安倍元首相「国葬」費用 総額16億6000万円程度の概算公表 政府

安倍元総理大臣の「国葬」にかかる全体の費用の概算について、政府は、今年度予算の予備費から支出を決めているおよそ2億5000万円に、警備費や外国要人の接遇費など14億円余りを加え、総額で16億6000万円程度となる見通しを示しました。

これは、松野官房長官が、6日の記者会見で明らかにしました。

それによりますと「国葬」の実施には、政府が、会場設営費などとして、今年度予算の予備費からすでに支出を決めているおよそ2億5000万円に、警備や外国要人の接遇費などとして、14億円余りが追加される見込みだとしています。

追加となる費用の内訳は、
▼警備費が、各地からの警察官の派遣旅費や超過勤務手当などに合わせて8億円程度、
▼外国要人の接遇費が、車両の手配や空港の受け入れ体制の構築などに合わせて6億円程度、
▼自衛隊の儀じょう隊が使用する車両の借り上げなどに1000万円程度としています。

これにより「国葬」にかかる費用の総額は、16億6000万円程度となる見通しです。

一方、これまでのまとめでは、参列に訪れる海外の代表団は190以上で、特に接遇を要する首脳級などの代表団は50程度と見込まれるとしています。

安倍元総理大臣の「国葬」の費用について、政府は、全体の詳細は実施後に示すとしてきましたが、野党側が、国会の閉会中審査を前に、大枠を示すよう求めていました。

概算を公表した理由について、松野官房長官は、記者会見で「岸田総理大臣から丁寧に説明するよう指示を受けたうえでの判断だ。引き続き国民に理解してもらえるよう努めていく考えだ」と述べました。

警備・外国要人の接遇費用 内訳は

6日示された「国葬」にかかる費用の概算では、◇警備に8億円程度、◇外国要人の接遇に6億円程度と試算しています。

●警備費

このうち、警備費の内訳としては、▽道府県警察から警察官を派遣するための旅費や超過勤務手当に対する国からの補助として、合わせて5億円程度を見込んでいます。

国葬当日に限らず、その前後も含めたすべての期間の費用が含まれる一方、警察官の基本給にあたる部分は含んでいないということです。

また、▽警察官が待機するための建物の借り上げ費や▽警察官を待機所から警備活動を行う現場に輸送するバスなどの借り上げ費として、あわせて3億円程度かかるとしています。

●外国要人の接遇費

外国要人の接遇費の内訳としては、▽滞在中の車両の手配のほか、空港での受け入れ体制や連絡調整体制の構築、それに会談に必要な同時通訳の手配などに、合わせて5億円程度を見込んでいます。

また▽接遇にあたる在外公館の職員を一時帰国させるための旅費として、1億円程度かかるとしています。

●救護費

一方、救護体制を構築するため当日、会場に待機させる救急車の手配には新たな経費はかからないものの、医師や看護師の派遣が決まった段階で数十万円の経費が必要になるということです。

こうした費用はすでに支出を閣議決定している今年度予算の予備費から充てるとしています。

岸田首相「丁寧に見通し示す観点から数字を示した」

岸田総理大臣は、記者団に対し「『国葬儀』については、各国からさまざまな連絡が入ってくるなど、状況が少しずつ明らかになってきた。特に接遇を要する首脳級などの代表団の数が50程度になるなど、推定や仮定を置いたうえで、どのぐらいの数字になるのか試算を行い、できるだけ丁寧に見通しを示す観点から、その数字を今回示した」と述べました。

そのうえで「本当に確実な数字は『国葬儀』後に精査したうえでなければ示すことができないのは、従来申し上げたとおりだ。より丁寧な説明を行おうと努力しており、ぜひ理解してもらいたい」と述べました。
安倍元総理大臣の「国葬」にかかる費用の概算の積算根拠を示すよう野党側が求めたことを受けて、衆議院議院運営委員会の与野党の筆頭理事が、6日午後、改めて会談しました。

