エリザベス女王死去 世界から追悼の声相次ぐ【詳しく】

イギリスの君主として歴代最長となる70年にわたって在位してきたエリザベス女王が8日、96歳で亡くなりました。
女王の死去を受けて即位したチャールズ国王は、ロンドンのバッキンガム宮殿に戻り、多くの人が出迎えました。
国際社会からは女王の功績をたたえ、追悼する声が相次いでいます。
国内外の反応や動きを詳しくお伝えします。

エリザベス女王死去後初の週末 宮殿前で大勢の市民が追悼

イギリスのエリザベス女王の死去から初めての週末を迎え、ロンドンのバッキンガム宮殿の前には、家族連れなど大勢の市民が集まり、追悼する姿が見られました。

9月8日にエリザベス女王が亡くなってから、初めての週末となる10日、ロンドン中心部のバッキンガム宮殿の前には、朝から花束を手にした大勢の市民が集まっていました。

そして宮殿の門の前や宮殿の近くの街路樹のもとに、花束を手向けたり、「私たちの女王、愛しています」など書かれたメッセージを置いたりして、静かに追悼していました。

家族連れの姿も多く7歳と5歳のきょうだいを連れた父親は「女王が国のためにしてくれたすべてのことに敬意を示すために来ました。子どもたちも敬意を示すことが大切です。新しい国王には女王と同じ道を歩んでほしい」と話していました。

また父親と訪れた9歳の男の子は「花をささげて敬意を示すために来ました。すばらしい女王で僕にとっても大切な存在でした。今は気持ちが沈んでいます」と話していました。

天皇陛下 国葬に参列の方向で調整

関係者によりますとエリザベス女王の国葬には天皇陛下が参列される方向で政府と宮内庁の間で調整が進められていて、皇后さまについても体調を見ながら検討することにしているということです。

皇室とイギリスの王室は昭和28年(1953年)に上皇さまがエリザベス女王の戴冠式に昭和天皇の名代として出席されるなど古くから親密な関係にあります。
また天皇陛下の即位後初めての外国訪問として予定されていたイギリスへの訪問が新型コロナウイルスの影響で延期になっていました。
天皇陛下の国葬への参列はこうした経緯なども踏まえて調整が進められているものとみられます。
国葬に参列されれば、即位後初めての外国訪問になります。

また宮内庁は天皇皇后両陛下と上皇ご夫妻が9日から3日間の喪に服されていると発表しました。

トラス首相がチャールズ国王に初の謁見

チャールズ国王はトラス首相に「きょうの午後、ここに到着したら多くの人がお悔やみのことばをかけてくれたり、花を添えてくれたりしてとても感動した」と語りました。そしてエリザベス女王の死去について「私も多くの人と同じようにこの時を恐れていたが、前に進むしかない」と述べました。

即位後初のスピーチがテレビで放送

宮殿内で録画されたチャールズ国王のスピーチがテレビで放送され、この中で国王は「女王、そして私の最愛の母は、生涯を通じて私を鼓舞し、私と家族全員にとっての模範だった」と振り返りました。
そして国民に向け「あなたがどこに住んでいても、背景や信念が何であれ、忠誠心や敬意、そして愛をもって仕えるよう努める」と述べ、女王を手本に、国に尽くすことを誓いました。
最後にチャールズ国王は「愛するママへ。家族と国家への、あなたの愛と献身に感謝する」と述べて母親の生涯をねぎらいました。

ロンドン中心部のパブでは、チャールズ国王のスピーチが始まると店の中にいた人たちは飲み物を飲む手を止め、聞き入る姿も見られました。

宮殿前で新国王を出迎えた人たちは

チャールズ国王は、宮殿の門の前で車を降りると、女王を追悼するために集まった大勢の市民と握手やことばを交わしたほか、女性から手やほおに口づけをされる場面もありました。
50代の男性は「まさか国王が車を降りて握手をして歩くとは思っていなかったし、うれしかった。母親である女王は人とのつながりを大事にする人だったので、きっとその遺産を受け継ぎたいのだと思う」と話していました。
イギリス国旗をあしらったジャケットを着た50代の男性は「車を降りた国王に向け、『国王万歳』と叫ぶ声が聞こえた。新たな国王が温かく迎えられたのだと思う」と話していました。
30年前にナイジェリアから移住した70代の女性は「私が小さいころに女王がナイジェリアを訪れたことをいまでもよく覚えている。国をひとつにまとめてきたのがエリザベス女王だった。新しい国王にはこれまでの女王のような仕事を期待したい」と話していました。

米 バイデン大統領 女王の葬儀に参列する意向表明

アメリカのバイデン大統領は9日、記者団からエリザベス女王の葬儀に参列するかどうかを問われると「詳細はまだ承知していないが行くつもりだ」と述べ、参列する意向であることを明らかにしました。

国連本部でも国連旗の半旗掲揚

エリザベス女王を追悼するため、アメリカ ニューヨークの国連本部では9日、イギリスの国連次席大使や国連の職員らが静かに見守るなか、国連旗の半旗が掲げられました。

五輪開会式で共演「007」ボンド役ダニエル・クレイグさんら追悼

世界的なベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズの作者、J・K・ローリングさんは8日、ツイッターで「多くのイギリス人はほかの君主を知りません。女王は私たちの人生をつむぐ糸でした。女王は息を引き取るその時まで義務を果たし、イギリスの希望のシンボルとして世界に知られることになったのです」と女王をたたえました。
また、人気のスパイ映画「007」シリーズでジェームズ・ボンド役を演じ、2012年のロンドンオリンピックの開会式で女王との共演が話題を呼んだ俳優のダニエル・クレイグさんは8日にイギリスのメディアを通じてメッセージを寄せ「私は多くの人と同じように深い悲しみの中にいます。私の思いはロイヤルファミリーや彼女が愛した人たち、そして彼女を愛したすべての人たちとともにあります。女王は比類無い遺産を残し、深く惜しまれることでしょう」と悼みました。
さらに、ことし6月、女王の即位70年を記念する「プラチナ・ジュビリー」で、女王と一緒にバッキンガム宮殿でお茶を飲む映像が話題になった、イギリスの児童文学の人気キャラクター「くまのパディントン」も8日、ツイッターで「女王、すべてのことに感謝しています」と、女王と共演した際のせりふと同じことばで追悼しました。

