被爆77年「広島原爆の日」核兵器のない世界の実現へ祈り続く

広島に原爆が投下されて、8月6日で77年となりました。

ロシアの軍事侵攻により、核の脅威に対する危機感が広がるなか、被爆地・広島では、犠牲者を追悼し、核兵器のない世界の実現を国内外に訴える1日が続いています。

広島市の平和公園で行われた平和記念式典には、被爆者や遺族の代表をはじめ、岸田総理大臣のほか、99の国の代表が参列しました。

ことしは、3年ぶりに一般の参列者席が設けられ、新型コロナウイルスの影響で規模を大幅に縮小した去年とおととしの3倍以上となる2854人が参列しました。
式典では、この1年に亡くなった人や死亡が確認された人、合わせて4978人の名前が書き加えられた33万3907人の原爆死没者名簿が原爆慰霊碑に納められました。
そして、原爆が投下された午前8時15分に参列者全員で黙とうをささげました。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻と核による威嚇を受けて、世界各地では軍備を増強する動きが広がっています。

広島 松井市長 “為政者は核兵器使用の結末を直視すべき”

広島市の松井市長は、平和宣言で「世界中で、核兵器による抑止力なくして平和は維持できないという考えが勢いを増している」と指摘しました。

そして、核保有国の為政者に対し、被爆地を訪れ、核兵器を使用した際の結末を直視すべきだとして、「国民の生命と財産を守るためには、核兵器を無くすこと以外に根本的な解決策は見いだせないことを確信していただきたい」と述べました。

(松井市長の【平和宣言全文】は文末にリンクを掲載しています)

岸田首相「核兵器のない世界への道のり歩んでいく」

また、岸田総理大臣は、「いかに細く、険しく、難しかろうとも『核兵器のない世界』への道のりを歩んでいく。非核三原則を堅持しつつ、『厳しい安全保障環境』という『現実』を『核兵器のない世界』という『理想』に結び付ける努力を行っていく」と述べました。

国連 グテーレス事務総長「世界は決して忘れてはならない」

そして、国連のグテーレス事務総長が「世界は広島で起きたことを決して忘れてはならない。被爆者が残した遺産は決して消滅しない」と述べ、国際社会に対して核廃絶に向けた取り組みを改めて呼びかけました。

被爆者の女性「最期まであの日のことを伝えないといけない」

式典に参列した被爆者の女性は「当時のことを伝え続けないと、いつ平和がなくなるか分かりません。私は95歳で死との闘いですが、最期まであの日のことを伝えないといけない」と話していました。

娘と孫と3世代で祈り 76歳女性「平和の大切さを孫に伝えたい」

両親が被爆したという広島市安佐南区の76歳の女性は、娘と孫とともに、午前8時15分、原爆ドームに向かって手を合わせ祈りをささげていました。

女性は「毎日、午前8時15分に祈りをささげています。ことしは式典に参加できませんでしたが亡くなった人をしのぶため、会場の近くまで来ました。当たり前に平和な生活ができることの大切さを孫に伝えていきたいです」と話していました。

娘の48歳の女性は「8月6日に広島で亡くなった人は、やりたいことができなくて亡くなったと思います。その人たちの思いを伝えていきたいです」と話していました。

また、15歳の中学生の孫は「戦争で悲しむ人がいるのに、世界では、まだ戦争が起きていて、悲しいです。同じことを繰り返さないためにも、伝えつづけていきたいです」と話していました。

南アフリカ出身の留学生「戦争に決して勝者はいない」

南アフリカ出身で徳島県に留学している24歳の大学院生は、
「被爆者が経験した実際の話を聞いて非常に心に響きました。戦争に決して勝者はいないし、戦争は解決手段にはなりません。それぞれの違いを受け入れて理解し合うことが大切だと感じました」と話していました。

ウクライナ出身女性「子どもたちの未来を心配」

ウクライナ出身で、広島市南区に住む平石エレナさんは、原爆が投下された午前8時15分、家族とともに原爆ドームに向かって手を合わせ祈りをささげていました。

平石さんは、ウクライナへの支援金を募るチャリティーコンサートを企画するなどの活動をしています。

平石さんは、「世界が平和であるように、また、原爆で亡くなった人に静かに眠ってほしいと祈りました。広島の人たちは、ウクライナへの支援活動にも積極的に協力してくれました。広島で起こったようなことがウクライナで起こってほしくない。子どもたちの未来を心配しています」と話していました。
被爆者の平均年齢は、ことし84歳を超え、みずからの体験を語ることのできる被爆者が少なくなるなか、平和公園では若い世代が紙芝居の読み聞かせをしたり、外国人に英語で平和のメッセージを伝えたりしていました。

被爆地・広島は、犠牲者を追悼し、「核兵器によってもたらされる悲劇」や「核なき世界の実現を願う被爆者の声」を国内外に発信する1日が続いています。

平和記念式典 警備態勢を強化

広島市と広島県警察本部は、先月、安倍元総理大臣が奈良市で銃撃されて死亡した事件を受けて、ことしの平和記念式典に配置する市の職員や警察官を増員して警備態勢を強化しています。

このうち平和公園の入り口では、これまでは手荷物検査だけを行っていましたが、市は今回、初めて金属探知機を導入し、警備員が参列に訪れた人の手荷物やポケットの中に刃物など危険なものが入っていないかどうかを入念に確認していました。

また、警察は平和公園で要人が通る場所などを中心に警察官を例年よりも多く配置しています。
配置された警察官は、式典が行われる平和公園や周辺の道路を複数人で繰り返し巡回していました。

金属探知機による検査を受けた、式典に参列する広島県廿日市市の中学3年生の男子生徒は「10秒くらいかけて荷物や服を調べていました。銃撃事件もあったので、警備が厳重になることは理解できるし安心だと思います」と話していました。