平成24年に再び総理大臣に返り咲きました。

衆・参 合わせて6回の国政選挙で勝利し、おととしの退任まで総理大臣としての連続の在任期間は7年8か月、第1次政権も含めた通算の在任期間は8年8か月と、いずれも歴代最長で、「安倍1強」とも言われました。

この間、デフレからの脱却に向けて「経済再生」を最優先に掲げ、
▽大胆な金融政策
▽機動的な財政政策
▽民間投資を喚起する成長戦略といった、
いわゆる「三本の矢」による「アベノミクス」を推進しました。

また、上皇さまから天皇陛下への皇位継承にあたっては、一代限りの退位を可能とする特例法の整備や、それに伴う改元に取り組んだほか、外交面では「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げ在任中に延べ176の国と地域を訪問しました。

平成28年には、G7伊勢志摩サミットの終了後、当時のアメリカのオバマ大統領の被爆地・広島への訪問を現職のアメリカ大統領として初めて実現させるとともに、安倍氏自身も現職の総理大臣として初めてハワイの真珠湾を訪れ、真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊しました。

またトランプ前大統領とは、大統領就任前に各国の首脳の中でいち早く会談して個人的な信頼関係を構築し、電話会談を含め、50回の首脳会談を行いました。

安全保障分野では、危機管理能力の向上に向けて、外交・安全保障政策の司令塔、NSC=「国家安全保障会議」を創設しました。

また、従来の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を限定的に容認する閣議決定をしたうえで、安全保障関連法を成立させました。

一方、森友学園や加計学園の問題、それに「桜を見る会」の対応などをめぐって、国会で野党から追及を受け、自民党内からも「長期政権によるおごりやゆがみの象徴だ」などといった指摘が出されました。

また、
▽600兆円への名目GDP=国内総生産の引き上げ
▽2%の物価上昇率の目標
▽「希望出生率1.8」など、
第2次安倍政権が掲げた目標を、在任中に達成することはできませんでした。

与野党の対応は

【与党側】
「国葬」の実施を決めた政府の判断について、与党側は、安倍元総理大臣が憲政史上最長の8年8か月、総理大臣を務め、多くの実績を残したことを考えれば、当然の対応だとしています。
ただ、実施の理由や意義、予算の妥当性などが十分に伝わっていないとして、政府に説明するよう努力を求めてきました。

【野党側】
野党側はスタンスが異なっています。

▽立憲民主党は、国民の思いがわかれる中での実施は不適切だなどとして、執行部は欠席し、それ以外の議員は、それぞれの判断に委ねるとしています。

▽共産党は、実施の合理的な理由が示されず 特定の個人の特別扱いは「法の下の平等」を定めた憲法に違反するなどと中止を求め、当日も欠席するとしています。

▽れいわ新選組も「実施の法的根拠がない」として欠席するとしています。

一方、
▽日本維新の会は、岸田総理大臣が国会の閉会中審査で実施の意義などを説明し、終了後に検証を行うと述べたことから出席するとしています。

▽国民民主党は政府の説明は丁寧さが欠けていると指摘する一方実施自体は理解できるとして、出席することを決めています。