この中で、与党側は、政府が8億円程度としている警備費の根拠として、38億円余りだった3年前の天皇陛下の「即位の礼」に伴う関連の警備と比較した警察庁の資料を示しました。

そして、▽行事が一定期間続く「即位の礼」に対し、「国葬」が一日のみであることや、▽特に接遇を要する首脳級の代表団が、「即位の礼」ではおよそ200に上ったものの、今回は4分の1の50と仮定していることを説明しました。

これに対し、野党側の筆頭理事を務める立憲民主党の笠浩史氏は、持ち帰ったうえで、野党間で今後の対応を検討する考えを伝えました。

一方、与野党の筆頭理事は、7日議院運営委員会の理事会を開くことでは一致し、閉会中審査の日程や質疑時間などについて、詰めの調整を行うことになりました。

「国葬」流れ決定 菅前首相が追悼の辞

安倍元総理大臣の「国葬」の式次第にあたる流れが決まり、友人代表として、第2次安倍政権で一貫して官房長官を務めた菅前総理大臣が追悼の辞を述べることになりました。

9月27日に東京の日本武道館で行う安倍元総理大臣の「国葬」について、葬儀委員長を務める岸田総理大臣は、6日、式次第にあたる流れを決め、松野官房長官が記者会見で発表しました。

それによりますと「国葬」は、葬儀副委員長を務める松野官房長官による開式の辞に続いて、国歌の演奏や黙とうが行われたあと、安倍元総理大臣の生前の活動をまとめた映像を上映するとしています。

そして、岸田総理大臣のほか、衆・参両院の議長、最高裁判所長官の三権の長に加え、友人代表として、第2次安倍政権で一貫して官房長官を務めた菅前総理大臣が追悼の辞を述べることになっています。

さらに、天皇皇后両陛下と上皇ご夫妻の使いによる拝礼が行われたあと、参列者による献花などが行われることになっています。

菅前総理大臣が追悼の辞を述べる理由について、松野官房長官は、記者会見で「遺族の意向を聞き、長きにわたり総理大臣の職にある間、密接に仕事をともにした方が、友人を代表して追悼の辞を読むのにふさわしいと考えた」と述べました。

葉梨法相「法務省は弔旗 黙とう」

葉梨法務大臣は閣議のあとの記者会見で「法務省としては、葬儀委員長の決定に基づき、国葬の当日は弔旗を掲げること、一定の時刻に黙とうをささげることを考えている」と述べました。

そのうえで「もちろん職員全員に強制することではないが、ここの施設で職員にアナウンスをして弔意をささげるということだ」と述べました。

自民 茂木幹事長「丁寧に説明続けていくこと重要」

自民党の茂木幹事長は、記者会見で「一定の前提を置いたうえでの概算の見通しとして、政府からすでに概要の報告を受けた。国民に対して『国葬』の意義や内容、かかる費用について、丁寧に説明を続けていくことが重要だと考えている」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「その金額に尽きる 警備には万全を」

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「必要なものを精査したわけだから、その金額であるということに尽きるのではないか。各国から国のトップクラスが多数訪れるので、警備には万全を期してもらいたい」と述べました。

公明 山口代表「外国要人参列や警備でより費用かかる面も」

公明党の山口代表は、記者会見で「外国からの要人が多数、参列されると見込まれ、きちんと接遇するには。それなりの費用がかかる。また、安倍元総理大臣が銃撃で命を落としたこともあり、警備に対する手厚い対応が求められ、より費用がかかる面もある。国会での審議の機会があれば、岸田総理大臣から丁寧にわかりやすく説明を尽くしてもらいたい」と述べました。

また、友人代表として、菅前総理大臣が追悼の辞を述べることについて「長い間、官房長官として、安倍元総理大臣とともに活動し、政権を支える大事な役割を担ったことや、遺族の意向も踏まえてお願いすることになったと岸田総理大臣から連絡をいただいていた。判断を尊重したい」と述べました。

