“ライフセーバー不足” 3年ぶりに開く海水浴場 安全どう守る?

この夏は3年ぶりに開く海水浴場が多いと見込まれていますが、ライフセーバーなど監視や救助に当たる人員の不足が懸念されています。コロナ禍で資格を取得するための講習会が開かれなかったことなどが要因で、各地の海水浴場では対応に追われています。

海上保安庁によりますと、この夏に開設を予定している海水浴場は先月30日時点で全国1028か所のうちおよそ8割に当たる829か所に上っています。

海水浴場は自治体の条例や海上保安庁からの指導に基づき、安全対策のために監視や救助に当たる人を配置するなどしています。報酬を支払う場合もあればボランティアで活動してもらうケースもあります。

こうした人たちは海での救助にあたる「ライフセーバー」の資格や、救命措置を行える「BLS」という資格を取得していることが基本で、取得後も2年や3年ごとに更新することが必要です。

日本ライフセービング協会によりますと、去年こうした資格を新たに取得したり更新したりした人は延べ4346人で、感染拡大前の3年前の6380人の68%にとどまりました。

協会によりますと、新型コロナウイルスの影響で
▽資格取得のための講習会が実施できなかったことや
▽大学がリモート講義となり、従来のような部活などの単位での協力が得られにくくなったことが要因だということです。

このため協会によりますと、全国的にライフセーバーなどの不足が確認されているということで、各地の海水浴場では資格を持つ社会人に仕事を休んで活動してもらうなど対応に追われています。

日本ライフセービング協会の事務局の佐藤洋二郎さんは「ライフセーバーなどがいない場所で万が一事故が起こると、通報もできずに重大事故につながる可能性が非常に高い。海で遊ぶ時には海水浴場が開設され、かつライフセーバーなどがいるところで楽しんでほしい」と話しています。

そのうえで今後の対策として「小中学生などもっと小さい頃からライフセーバーの人材育成をするなどこれまでと違う切り口で人材確保をしていく必要がある」と話しています。

監視体制が不十分の海水浴場 事故のリスク高い

監視体制が十分でない海水浴場では事故が起きるリスクが高まります。

海上保安庁によりますと、監視体制が取られている海水浴場以外の場所で泳いでいて事故にあう人は毎年100人前後にのぼっています。

▽2018年は101人
▽2019年は97人
▽おととしは98人
▽去年は95人でした。

このうち死亡したり、行方不明になったりしたのは
▽2018年は49人
▽2019年は53人
▽2020年は59人
▽2021年は50人でした。

▽海水浴場ではあるものの海開き前などの監視体制がとれていない時期に起きた事故や
▽海水浴場として開設されている場所以外の海岸や岩場で起きた事故などが含まれています。

“ライフセーバー不足”の現場は

神奈川県平塚市の海水浴場では地元のライフセーバーの団体が監視を担当していて
▽全体を見渡す担当や
▽歩きながら危険を察知して声をかける担当など
適切に配置を行い、交代で休憩も取らせるためには一日10人前後のライフセーバーが必要だということです。

新型コロナウイルスの感染拡大前にはおよそ70人のライフセーバーで期間中のシフトを回していましたが、今シーズンは活動するライフセーバーが10人ほど減ったということです。

このため
▽社会人に有休をとってボランティアで活動してもらったり
▽1人当たりの活動日数を例年より増やしたりして
何とかやりくりしているということです。

ライフセーバーについて小学5年生の女の子は「海に入ろうとした時あっちは危ないと教えてくれた。いてくれた方が安心感がある」と話していました。

また40代の女性は「何年か前はライフセーバーはすごくブームだった記憶があるので足りていないとは知りませんでした。親はついているが何かあったら頼れる方がいるというのはすごく安心します」と話していました。

湘南ひらつかライフセービングクラブの奈良部真弓さんは「たくさんの方が海に遊びに来られるところで、悲しい思いやつらい思いをさせないようにするにはライフセーバーの数をある程度、海水浴場を開催するからには確保できた方がいい。やってみようかなとかちょっとでも興味があればチャレンジしてほしい」と話しています。

町の広報誌や求人誌で募集 高校生から応募も

神奈川県葉山町の海水浴場では、新型コロナウイルスの感染拡大前はライフセーバーおよそ100人のうち20人ほどが大学生でした。

海水浴場が開いている期間は大学生は夏休み中で、平日、休日にかかわらず活動できるため貴重な人材でしたが、この大学生のうち今シーズンも活動しているのは1人のみだということです。

これまでは大学の部活やサークル単位での協力が得られていて、新入生を勧誘するなどして毎年一定の人数が維持されていましたが、コロナ禍で部活などが中止され協力を得ることが難しくなったということです。

このため町の広報誌や求人誌で募集を行ったり、今のメンバーが知人に声をかけたりした結果、地元の高校生13人から応募があったということです。

ライフセーバーの資格は15歳以上から取得でき、高校生たちは技能指導を受けながら資格を持っているメンバーと一緒に活動をしているということです。

高校2年生の萩原善太さん(17)は「自分の好きな海を見ながら事故を防ぎたいなと思って手伝うことにしました。いざとなった時に人を助けるというのはとても大変だなと毎日実感しながらやっています」と話しています。

また葉山ライフセービングクラブの加藤智美理事長は「かつて求人を出したことは全くなかった。人の命と向き合ったり大人に注意をしないといけないので高校生でできるのだろうかとだいぶ心配だったが、自信持ってやってくれているので安心して見守っている」と話していました。