ロンドン中心部ではあちらこちらに女王の写真や追悼メッセージ

このうち若者向けの商店などが軒を連ねるオックスフォードストリートの周辺では、商業ビルの外壁やショーウインドー、それにバス停などに若い頃の女王や笑顔の女王の写真が飾られていました。
写真の隣には「奉仕、義務、そして献身の人生。ありがとうエリザベス女王」といったメッセージが掲示されている場所もあり、行き交う人たちは足を止めて眺めたり写真を撮ったりしていました。
また、老舗の百貨店のなかには女王に敬意を示すためとして10日朝まで営業を取りやめたところもあり、街全体で哀悼の意を表しているようでした。

また中心部の繁華街、ピカデリーサーカスでは、大型画面にエリザベス女王の若いころと最近の顔写真が映し出され、女王を追悼していました。

ロンドンで砲兵部隊などが女王の年齢と同じ96発の空砲撃ち追悼

このうちテムズ川のほとりにあるロンドン塔の近くでは9日午後、川に向かっておよそ10秒おきに空砲が放たれました。周囲では大勢の市民や観光客が集まって砲身から上がる白い煙を静かに見守りました。そして96発すべてが撃ち終わると、拍手で女王への敬意を示していました。

女王が死去したバルモラル城につながる門の前には多くの花束が

手書きの女王の似顔絵やくまのぬいぐるみなども置かれ、子ども連れや老夫婦などが絶え間なく訪れ中には花束を手向けながら涙ぐむ人の姿も見られました。
このうち50代の男性は「私たちは皆女王の長年の奉仕を誇りに思っている。私の人生には常に女王がいて、イギリスの最も優れた部分をすべて代表するような人でした」と涙ながらに話していました。
また、ゆりの花束を手向けた女性は「女王はすばらしい女性で、この国のために多くのことを成し遂げてくれた。彼女は私の家族全員の模範だ」と話し、女王への祈りを込めたメッセージを添えていました。

岸田首相 弔意の書簡 トラス首相あてに送る

書簡では、エリザベス女王の崩御の報に接して深い悲しみに包まれており、日本政府として、イギリス王室や政府および国民らに対し心から哀悼の意を表すると伝えています。
またエリザベス女王が、イギリス王室史上最長の70年にわたる在位の中で世界の平和と繁栄のために極めて大きな役割を果たされたほか、昭和50年に訪日されるなど女王の貢献のもとで日英関係が発展してきたとしています。
そのうえで、女王の崩御は国際社会にとっての大きな損失であり、イギリス国民がこの深い悲しみを乗り越えるにあたり、日本は常にイギリスとともにあるとしています。

高円宮妃の久子さま 今月予定していた訪英取りやめ

久子さまは、今月12日から18日までの7日間の日程でイギリスを訪問し、名誉総裁を務める国際的な環境団体「バードライフ・インターナショナル」の100周年世界大会の開会式に臨むほか、シンポジウムで基調講演もされる予定でした。
しかし宮内庁によりますと、エリザベス女王が死去したことを受けて、イギリスの王室や国民が喪に服していることに配慮して予定を取りやめられたということです。
「バードライフ・インターナショナル」の世界大会は、今のところ予定どおり開催されるということで、オンラインで参加されるかなどについて今後、検討するということです。

スポーツの試合や催し 延期の動き相次ぐ

サッカーのイングランドプレミアリーグは「エリザベス女王の並外れた人生と国への貢献を称え、弔意を表すため」として今週末の試合と月曜日の夜の試合を延期すると発表しました。そのうえで「国民だけでなく、彼女を敬愛する世界中の人々にとって大きな悲しみであり、われわれはすべての人々と一緒に彼女の死を悼む」とコメントしています。
また女王が死去した8日には、イギリスとアイルランドのすぐれた音楽のアルバムに贈られる「マーキュリー賞」のことしの授賞式が予定されていましたが、女王の訃報を受け、急きょ式典は延期されました。
さらに海外メディアによりますと、イギリスの有名ブランド「バーバリー」は、来週からロンドンで開催されるファッションの祭典「ロンドン・ファッション・ウィーク」で、ショーを実施しないと明らかにしたということです。
また、イギリスの中央銀行イングランド銀行は9日、15日に予定されていた金融政策の会合を1週間延期すると発表しました。会合で決定される金利などの情報については22日に公表するということで、イングランド銀行は延期の理由について「国民的な喪の期間を考慮した」としています。
このほか、バスや鉄道会社の従業員などで作る運輸系の労働組合は、来週予定していたストライキを中止すると発表しました。

仏 マクロン大統領 哀悼の意を英語でのビデオメッセージで

マクロン大統領は「エリザベス女王は、イギリスの女王であっただけでなく、私たち皆の女王でもあった。女王は、永遠に私たちとともにあるだろう。女王が体現し世界に広め続けた、民主主義と自由の道徳的な不屈の精神を永久に覚えているだろう。この悲しみの中にあって、私たちは国王、王室、イギリス国民、そして女王を愛し、彼女を失った深い悲しみの中にあるすべての人たちに哀悼の意を表す」と述べました。また、マクロン大統領は9日、パリのイギリス大使館を訪れて記帳し、エリザベス女王の死を悼みました。

現地時間9日午後 女王が死去したバルモラル城のようすは

門の前には少しでも女王の近くにいたい、感謝の気持ちを伝えたいと訪れた多くの人たちからの花束や感謝の気持ちを伝えるメッセージが並んでいます。
子ども連れや老夫婦など市民が途切れることなく訪れていて、中には花を手向けながら涙ぐむ人や静かに祈る人の姿も見られました。

城の近くに住んでいるという20歳の女性に話を聞いたところ「私はエリザベス女王のいたイギリスしか知りません。新型コロナなど苦しいときに常に国民に寄り添うメッセージを伝えてくれた女王に尊敬と感謝を伝えるために来ました」と話していました。