立民 泉代表「正当性あるのかしっかり吟味を」

立憲民主党の泉代表は、党の会合で「本当に実態をあらわしているのか、今は全くその確証はなく、今後も経費が増える可能性がある。政府が出した金額に正当性があるのかについて、しっかり吟味していかなければならない」と述べました。

立民 岡田幹事長「納得のいく説明にはなっていない」

立憲民主党の岡田幹事長は、記者会見で「急に必要な金額が跳ね上がった。これで終わりかどうかもわからず、もっと多いのではないかという説もあり、納得のいく説明にはなっていない」と述べました。

立民 安住国対委員長「国民に対し不誠実な対応で残念」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、記者団に対し「最初からよく調べたうえで出してくればよいのに小出しにしていて『国葬』に反対が強いからできるだけ税金はかからないように小さく見せかけようという、こそくなやり方に見えてしかたない。国民に対して不誠実な対応で残念だ。政府はもっと堂々とやってほしい」と述べました。

そのうえで「野党が連携した結果、政府が当初支出を決めた費用の6.6倍に跳ね上がったが、これで『ファイナルアンサー』だとは思っていないので、国会の閉会中審査までにもう少し踏み込んだ額を出すよう野党全体で要求していく」と述べました。

維新 吉村共同代表「小出しにする理由が全くわからない」

日本維新の会の吉村共同代表は、大阪市内で記者団に対し、「国葬の費用がどのくらいかかるかは、きちんとオープンにすべきで、もっと早く示すべきだったし、小出しにする理由が全くわからない。海外からも要人をお呼びするので、警備費が一定程度かかるのは当然で、金額やその中身が妥当かどうかについては、国会で議論されると思う」と述べました。

国民 玉木代表「政府の説明 後手後手」

国民民主党の玉木代表は記者会見で「経費の全体像が示されたことは評価するが、なぜもっと早く出せなかったのか。不信感を招いているし、世論調査で『国葬』に反対の人が増えている原因の1つなっている。政府の説明が後手後手になっていることは遺憾だ」と批判しました。

そのうえで、岸田総理大臣に対し、国民が納得できる丁寧な説明を求めていく考えを示しました。

また、みずからの「国葬」への対応について「国内外から弔意が多数示されており、『国葬』を行うことは理解する」と述べ、招待があった場合は出席する意向を示しました。

社民 福島党首「法的根拠がない」国葬出席せず

安倍元総理大臣の「国葬」について、社民党の福島党首は「法的根拠がない」などとして、出席しない考えを示しました。

安倍元総理大臣の「国葬」をめぐり、社民党の福島党首は記者会見で「『国葬』に反対で、最大の理由は法的根拠がないことだ。『法の下の平等』や思想・良心の自由を侵害する可能性がある」と指摘しました。

そのうえで「国民の半数以上が反対し、法的根拠がないなかで、出席することはできない」と述べ「国葬」に出席しない考えを示しました。

また「国葬」にかかる全体の費用の概算を政府が示したことについて、福島氏は「本当にこれで済むのか。初めは低く見積もり、終わったら実は多額だったとか、多額だったことを隠すということも起こりうるのではないか」と述べました。

専門家「丁寧に説明 正しく検証を」

財政学が専門の、一橋大学の佐藤主光教授は「前例が少ないので、16億5000万円の妥当性そのものをはかるのは難しい面もあるが、費用対効果を考えたときに何のための国葬なのか趣旨がよく分からないと16億5000万円使うと言われても、国民としては何だろうと言うことになる。故人をしのぶ方法としては合同葬や国民葬などがある中で国葬によって何が達成できるのかと言うことを丁寧に説明する必要がある」と指摘しています。

そのうえで「金額が変わってくるなら逐次国民に示し、国葬が終わったところで、経費の詳細を開示するのは当然だが、どんな趣旨に基づいて使われたかや、外交上の成果があればそれを説明していくことが問われる。そして今回の決め方も含め、さまざまな課題が浮き彫りになるのであれば、それは今後のために正しく検証していくことが必要になる」と話しています。