史上最年少 9歳4か月で囲碁のプロ棋士に 大阪の藤田怜央さん

大阪市の小学3年生、藤田怜央さんが、来月、史上最年少の9歳4か月で囲碁のプロ棋士になることが決まり、17日開かれた会見で「頑張ります」と意気込みを語りました。

大阪市の小学3年生、藤田怜央さんは、関西棋院の「英才特別採用規定」に基づいて、9月1日からプロ棋士になることが正式に決まりました。

17日、会見に出席した藤田さんは、緊張した様子で「頑張ります」と意気込みを語り、今の気持ちを聞かれると「わくわくしています」と答えました。
関西棋院によりますと、藤田さんは4歳で囲碁を始め、小学1年生で日本棋院の関西総本部の院生となって腕を磨いてきました。

そして、関西棋院が今年度から始めた「英才特別採用試験」に申し込み、プロ棋士との対局などを経て、今月5日、初段になることが認められ、プロ入りが決まったということです。

関西棋院によりますと、藤田さんは9月1日のプロ入り時点では9歳4か月で、3年前、10歳0か月でプロ入りした仲邑菫二段の国内最年少記録を更新し、中国や韓国、それに台湾のプロ棋士の中でも最年少でのプロ入りになるということです。

会見で目標を聞かれた藤田さんは「世界一」と答えていました。
会見に同席した父の陽彦さんは「お笑いや電車が好きで元気に騒ぐ普通の小学3年生です。プロ入りできたことはすごくうれしいです。これからは不安が大きいですが、今までも乗り越えてきているので、信じて見守ろうと思います」と話していました。

「英才特別採用規定」の採用試験 第1号の合格者

史上最年少でプロ棋士になることが決まった藤田怜央さんは、大阪市に住む小学3年生です。

藤田さんは4歳で囲碁を始め、その10か月後にはアマチュア初段の実力を身につけていたということで、小学校入学前だった2019年には小学生の全国大会で、低学年の部の大阪府代表を決める予選で優勝しました。
このときは幼稚園児だったため全国大会には出場できませんでしたが、別の大会でも次々に好成績をおさめました。

小学1年生になると日本棋院の関西総本部でプロ候補生の子どもたちが集まる「院生」に採用され、ほかの院生と競い合って実力を磨いてきました。

そして、関西棋院が将来性のある若い人材を見いだすため今年度から新たに設けた「英才特別採用規定」の採用試験に応募し、プロ棋士による対局の審査などを経て、今月5日、第1号の合格者となりました。

正式にプロ入りとなるのは9月1日で、藤田さんはこの時点で9歳4か月となります。

これまでの国内のプロ入り最年少記録だった仲邑菫二段の10歳0か月を、3年ぶりに更新することになり、男性棋士としては、1968年に11歳9か月でプロ入りした趙治勲名誉名人(66)以来、54年ぶりの最年少記録の更新となります。

採用試験で対局 瀬戸大樹八段「大人っぽい碁を打つ」

採用試験の対局で相手を務めた瀬戸大樹八段は会見で「大人っぽい碁を打つなと思いました。落ち着いてバランスの取れた碁で、プロと打っているような感覚でした。厳しいプロの世界ですぐに結果を求めるのは難しいと思いますが、9歳でこれだけ打てるのは今まで見たことのない才能の持ち主だと感じます。真剣勝負の場を早く経験してもらい、世界で戦える棋士になってほしい」と話していました。

師匠の星川拓海五段「相手の石を破壊する力が持ち味」

17日の会見には藤田怜央さんの師匠、星川拓海五段も出席し、藤田さんについて「相手の石を破壊する力が彼の一番の持ち味です。プロの世界で経験を積んで成長してもらえたらと思います。周りの期待も大きいですが、世界一になるのが彼の使命でもありますし、宿命でもあるかと思っています」と期待を語りました。

また、関西棋院の滝口政季常務理事は「AIによる囲碁の進化が著しく、強くなる子どもたちにいち早く公式戦に参加してもらうことで、持っている才能を伸ばしたい。将棋の藤井聡太さんのようなスターの登場を待ち望んでいるところがあり、その可能性を秘めているのが藤田怜央さんだと考えている」と話していました。

井山裕太四冠「力を蓄え 思う存分チャレンジ」

史上最年少での囲碁のプロ棋士が誕生することに、先輩の棋士たちからは期待の声が寄せられています。

このうち日本を代表する棋士で、2018年に国民栄誉賞を受賞した井山裕太四冠(33)は「プロとしてのスタートラインに立ち、これからいろいろな壁が待ち受けている事と思います。力を蓄え、思う存分チャレンジしていかれる事を願っております」とコメントしました。

また、3年前、当時史上最年少の10歳0か月でプロ棋士になった仲邑菫二段(13)は「びっくりしました!対局できるのを楽しみにしています!」とコメントしています。

囲碁を習った大阪の教室「成長のスピード速くて驚いた」

藤田怜央さんは4歳のときに大阪市の囲碁教室で囲碁を習い始めました。

教室で講師を務める林達也さんは、はじめて囲碁を教えた際の印象について「4年前に、お母さんが来て『囲碁をやりたい』というので、お母さんがやるのかと思ったら、後ろからぴょこっと飛び出してきたのが怜央くんでした。最初は全く囲碁を知らない状態でしたが、石をどこに置くのかを教えると目がきらりと光りだしました。それからは、休憩するかと聞いても首を振って、こちらが疲れて降参するまで付き合わされました」と振り返りました。
その後、藤田さんは毎日のように林さんが運営する囲碁教室を兼ねた碁会所に通い、一日じゅう、囲碁を打ち続けていたということです。

林さんは「教室で教えると、次に来たときには教えていないことをどんどんやってきました。成長のスピードが速くて驚きました。不思議に思って家族に聞くと、家でも起きてから寝るまで囲碁の動画を見るなど、ずっと囲碁のことをやっているということでした。単純なことですが、囲碁がとても好きなんだと思います」と話していました。
林さんは、藤田さんの囲碁について「早碁でよく対戦しますが、どちらが遊ばれているか分からないぐらい、はやさが違います。そういう碁になったら力を発揮できるんじゃないかと思います。プロの世界で結果はいろいろあると思いますが、囲碁を大好きなままでいてくれたら本望だと思っています」と話していました。