世界各国のメディアも大勢集まっていて、イギリスだけでなく世界にとって女王の存在がいかに大きかったかを感じさせられます。女王は今もバルモラル城の中にいるということで、現場では安らかな眠りについた女王への追悼が続いています。

9日正午 各地の教会が一斉に鐘を鳴らす

現地時間の9日正午には、ロンドンのウェストミンスター寺院やセントポール大聖堂などの教会が一斉に鐘を鳴らし始め、エリザベス女王の死を悼みました。地元メディアによりますとイギリス各地の教会でも同時に鐘を鳴らしたということです。

天皇陛下 “深い悲しみの気持ちと心よりの哀悼の意”

天皇陛下は「深い悲しみの気持ちと心よりの哀悼の意を表します。女王陛下が残された数多くの御功績と御貢献に心からの敬意と感謝を表明いたします」と文書でお気持ちを述べられました。

皇室とイギリス王室は、昭和28年に上皇さまがエリザベス女王の戴冠式(たいかんしき)に昭和天皇の名代として出席されるなど古くから親密な関係にあり、天皇陛下も大学院在学中にイギリスのオックスフォード大学に留学し、その後も3回にわたってイギリスを公式訪問し、エリザベス女王と夕食をともにするなど交流を深められてきました。

文書の中では「我が国との関係においても、女王陛下は両国の関係を常に温かく見守ってくださり、英王室と皇室の関係にも御心を寄せてくださいました。私の英国留学や英国訪問に際しても、様々な機会に温かく接していただき、幾多の御配慮をいただいたことに重ねて深く感謝したいと思います」などと記されています。

また、宮内庁によりますと、上皇ご夫妻は、女王の訃報に接して、深い悲しみのうちに、在りし日の女王の姿を思い起こし、これまでの長きにわたる親交に感謝しつつ、ご冥福を祈られている様子だということです。

天皇陛下は、チャールズ国王に天皇皇后両陛下からの弔意を伝えられ、上皇ご夫妻も弔意を伝えられたということです。

新国王即位で国歌は「ゴッド・セーブ・ザ・“キング”」に

イギリスの複数のメディアによりますと、イギリスの国歌「ゴッド・セーブ・ザ・クイーン」は長男のチャールズ皇太子が国王に即位したことを受け、「ゴッド・セーブ・ザ・キング」になります。

歌詞に登場する「女王」ということばも「国王」に変わるということです。

“女王の顔あしらわれた紙幣や硬貨も今後国王に” 地元メディア

このうち硬貨については、王立造幣局のホームページによりますと、エリザベス女王が戴冠(たいかん)した1953年に製造が始まり、その後、女王の肖像は4回にわたって更新されました。
最新のデザインは2015年から使用され、一般に流通している1ペニーから2ポンドまで8種類すべての硬貨に女王の肖像が入っています。

今後、チャールズ国王の肖像が入った硬貨の製造に向けて準備が進められるとみられます。

このほか地元メディアは、エリザベス女王の横顔があしらわれた郵便切手についても、今後、チャールズ国王のものにデザインが変更されると伝えています。

女王ゆかりの一皿

エリザベス女王が1975年に来日した際に昼食会が開かれた東京 千代田区の東京會舘では、当時、女王にもふるまわれた牛肉やフォアグラをパイで包んで焼いた料理をいまでも結婚式などの席で客に提供しています。東京會舘を象徴する一皿として、いまも人気を集めているということです。
昼食会は47年前の1975年5月8日に開かれ、財界の要人を中心に400人ほどが出席したということです。昼食会の際に撮影された写真には、出席者に挨拶するエリザベス女王の様子が写っています。当時出席者の席に置かれたメニューは現在も資料として残されていて、ジャガイモの冷製スープや鰆の網焼き、それに牛肉のパイ包みなどが提供されたことがわかります。
入社後、先輩社員から当時の話を幾度も聞いたという渡辺訓章社長は「その場にいなかったにも関わらず詳細が頭に入るほど先輩から何度も話を聞いた。当時のスタッフは非常に誇らしい気持ちでお迎えしたのだと思う」と話していました。
そのうえで「来日は一度しかかなわなかったが、できることならもう一度料理を召し上がっていただきたかった」と話していました。

石坂浩二さん「すばらしいほほえみでした」

エリザベス女王は1975年に日本を公式訪問したとき、NHKも訪れ、大河ドラマ『元禄太平記』の収録を見学しました。

当時、出演していた俳優の石坂浩二さんがエリザベス女王を出迎えました。

石坂さんはエリザベス女王が死去したことを受けて、NHKの電話取材に応じ「一生懸命ご挨拶を英語で考えたのですが、前に立ったら本当にドキドキしてしまって、やはり日本語しかでませんでした」と、当時を振り返っていました。

さらに石坂さんは「大変美しい方だなと思いましたし、想像したよりは大きな方じゃないのに圧倒されるような気持ちでした。最後にありがとうと言ってお帰りになった時に、初めてほほえんでくれたのですけど、それがやはりすばらしいほほえみでした」と思い出を語っていました。

黒柳徹子さん「可愛らしくて威厳のある方」

1975年に来日した際に女王に面会したという黒柳徹子さんが当時の印象を振り返り「女王様ほど、正直で、お可愛らしくて、そして威厳のある方に、それ以来お目にかかっていない。人気がおありなのも、もっともと、今も思っている」とコメントを発表しました。

黒柳徹子さんは1975年にエリザベス女王が来日した際にイギリス大使館で会ったということで「たいへんお元気な方で、その日は、NHKや色々なところにいらした後だったというのに、生き生きとしていらした」と振り返りました。

黒柳さんはその場で、エリザベス女王からテレビの仕事でどんなことをしているか尋ねられたということで「『女王様が羽田にお着きになって、皇居までいらっしゃるところを中継いたしました』と言ったら『うまくいったの?』とおっしゃったので『はい、女王様が上手におやり下さったので、うまくいきました』と申し上げました。すると女王様は『あははは』と、大きくお笑いになった」と女王とのユーモラスなやり取りを紹介しました。

