【詳細】KDDI 通信障害で社長が会見 「3589万人に200円返金」

今月初めに発生した大規模な通信障害についてKDDIは29日、高橋誠社長が記者会見し、携帯電話などの利用者3589万人に対し「おわび」として、200円を返金すると発表しました。

記者会見の冒頭で高橋社長は「全国のお客様に多大なご不便とご迷惑をおかけしましたことを、深くおわび申し上げます」と陳謝しました。

そのうえで、携帯電話やスマートフォンなどを契約していた利用者3589万人に対し「おわび」として、200円を返金することを明らかにしました。

このうち、すべての通信サービスを24時間以上連続して利用できなくなった271万人に対しては、約款に基づく返金も行うとしています。

このほか、子会社の沖縄セルラー電話の利用者に対しては、66万人に「おわび」として200円を、7万人には約款に基づいて返金するとしています。

2社を合わせた返金の総額は75億円に上るということです。

一方、経営責任について、高橋社長は会見でみずからの報酬について、3か月間、20%を自主的に返上すると明らかにしました。

このほか、関連役員2人について3か月間、10%、別の関連役員6人について、1か月間、10%をそれぞれ自主的に返上するとしています。

再発防止策については、今回の障害の原因となった設備へのアクセスの急増をいち早く検知するシステムを開発するとともにこうした事態が発生した場合の復旧の手順を見直すことなどで、影響が大きくなることを防ぎたいとしています。

さらに高橋社長は、通信障害が起きた場合にほかの会社のネットワークを利用できる「ローミング」の導入について「積極的に実現したいと思っている」と述べ、ほかの携帯大手や総務省などと議論をしながら、実現を目指す考えを示しました。

「おわび」の詳細は

KDDIは、今月初めに起きた通信障害の期間中に、auとUQモバイルのスマートフォンや携帯電話のサービス、それに「ホームプラス電話」のサービスを契約していたすべての利用者3589万人に対して「おわび」として、サービスの請求額から一律200円を減額することで返金するとしています。

一方で、オンライン専用プランの「povo」の利用者については返金ではなく、データ通信で、1ギガバイトを3日間使えるようにするとしています。

KDDIは来月中旬以降に対象となる利用者に連絡したうえで、9月以降に返金の対応を実施する予定です。

おわびの返金額 なぜ200円?

高橋社長は会見で、おわびの返金額を200円とした理由について、約款に基づく返金の額を、一日当たり52円と計算したと説明したうえで、音声通話やデータ通信が61時間以上利用しづらかったことを、影響が3日間に及んだとみなして、当初は、3日分に相当する156円の返金を検討したということです。

そのうえで高橋社長は「おわびの意味を込めて200円とした」と述べました。

高橋社長 「客の信頼失った」

高橋社長は、大規模な通信障害を受けた契約面への影響について、足元では解約した利用者の数はそれほど大きくないものの、新規の契約には影響が出ているという認識を示しました。

そのうえで「長時間の障害を起こしてしまい、お客様の信頼はやはり失ったと思う。信頼を回復するのには時間がかかると思うが、まず再発防止をしっかりやって長年おつきあいいただいているお客様の信頼を地道に回復することを優先したい」と述べました。

大規模な通信障害 全国で延べ3091万人以上が影響

大規模な通信障害は今月2日の午前1時35分ごろに発生しました。

auのほか、同じ回線を使っているUQモバイルとpovoの通話やデータ通信が全国で、つながりにくい状況になりました。

auの回線を利用している、気温や降水量などを観測するアメダスや貨物列車の運行など暮らしの広い範囲に影響が及んだほか、楽天モバイルでも、auの回線を利用している一部の地域で通話やデータ通信がつながりにくくなりました。

