夏休み明け 不安定になりやすい子どもとどう向き合うか

夏休みが明けて学校が再開する時期は、子どもの自殺や悩み相談の件数が増える傾向があり、不登校の子どもの支援に取り組む東京 文京区のNPOの代表は「『学校に行きたくない』と子どもが伝えてきた場合は理由を聞くのではなく、まずはその気持ちを受け止めることが大切だ」と話しています。

東京 文京区で不登校の子どもや保護者に向けて発行している新聞の編集長を務める石井志昂さんはみずからも中学2年生のときに不登校になりました。

夏休みが終わる直前の時期は「学校に行かなければ人生が絶たれてしまうという絶望感を感じていた」とみずからの経験を振り返りました。

これまで、多くの子どもたちから相談を受けてきましたが、この時期について「学校でつらい思いをしてきた子どもにとっては、苦痛以上の恐怖感が芽生え、追い詰められる時期だ」と話し、保護者は子どもの様子に変わりがないかしっかり見てほしいとしています。

“異変”のサインは

子どもの異変に気付くサインについて石井さんは
▽体調不良を訴える
▽いつもより泣きやすい、甘えてくるなど情緒が不安定になる
▽それに食欲がなくなることをあげています。

また、夏休みのこの時期には宿題が手につかない夜更かしをしているといったケースもよくみられますが、そのなかには不安で宿題が手に付かなかったり眠ろうとしているのに眠れないといった異変が潜んでいる可能性もあるということです。

こうしたケースではしつけとして注意しがちで異変に気付く難しさもありますが、注意深く様子を見てほしいとしています。

サインがみられたら

もし、異変が感じられた場合や「学校に行きたくない」と子どもが伝えてきた場合は理由を聞いたり、励ますのではなく、まずはその気持ちを受け止めることが大切だとしています。

石井さんは「この時期、子どもがSOSを出していても保護者のひと言が子どもを追い詰めることもある。まずは受け入れ、そして『あなたの命が大切で、いつでも味方でいる』という保護者の思いを子どもの目を見てきちんと伝えることが大切です」と話していました。

石井さんは苦しい思いをしている子どもたちに対して「信じてもらいたいことは学校に行かなくても幸せになっている人がいるということです。あなたは大事なひとりです」とメッセージを送っていました。

長期の休み明けの時期には児童・生徒の自殺が増える傾向

厚生労働省のまとめによりますと平成29年から去年までの5年間の合計では9月が205人、8月が204人と他の月に比べて多くなっています。

また、子どもの相談に電話などで応じる「チャイルドライン」を運営するNPOによりますと8月や9月など大型の休みが終わる前後は相談件数が増える傾向にあるということです。

相談の内容は「学校が嫌で宿題が手につかない」とか「いじめられていて学校に行きたくない」といったもののほか、新型コロナの感染拡大以降は「学校で友達ができない。ひとりで過ごすのがつらい」といった相談も寄せられているということです。

文科相がメッセージ “積極的に周囲に相談を”

子どもの精神状態が不安定になりやすい夏休み明けを前に、永岡文部科学大臣は、悩みや不安を抱える児童や学生に対し、積極的に周囲に相談するよう呼びかけるメッセージを出しました。

メッセージは、文部科学省のホームページやSNSに、小学生と中高生、それに学生など3つの年代ごとに掲載されています。

このうち小学生に向けたメッセージでは「夏休みが終わり、もしかすると、いつもの生活や学校生活に困ったことや嫌なことがある人、学校が始まることが不安な人もいるかもしれません。だれにでも不安やなやみはあるものです。一人でかかえこまず、だれでもよいのでなやみを話してみませんか」と呼びかけています。

そのうえで、周囲に相談しづらい場合には電話やメール、インターネットで相談できる窓口もあるとして、それぞれのサイトを紹介しています。

内閣府などによりますと、夏休み明けには子どもの精神状態が不安定になりやすく、自殺のリスクも高まるということです。

悩みや不安を感じたら 電話やチャットで相談できる窓口の連絡先

不登校にまつわる悩みなどについて保護者が相談できる窓口もあります。
▼「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」
メールアドレス:info@futoko-net.org