また、女王のネックレスやイヤリングなどにはこれまで見たこともない大きくて美しい真珠がデザインされていたということで「女王様が『は、は、は』とお笑いになると、全部の宝石が揺れるので、それはまさに、燦然とは、こういう事を言うのだと思わせてくれました」と振り返りました。

そして「女王様ほど、正直で、お可愛らしくて、そして威厳のある方に、それ以来お目にかかっていない。人気がおありなのも、もっともと、今も思っている」と女王の死を悼みました。

茶道・裏千家 千玄室さん「包容力と統率力あり すばらしい方」

1975年に女王が来日した際にお茶をふるまった茶道・裏千家の前の家元、千玄室さんは「優しくて大きな包容力を感じました。女王と直接お話できたことは一生忘れられない経験です」と振り返りました。
千玄室さんは47年前の1975年にエリザベス女王が夫のフィリップ殿下とともに京都市の「桂離宮」を訪れた際、お茶をふるまったということです。

玄室さんは女王の死去について「急なことで本当に悲しく、心から哀悼の意を表します。すばらしい人格と人徳、イギリスという伝統的な歴史の中で女王としての大きな包容力と統率力があり、非常にすばらしい方でした」と述べました。

お茶をふるまった際の思い出について「フィリップ殿下とともに顔を寄せて香りを楽しむなどしながら穏やかな様子でお茶を召し上がっていました。とにかく優しいというか、大きな包容力を感じました。ご存じないことは質問をして、日本の文化に触れたことに満足した様子でした。とても和やかな雰囲気に感激しました」と当時を振り返りました。

そして、玄室さんは「女王と直接お話できたことは一生忘れられない経験です。女王の志を、次の方にも受け継いでもらいたいと願っています」と話していました。

イギリスの新聞 一面でさまざまな見出しと写真で追悼

このうちタイムズは、即位したときのエリザベス女王の写真に「公務にささげた生涯」という見出しをつけて敬意を示し、デイリーミラーは年を重ねた女王の写真に「ありがとう」というシンプルな見出しで謝意を表しています。

また、サンは女王に対して「愛していました」と呼びかけ、デイリーメールは「私たちの心は張り裂けた」として悲しみを表しています。

さらに、デイリーテレグラフは「愛していたからこその悲しみだ」という見出しをつけていて、地元メディアは女王がかつてアメリカの同時多発テロの遺族に向けて発したことばだと伝えています。

女王死去の発表直前 バッキンガム宮殿上空に2つの虹

当時、宮殿の前には女王の健康を案じた市民などが大勢集まっていて、現地メディアによりますと、虹は激しい雨が降ったあと雲が晴れた一瞬の間に現れたということです。

バッキンガム宮殿は、エリザベス女王が去年4月に亡くなった夫のフィリップ殿下とともに長年暮らした場所で、SNSでは「2人が連れ添っているようだ」とか「女王が殿下に迎えられ、虹の向こうへ渡った」などと受け止められています。

東京 千代田区のイギリス大使館には多くの人が献花

このうち、9歳まで父親の仕事でイギリス・マンチェスターに住んでいた会社員の女性(34)は「きのうの夜から容体を心配していましたが、けさ起きて、お亡くなりになられたと知ってとても悲しかったです。イギリス人だけでなく日本人の私にとっても、女王であり、母であり、祖母のような偉大な存在でした」と話していました。

20代のころイギリスに住んでいたという女性は「女王の訃報を受けていてもたってもいられなくなって献花に訪れました。イギリスの人たちがどれほど悲しんでいるかと思うと胸が痛みます」と話していました。

さらに、高校、大学とイギリスに留学していた会社員の男性(39)は「イギリスに留学経験があるので敬意を払おうと思って来ました。彼女が亡くなったことはとても残念です」と話していました。

また、献花に訪れた、都内に住むイギリス人の男性は「数日前、トラス氏を首相に任命したときは元気だと思っていました。突然の訃報を聞いて家族全員がショックを受けて、私もまだ受け止められていない。今のイギリスの繁栄は彼女のおかげだと思います」と話していました。

ロングボトム駐日大使 声明を発表「女王は持続と安定の源」

この中で、ロングボトム大使は「エリザベス女王が亡くなられたことに深く心を痛めています。女王は、現代のイギリスを築いた礎です。70年という異例の在位期間中、ほかのどの君主よりも広く海外を訪問しました。自国や国際情勢が大きく変化する中、女王は持続と安定の源でした。イギリスと世界の国々との間で友情、理解、尊敬の絆をこれほど強固にした人はいないでしょう。1975年に夫のフィリップ殿下とともに日本を訪問されたことはその証しと言えるでしょう」と述べました。

また、ロングボトム大使はエリザベス女王が自分にとって模範となる存在だったと振り返り「新しく任命されたイギリス大使が海外に赴任する前に女王は必ず会って、赴任先の国のことや将来のことなどを話してくれました。彼女は私の人生の中でとても大きな存在でした。外交官としての私に大きな刺激を与えてくれました」と述べ、女王の死を悼んでいました。

中国 習近平国家主席「イギリス国民にとって大きな損失」

国営の中国中央テレビによりますと、習近平国家主席は9日、新たに即位したチャールズ国王に弔電を送り、深い哀悼の意を示しました。

この中で、習主席は「エリザベス女王は中国を訪問した初めてのイギリスの君主であり、亡くなったことはイギリス国民にとって大きな損失だ」としています。

そのうえで「私は両国関係の発展を非常に重視しており、双方の関係が健全かつ安定的に発展し、両国と国民に幸福をもたらすことを望む」としています。

シンガポール リー首相「偉大なリーダーとして記憶される」

シンガポールのリー・シェンロン首相は、フェイスブックに「エリザベス女王は生涯を通じてイギリスとイギリス連邦に尽くしました。女王の貢献は歴史に記され、偉大な世界のリーダーとして常に記憶されるでしょう」と投稿し、哀悼の意を示しました。

各国王室からも追悼のメッセージ

スペイン国王のフェリペ6世は、イベントでの演説で「エリザベス女王は、その威厳、義務感、勇気、そして国民への献身により、史上最高の女王の1人として記憶されることでしょう」と追悼しました。

