訪問介護員の4人に1人が65歳以上 深刻な人手不足 財団法人調査

訪問介護の現場で働くホームヘルパーなどのうち、4分の1を65歳以上の人が占めていることが厚生労働省所管の財団法人の調査で分かりました。

この調査は厚生労働省が所管する財団法人「介護労働安定センター」が毎年行っているもので、昨年度(令和3年度)は全国のおよそ8500の事業所から回答を得ました。

それによりますと、事業所で働く人合わせて15万5000人余りのうち65歳以上の人は2万1342人で、全体に占める割合は13.7%となりました。

前回の調査(令和2年度)から1.4ポイントの増加となりました。

職種別で65歳以上の人の割合を見ると、理学療法士や作業療法士などが1.7%だったのに対し、ホームヘルパーなど訪問介護員が最も高い25.4%に上りました。
一方、介護職で働く人のうち、新型コロナウイルスなどの感染症やけがなど健康面の不安があると答えた人は昨年度から7.6ポイント増え、28.1%に上りました。

調査では、介護職の中でも特に人手不足が深刻だと指摘されている訪問介護の現場が、健康面に不安を抱えた高齢のヘルパーに支えられている実態が浮き彫りとなりました。

高齢化が進む訪問介護の現場では…

東京 北区で11年間ホームヘルパーとして働いている荒木美佐子さんは、長く働くことができる仕事だと50代で資格を取得しました。

ことし69歳になりましたが、今も一日5件から7件の訪問介護を週に6日ほど行っています。

健康への不安や体力の衰えはあるものの、訪問介護の仕事にやりがいも感じています。

荒木さんは、「利用者も自分も高齢なので新型コロナウイルスに感染してしまうと大変ですが、元気であれば定年がない仕事なので、細く長く働ければと思います」と話しています。

荒木さんが所属している訪問介護事業所では、15人のホームヘルパーのうち8人が65歳以上です。

事業所によりますと、荒木さんのように経験が豊富な高齢のヘルパーは即戦力になる一方で、求人を出しても若い世代からの応募はほとんどないのが実情だと言います。

さらに最近は新型コロナのクラスターで通っていた施設が利用できなくなった人からの訪問介護の依頼が増えていると言い、事業所では今後の事業継続に危機感を募らせています。

職員の黒澤加代子さんは、「65歳以上のヘルパーの中には、腰痛があったり、持病の薬を飲みながら働いてくれている人もいて、数年後どころか、来週大丈夫だろうかと、不安を抱えながらやっているのが現状で、若い世代にも訪問介護を選んでもらえるよう、人材育成も含めて取り組んでいきたい」と話していました。

専門家「介護報酬の引き上げなど官民挙げて検討必要」

調査結果を分析した1人、東洋大学の高野龍昭准教授は、訪問介護の現場で65歳以上の人の割合が多い理由について、「訪問介護は、訪問した時間の分しか介護報酬が発生しないため、ほかの介護サービスより収入が低い傾向にあり、介護で生計を立てたい若い世代には選ばれにくい」と指摘しています。

そのうえで、「国は高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう地域包括ケアを進めているが、人材確保が難しくなると支援が成立しなくなるおそれもあり、介護報酬の引き上げなど官民を挙げて対応を検討することが必要だ」と話していました。