障害が起きたきっかけは、通信設備のメンテナンスで行った、ルーターと呼ばれる機器の交換でした。

作業中に不具合が起きたため元の機器に接続を戻したところ、設備の一部にアクセスが集中しました。

そして、ネットワークへの負荷を抑えるために通信量を制限したことで、スマートフォンなどでの通話や通信がつながりにくくなりました。

KDDIは復旧作業を進め、翌3日に作業は完了しましたが、その後も一部の設備でアクセスが多い状態が解消せず、要因を特定して通信障害が解消したのは、発生から61時間余りたった4日の午後3時。

その後、ネットワークの確認を行い、最終的に全面的な復旧が確認されたのは、発生から86時間がたった5日の午後3時半すぎになりました。

会社では、今回の通信障害は電気通信事業法が定める「重大な事故」に該当するとして、28日、総務省に報告書を提出しました。

報告書では、音声通話やデータ通信が61時間以上、利用しづらくなり、影響を受けた人の数は、全国で延べ3091万人以上に上ったとしています。

利用者への周知に課題も

今回の大規模な通信障害では利用者への周知が十分ではなかったという指摘が出ています。

今月2日未明に発生した通信障害の影響は全国に広がりましたが、会社が復旧の目標を公表したのは、発生から1日近くたった翌3日の午前1時でした。

その間、情報提供は、会社のホームページやツイッターに限られていました。

さらに当初、目標としていた時間を過ぎても復旧に向けた作業が終わらなかったうえ、作業の完了後も実際には利用しづらい状況が続いて混乱を招きました。

最終的に全面的な復旧を公表できたのは、発生からおよそ86時間後、5日の午後4時すぎでした。

こうした対応には批判も相次ぎ、金子総務大臣は今月5日の会見で「利用者への周知の内容、手段、頻度いずれについても、利用者の不安を解消するために工夫する余地があったのではないか」と述べ、改善の必要があるという認識を示していました。

通信障害の影響が長時間にわたる中で、発信した情報の内容が利用者の関心に応える丁寧な説明だったかどうかや、幅広い利用者に十分、伝わっていたのか、課題を残す形となりました。

高橋社長「利用者への周知 大きく見直す」

利用者への周知について高橋社長は「利用者には大きな迷惑をかけてしまい、情報発信の在り方は大きく見直さないといけない」と述べました。

そのうえで、今後は携帯電話の販売店で電子看板などを活用したり、自社メディアのサイトや社外のメディアと連携して情報を発信したりして、さまざまな媒体を活用していきたいと説明しました。

また、今回の障害では復旧作業が終了したと発表したあとも1日近く通話がつながりにくい状況が続きました。

これについて、高橋社長は復旧作業が終わったあともネットワークの安全性を確認する必要があると説明していたが、利用者には作業終了の時間だけが伝わってしまったとしたうえで「『復旧』という言葉の定義を明確にして伝えることが大事だと考えている。関係するほかの事業者とも議論したうえで、対応していきたい」と述べました。

大規模通信障害 過去にも発生

携帯電話をめぐっては、過去にもたびたび大規模な通信障害が発生しています。

携帯電話会社の通信障害は電気通信事業法に基づき、110番や119番などの緊急通報が可能な携帯電話のサービスに影響が出ている場合などは「重大な事故」に当たり、総務省への報告を義務づけています。

こうした「重大な事故」のうち、去年10月にNTTドコモで起きた大規模な通信障害では、利用者が最も多い4Gなどで、およそ半日にわたって影響が続いたほか、「ガラケー」と呼ばれる携帯電話に使われる3Gの通信では完全に回復するまで、29時間かかりました。

この時は、通話やデータ通信が利用しづらくなるなどの影響が延べ1290万人に及び、総務省は再発防止などを指示する行政指導を行いました。

また、2018年12月のソフトバンクの通信障害では、4時間半にわたっておよそ3060万人が通話とデータ通信を利用できなくなりました。

総務省は、ソフトバンクがこの年に、合わせて3回、通信障害を発生させたことを重くみて、再発防止の徹底を求める行政指導を行いました。

一方、KDDIでも、2013年4月から5月にかけ延べ190万の利用者が影響を受けた通信障害が起きています。