ロイター通信によりますと、フェリペ6世は母親が去年死去したエリザベス女王の夫フィリップ殿下と血縁関係にあり、イギリス王室とは深いつながりがあったということです。

また、ノルウェー王室のウェブサイトによりますと、エリザベス女王と同じ曽祖父母を持つというノルウェーのハラルド国王は「女王陛下は1世紀近くにわたり、イギリス連邦のためにその生涯をささげ、よい日も悪い日も、幸せな時も悲しい時も、イギリス国民に寄り添ってこられた」とコメントし、哀悼の意を表しました。

また、オランダ王室はアレキサンダー国王などが、SNSで声明を発表し「私たちは、イギリスとその王室に強い絆を感じており、今の悲しみを分かち合っています。エリザベス女王が忘れられないほどの貢献をされた両国の緊密な友好関係に大変感謝しています」と謝意を表しました。

BBC “ひつぎは今後ロンドンに” 2週間以内に国葬か

エリザベス女王の国葬までの具体的な日程は明らかになっていませんが、イギリスの公共放送BBCによりますと、女王のひつぎは今後、スコットランドからロンドンに運ばれたあと、バッキンガム宮殿から国会議事堂の建物で最も歴史が古いとされるロンドン中心部のウェストミンスター・ホールに移されて4日間ほど安置され、一般の人が弔意を表することができるようになるということです。

女王の国葬は2週間以内に執り行われるとみられていて、当日は、女王のひつぎがホールの西側にあるウェストミンスター寺院に運ばれて葬儀が行われます。

ウェストミンスター寺院は、過去900年にわたりイギリスの国王や女王の戴冠式が行われてきた場所で、エリザベス女王にとってはフィリップ殿下との結婚式を行った場所でもあります。

葬儀にはイギリス王室のメンバーや政治家だけでなく、世界各国の首脳など大勢が参列するとみられます。

葬儀が終わると、ひつぎはロンドン郊外のウィンザー城に移され、去年フィリップ殿下の葬儀も行われたセント・ジョージ礼拝堂に運ばれて埋葬されるということです。

エリザベス女王の死去に伴い国王に即位したチャールズ皇太子は10日、ロンドンのセント・ジェームズ宮殿で国王としての正式な宣言を行うとみられています。

国王の戴冠式の日程はまだ決まっていませんが、手続きに時間がかかり、エリザベス女王の場合、即位から戴冠式まで1年余りの時間を要しています。

専門家「イギリスの顔 大きな喪失感」

イギリスの政治外交史が専門で、イギリス王室に詳しい関東学院大学の君塚直隆教授はエリザベス女王について「戦後の70年間をすべて自身で体現していた。イギリスの顔であり、世界で最もよく知られた女性だった。女王の死は、大きな喪失感をもたらしていると思う」と指摘しました。

君塚教授は、女王が「コモンウエルス」と呼ばれるイギリス連邦の加盟国との関係を特に重視していたと述べたうえで「第二次世界大戦後、イギリス政府がアメリカやヨーロッパとの関係を重視する一方で、コモンウエルスとの関係をつなぎ止めていたのは女王だった。EU離脱後、その関係はますます大切になっていく」と功績をたたえました。

また日本との関係について「皇室とイギリス王室の関係は深かったが、第二次世界大戦で敵対国となり、断絶していた。しかし、女王から日本に手を差し伸べ、当時の昭和天皇がそれに応えたことから関係が復活した」と述べました。

そのうえで「昭和50年にはエリザベス女王がイギリスの君主として初めて日本を訪れた。女王は、日本とイギリスの戦後の和解についても心を砕いた」と両国の歴史を振り返りました。

女王から勲章受章の長谷山名誉教授「心から哀悼の念」

イギリスのエリザベス女王から先月、勲章を受章した北海道国立大学機構の理事長で慶應大学名誉教授の長谷山彰さんは「女王は勲章をみずから決定されたと伺っている。日本の大学の活動にもこまやかに目を配って評価していただいたことを大変うれしく思っていた。心から哀悼の念を伝えたい」と話しました。

長谷山さんは、2017年5月から去年5月まで慶應義塾の塾長を務めていて、任期中に日英関係の発展に貢献したとして先月、エリザベス女王から「名誉大英帝国勲章MBE」と呼ばれる勲章を受章しました。

長谷山さんはエリザベス女王が死去したことについて「突然の知らせで大変驚いた。長い在位期間の中でいろいろな時代を乗り越え、英国を率いてきたことに敬意を表するとともに、心からお疲れさまでしたという気持ちでいっぱいです」と述べました。

長谷山さんは、慶應義塾の塾長として、横浜市や川崎市と連携して、東京オリンピック・パラリンピックのイギリス代表チームの事前キャンプを慶應大学の施設で受け入れたほか、イギリスの教育機関とのさまざまな交流に尽力したということです。

また毎年、女王の誕生日には、東京のイギリス大使公邸で開かれる誕生パーティーに参加して祝ってきたということです。

長谷山さんは「エリザベス女王は一人一人の勲章をみずから決定されたと伺っている。日本の大学の活動にもこまやかに目を配って評価していただいたことを大変うれしく思っていた。心から哀悼の念を伝えたい」と述べて追悼していました。

日本でも政府機関で半旗掲げ弔意

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「エリザベス女王陛下の崩御の報に接し、深い悲しみを禁じえない。日本政府として、イギリス王室、イギリス政府およびイギリス国民の皆様に対し、心から哀悼の意を表する。日本政府としても、本日、関係政府機関において半旗を掲げ、弔意を表している」と述べました。

また、エリザベス女王の葬儀への日本政府からの参列について「現時点において『国葬儀』を含め、今後の日程について正式な発表があったとは承知していない。いずれにせよ、日本政府の対応ぶりについてはイギリス政府の発表も踏まえつつ、しかるべく検討していく」と述べました。

英各界著名人から追悼メッセージ

このうち、ことし6月に開かれたエリザベス女王の即位70年を記念するイベントで演奏を披露した歌手のエルトン・ジョンさんはツイッターに「女王は品位と慎み深さと真に思いやりのある温かさによって、私たちを導いてくれました。子どものころからきょうに至るまで私の人生の中で大きな部分を占めてきた女王を失ったことをとても悲しく思います」とコメントしています。

世界的な人気を誇るイギリスのロックバンド、ザ・ローリング・ストーンズのミック・ジャガーさんは、ツイッターで「私の生涯において、女王は常にそこにおられました。子どものころ、テレビで女王の結婚式の様子を見たことを覚えています。女王は若く美しい女性から、国民から愛されるおばあさんになられました。王室の皆様に深くお悔やみ申し上げます」としています。
サッカーの元イングランド代表のデビッド・ベッカムさんは自身のインスタグラムに「私たちが感じている悲しみは女王がこの国や世界の人々にとってどれほど重要な存在であったかを示しています。彼女のリーダーシップが私たちにどれほどの影響を与え、困難なときにどれだけ私たちを勇気づけてくれたでしょうか。女王はその最期の日まで品位と品格をもって国に尽くしてくれました」とコメントし、死を悼みました。

ワイン提供の北海道池田町「お褒めのことばいただき励みに」

北海道池田町によりますと、今から47年前の昭和50年に女王が来日した際のパーティーに特産の十勝ワインを提供し、その後パーティーを主催した日英協会から女王がワインを2、3杯飲んで「軽くてとてもおいしい」と話していたと伝えられたということです。

町では今も、ワインの醸造を行っている町の施設に、当時、女王が飲んだものと同じ年に作られたワインを展示して、こうしたエピソードを紹介しています。

池田町ブドウ・ブドウ酒研究所の佐野寛所長は「当時は町でワイン造りを始めたばかりでしたが、女王からお褒めのことばをいただいたことで、苦労が報われたととても喜び、その後のワイン造りの励みになったと聞いています」と話していました。

そのうえで、女王が亡くなったことについて「突然のことで今はただ驚くばかりです。これからこの驚きが悲しみに変わってくると思います。本当に残念です」と話していました。

ブラジル 追悼のため巨大キリスト像をライトアップ

南米ブラジルのリオデジャネイロでは、8日、観光名所として知られるコルコバードの丘にある巨大なキリスト像が追悼のため、イギリス国旗・ユニオンジャックの色の青と赤、それに白で照らされました。

このライトアップは一晩中行われるということです。

岸田首相「心から哀悼の意」

岸田総理大臣は9日午前、総理大臣官邸で記者団に対し「エリザベス女王陛下のご崩御の報に接し、深い悲しみを禁じえない。日本政府としてイギリス王室、イギリス政府およびイギリス国民に対し、心から哀悼の意を表する」と述べました。

そのうえで「エリザベス女王陛下はイギリス王室史上最長の70年にわたって在位され、世界の平和と繁栄のために極めて大きな役割を果たされた。昭和50年に訪日するなど、特に日英関係の強化に大いに貢献された。激動の世界情勢においてイギリスを導いたエリザベス女王陛下の崩御はイギリス国民のみならず国際社会にとって大きな損失だ」と述べました。

そして「イギリス国民がこの深い悲しみを乗り越えるにあたり、日本は常にイギリスとともにある。謹んで哀悼の意を表させていただく」と述べました。

このあと、岸田総理大臣は9日午後4時半ごろ、東京・千代田区のイギリス大使館に弔問に訪れました。

岸田総理大臣は、大使館内に設けられた記帳台で記帳し、エリザベス女王の死を悼みました。

エリザベス女王とは

イギリス王室は、エリザベス女王が現地時間の8日、静養先の北部スコットランドのバルモラル城で死去したと発表しました。

エリザベス女王は、1926年4月、のちの国王、ジョージ6世の長女として生まれ、1952年、国王の死去に伴い、エリザベス2世として25歳で、王位を継承しました。

即位から5年後の1957年、冷戦のさなかにニューヨークの国連本部を訪れ、初めての演説を行いました。

この中で、エリザベス女王は「私たちはまだ、理想とする状況の達成には程遠いのが実情です。しかし、落胆してはいけません。世界中の人々は、国連が努力をし続けることを期待しているのです」と訴えました。

演説のあと、会場では参加者たちによる拍手が鳴り響いていました。

また、それから50年余りたった2010年に、再び国連本部で行った演説では「国連はこれまで、地球規模の危機に対して国際的な対応をするための支援を行ってきました。現在の課題は、この明快なリーダーシップを発揮し続け、私たち人類の安全や繁栄、そして尊厳を守るという、目の前の仕事を見失わないことです。あすの世界で、私たちが真の国連であるためには、これまで以上に力を合わせなければならないのです」と訴えていました。
2015年には、19世紀のビクトリア女王を抜いてイギリスの君主として在位最長を更新し、ことし6月には、在位70年を記念する祝賀行事「プラチナ・ジュビリー」が盛大に行われるなど、イギリスの統合を象徴する存在として敬愛されてきました。

エリザベス女王は、ソーシャルメディアを活用して、国民とコミュニケーションを積極的にはかる姿勢を打ち出し「開かれた王室」を実践しました。

新型コロナウイルスの感染が拡大し、社会に不安が広がった際には、テレビ演説で連帯を呼びかけるなど、国民に寄り添ってきました。

エリザベス女王はおととし4月、テレビ演説を行い、最前線で新型コロナウイルスの対応に当たる医師や看護師をはじめ、外出制限を強いられている市民などに感謝の意を示しました。

そのうえで「私たちは、ともにこの病気に立ち向かっている。私たちが団結し、強い意志を持ち続ければ、打ち勝つことができる」と述べ、国民に連帯を呼びかけました。

エリザベス女王がクリスマス以外にメッセージを発表するのは極めて異例で、イギリスメディアは、人々の不安を取り除き、連帯を呼びかけたいという女王の思いが込められた演説だと伝えていました。
日本の皇室との関係も深く、1971年には昭和天皇がイギリスを訪問し、1975年には、エリザベス女王が日本を公式に訪問しています。

天皇陛下も3回にわたってイギリスを公式訪問するなど、交流を深められてきました。

エリザベス女王は去年4月、長年連れ添った夫のフィリップ殿下を亡くし、その後、公務に復帰しましたが、ことし6月の「プラチナ・ジュビリー」では体調を考慮して礼拝を欠席するなど限られた機会しか姿を見せず、イギリス国内では健康を気遣う声が上がっていました。
また、9月6日には、与党・保守党の新しい党首に就任したトラス氏をバルモラル城に迎え、首相に任命しましたが、公共放送BBCによりますと、ロンドンのバッキンガム宮殿以外で首相を任命するのは70年の在位期間中で初めてで、女王の健康状態に配慮したものと見られていました。

イギリス王室によりますと、女王は8日朝の診察のあと、健康が懸念される状態だとして、医師団の監督のもとに置かれていましたが、現地時間の8日午後、安らかに亡くなったということです。96歳でした。

エリザベス女王のひつぎは、今後、スコットランドからロンドンに運ばれ、
女王の葬儀は、国葬としてロンドン中心部のウェストミンスター寺院で行われます。

ロンドンでは9日、王室の宝物が保管されているロンドン塔と中心部の公園ハイドパークで、軍の砲兵部隊などが女王が刻んだ年齢と同じ96発の空砲を撃ち、追悼することになっています。

そして、女王の死去を受けて国王に即位した長男のチャールズ国王が、バルモラル城からロンドンに戻り、国民に向けたスピーチが放送される予定です。
エリザベス女王の死去を受け、王位継承順位が1位だった長男のチャールズ皇太子が国王に即位しました。

即位したチャールズ国王が声明「最大の悲しみのとき」

この中でチャールズ国王は「私の最愛の母、女王の死去は私と家族全員にとって最大の悲しみのときだ。私たちは大切な君主、そして愛すべき母の死去を深く悼んでいる。女王の死は国全体、イギリス連邦、そして世界中の数え切れないほどの人たちに深い悲しみを持って受け止められている」としています。

そのうえで「私と家族は女王が広く敬愛されていたことを知ることで慰められ支えられる」と述べています。

王室ウェブサイト 背景が黒に

イギリス王室のウェブサイトは、トップ画面の背景が黒くなり、中心にはエリザベス女王の肖像が掲載されていて、ほかの内容は閲覧できないようになっています。

トップ画面には「きょう午後、女王がバルモラル城で安らかに息を引き取りました。国王と王妃は今夜はバルモラル城に残り、あすロンドンに戻る予定です」と記し、チャールズ国王とカミラ王妃は、9日にロンドンに戻ることを明らかにしています。

トラス首相 官邸前で声明「並外れた生涯の奉仕をたたえたい」

冒頭、トラス首相は「われわれは打ちひしがれている。イギリス国内や世界中にとって大きなショックだ。女王は現代のイギリスの礎であり、そのもとでわが国は繁栄と成長をしてきた。今のすばらしいイギリスがあるのは女王のおかげだ」と謝意を示しました。

そして「エリザベス女王はわれわれに必要な安定と強さをもたらした。まさにイギリスの精神そのものでその精神は永遠に続く。イギリスと世界中で愛され、私個人、そして多くの国民の励みだった。その公務に対する献身はわれわれの模範だった」としています。

そのうえで、トラス首相は「エリザベス女王は生涯で100か国以上を訪れ、難しい時代の中にあって多くの人々と触れ合ってきた。イギリスとイギリス連邦、そして世界中の友人とともに並外れた生涯の奉仕をたたえたい」と述べ、その死を悼みました。

イギリス 首相経験者が相次いで哀悼の意

このうち9月に辞任したジョンソン前首相は、ツイッターに声明を発表しました。

ジョンソン前首相は「私たちの国にとって最も悲しい日だ。一人一人の心の中には私たちが思っていた以上に女王死去の痛みや喪失感がある」としています。

そして「女王は多くの場で笑顔とぬくもり、そしてユーモアという魔法を70年というたぐいまれなる間、国中に広げてきた」と述べ、長年の活躍をたたえました。

また、メイ元首相もツイッターに声明を投稿し「イギリスとイギリス連邦全体で、女王の死去を嘆いている。首相として女王に仕えることができたのは私の人生の名誉だ」と述べて追悼しました。

各国メディア 一斉に速報 英BBCは通常放送から切り替え

イギリスの公共放送BBCは、エリザベス女王のこれまでの軌跡を写真や動画を交えて伝えるなど、通常の放送から切り替えて情報を伝え続けています。

また、ロンドン郊外のウィンザー城の上に虹が出ている様子も中継で伝えていました。
世界各国のメディアも、一斉に女王の死を速報で伝えています。

バッキンガム宮殿 多くの人が訪れ花束を手向ける

バッキンガム宮殿の前では、雨が降りしきる中にもかかわらず、多くの人が途絶えることなく訪れ、じっと宮殿の方を見つめたり、宮殿の門の前に花束を手向けたりしていました。

60代のイギリス人女性は「歴史の変わる瞬間を見届けようと来ました。本当に国に尽くした人でした。外国にルーツのある人もここには集まっています。イギリスは彼女のおかげで多文化の国となりました」と話していました。
60代のイギリス人男性は「新型コロナの間も女王は国を1つにし、新たな首相を見届けて亡くなりました。本当に長生きでした」と目に涙を浮かべて話していました。
20代のイギリス人女性は「とても悲しいです。彼女は皆のお手本でした。世界中がこの瞬間を見ていると思います。とても歴史的な瞬間です」と話していました。
花を手向けた30代のイギリス人男性は「彼女は象徴的な存在で、その影響力は国中に広がっていました。彼女のことばやふるまいが私は好きでした。すばらしい指導者でした」と話していました。

市民「受け入れがたい事実」

パリからロンドンに向かう高速鉄道「ユーロスター」の車内では、乗客が携帯電話でニュースを確認したり、女王の訃報について話し合ったりする様子が見られました。

60代のイギリス人の男性は「たった今、ニュースを知ったばかりで予期していたとはいえ、ショックです。イギリス人にとっては受け入れがたい事実ですが、首相も新しくなり、きっと1つにまとまると思います」と話していました。

また、イギリスを観光で訪れていた50代のアメリカ人の女性は「エリザベス女王はとても長い間女王でしたし、アメリカでも誰からも愛されていました。とてもショックです」と話していました。

国連安保理で黙とう

国連の安全保障理事会では8日、会合の冒頭、今月の議長を務めるフランスのドリビエール国連大使の呼びかけで、出席した各国の国連大使ら全員が立ち上がり、およそ1分間、黙とうをささげました。

国連 グテーレス事務総長「深く悲しんでいる」

国連のグテーレス事務総長はツイッターに「そのリーダーシップと献身から世界中から尊敬されていたエリザベス女王の逝去に深く悲しんでいる。彼女は国連のよき友であり、この数十年の変化の中、人々を元気づける存在だった。彼女の確固たる、生涯にわたる献身は長く人々の記憶に残るだろう」と投稿しました。

各国首脳が追悼

インド モディ首相 ツイッターに「温かさと優しさ 忘れない」

この中で、モディ首相は、女王と一緒に写った2枚の写真も投稿し、インド独立の父とされるマハトマ・ガンジーが女王の結婚の際に贈ったというハンカチを女王から見せてもらったというエピソードも紹介しています。

ウクライナ ゼレンスキー大統領「心から哀悼の意」

ウクライナのゼレンスキー大統領は「エリザベス女王の逝去の報に接し、深い悲しみの中にある。ウクライナ国民を代表してイギリス王室とイギリス国民、そしてイギリス連邦の加盟国の皆様に心から哀悼の意を表する」とツイッターに投稿しました。

カナダ トルドー首相 ビデオで声明「いなくなるのはさみしい」

この中で「カナダの歴史のほぼ半分となる70年間、女王としてカナダ国民に対し深く、変わらぬ愛情を注ぎ、強さと知恵をもって私たちのために力を尽くしてくれた」と述べ、感謝の気持ちを示しました。

そして「女王は思慮深く、賢く、好奇心旺盛で、親切で、おもしろく、そしてそれ以上のものを持っていた。複雑な世界において、女王の安定した優雅さと決意はわれわれに癒やしと強さを与えてくれた。世界で最も好きな人の1人で、いなくなるのはさみしい」と哀悼の意を示しました。

フランス マクロン大統領「心優しい女王」

フランスのマクロン大統領は、ツイッターに「エリザベス女王は70年にわたって、イギリス国家の継続性と団結を体現してきた。フランスの友人として、また、彼女の国とその時代に忘れられない印象を残した心優しい女王として私は記憶している」と投稿しました。

アメリカ バイデン大統領「イギリスの人々誇り与える存在」

アメリカのバイデン大統領は声明で「エリザベス女王は、君主であっただけでなく1つの時代を定義した。絶え間なく変化する世界において、何世代にもわたってイギリスの人々を安定させ、誇りを与える存在だった」としています。

そして「アメリカ中の人々の思いと祈りは、悲しみにくれるイギリスおよびイギリス連邦の人々とともにある。彼女のレガシーは、イギリスの歴史と世界の物語に深く刻まれるだろう」として追悼しました。

ドイツ ショルツ首相「模範で心の励み」

ドイツのショルツ首相は、8日、ツイッターに「ドイツ国民をはじめ、多くの人にとって模範で心の励みだった。第2次世界大戦後のドイツとイギリスの和解への貢献は忘れられることはない。彼女の死が悔やまれる」と投稿し、その功績をたたえ、女王の死を悼みました。

ロシア プーチン大統領がメッセージ

この中で、プーチン大統領は「女王陛下の名前は、イギリスの現代史の最も重要な出来事と切っても切れない関係にある。何十年にもわたり、人々から愛と尊敬を集め、世界の舞台でも尊敬されてきた。取り返しのつかない大きな損失に直面する中、勇気と不屈の精神を発揮されることを祈っている。イギリスの王室と国民にお悔やみを伝えたい」としています。

ブラジル ボルソナロ大統領「大きな衝撃と悲しみ」

ブラジルのボルソナロ大統領は8日、みずからのツイッターで「大きな衝撃と悲しみをもって受け止めている。彼女のリーダーシップと謙虚な姿勢、そして国を愛する心は、私たちブラジル人、そして世界の人々の心に永遠に刻まれるだろう」と述べました。

そのうえで、国として3日間、喪に服すことを宣言しました。

アメリカ 歴代大統領が相次いで哀悼の意

このうち、トランプ前大統領はソーシャルメディアへの投稿で「エリザベス女王による卓越した統治は、イギリスに、平和と発展というすばらしい遺産を残した。彼女のリーダーシップと外交はアメリカや世界の国々との同盟関係を、より深いものにした」と功績をたたえました。

また、オバマ元大統領は声明で「エリザベス女王は何十年もかけて、自身ならではの女王としての役割を確立した。寛大さと気品、そして絶え間ない勤勉さが表れた統治だった。彼女の世代における、女性への偏見に挑戦するものでもあった」とたたえ、その死を悼みました。

オーストラリア アルバニージー首相「慰め 希望 癒やしの源」

イギリス連邦の加盟国のオーストラリアでは、テレビ各局が特別番組で女王の死去を伝え、追悼ムードに包まれています。

アルバニージー首相はテレビ演説で「女王は試練や苦難の時、私たちとともにいてくれた。特に洪水や森林火災、戦争やパンデミックといった悲劇や災害に見舞われた時、オーストラリア国民の気持ちに寄り添ってくれた。女王のことば、女王の存在は多くの国民にとって慰め、希望、そして癒やしの源だった」と功績をたたえました。

そして「悲しみの時は過ぎ去るものだが、オーストラリア国民が常に抱いてきた女王への深い敬意と温かいまなざしは、決して色あせないだろう」と謝意を示しました。

また、イギリス連邦の加盟国、ニュージーランドのアーダーン首相も声明で「女王は愛され、称賛された君主であり、70年という記録的な在位期間は、私たちに対する献身の、絶対的な証だ。世界中の人々が大きな喪失感を抱いており、ニュージーランド国民も悲しみを共有している」と哀悼の意を示しました。