漫画海賊版サイト 漫画BANK 中国の元運営者に現地当局が罰金

最大規模の漫画海賊版サイト「漫画BANK」を運営したとして、中国 重慶市の30代の男性に対し、日本の出版社からの情報提供を受けた現地の行政当局が罰金60万円を命じたことが、出版社などへの取材でわかりました。海外に拠点を置く日本向けの海賊版サイトが増える中、現地当局による摘発は、これが初めてとみられます。

「漫画BANK」は、2年間のアクセス数が10億近くにのぼった日本で閲覧可能な最大規模の漫画海賊版サイトで、去年11月、集英社など大手出版4社が法的手続きに乗り出したあと閉鎖されていました。

出版社側がグーグルの情報提供などをもとに運営者の特定を進めた結果、中国 重慶市の30代の男性が関与し、漫画BANKの閉鎖のあとも、別の海賊版サイトを開設した疑いがあることがわかったということです。

出版社側が重慶市の行政当局に対し、状況を説明して処罰を求めたところ、事情聴取やパソコンの押収などが行われ、出版社によりますと、行政当局は6月15日に、著作物を無断でネット上に公開することなどを禁じる現地の条例に違反したとして、元運営者に罰金3万元、日本円でおよそ60万円を納めるよう命じるとともに犯罪収益として1万6000元余り、およそ33万円を没収したということです

NHKが現地で取材したところ、元運営者は「処分を受け入れる。もう再開するつもりはない」と話していました。

日本向けの海賊版サイトは、追跡の難しい海外に拠点を置くケースが増えていますが、被害者が日本の作者や法人であるため、海外の当局の動きは鈍く、出版社によりますと、現地での摘発はこれが初めてとみられます。
集英社編集総務部の伊東敦部長代理は「中国当局が深刻さを受け止め、処罰したことは画期的だ。海賊版対策をどうスピードアップするかが今後の課題だ」と話しています。

“タダ読み” コミックス販売価格で2082億円にも

「漫画BANK」は、出版社から「最大の敵」とも呼ばれ、アクセス数に応じて多額の広告費を受け取ったとみられますが、資金の流れは判明しないままとなっています。

「漫画BANK」はグーグルの検索エンジンを利用した海賊版サイトで、3年前までに作られました。

当時は、社会問題となった海賊版サイト「漫画村」の運営者が逮捕され、サイトが閉鎖された時期で、漫画村に代わる存在としてSNSなどで口コミが急速に拡大し、多額の広告収入を得たとみられています。
「タダ読み」された金額は、コミックスの販売価格に換算すると2082億円と試算され、集英社など大手出版4社は、漫画BANKを「最大の敵」とも呼んで警戒し、当初、グーグルに対する削除要請などを行ってきました。

しかし、対応が進まなかったため法的な手続きを重ねて、摘発につなげる方針に転換し、アメリカの裁判所に対して運営者の氏名や住所などの情報開示をグーグルなどに命じるよう申し立てたうえで、中国の行政当局に処罰を求めていました。

今回科された罰金の額は、被害額に比べて小さく、サイトの運営で得られた資金の流れもわからないままとなっています。

出版社側は、ほかに関与した人物がいないか、さらに調査を進めるとともに、元運営者に対し、損害賠償を求めて裁判を起こすことも検討しています。

去年の“タダ読み” 上位10のサイト総額1兆19億円

出版社などで作る一般社団法人「ABJ」は、海賊版サイトによって「タダ読み」された額を、コミックスの販売価格に換算して試算しています。

それによりますと、去年1年間では、アクセス数の多かった上位10の海賊版サイトだけで総額1兆19億円にのぼり、前の年のおよそ4.8倍に増えて過去最悪の水準となりました。

これは、出版業界の調査や研究を行う出版科学研究所がまとめた紙と電子版を合わせた去年の正規の漫画市場、6759億円を大きく上回っています。

現在、日本向けの海賊版サイトの多くは警察の捜査などを避けるため、海外に拠点を置いているとみられています。

さらに、日本の漫画やアニメの人気の高さを背景として、海外限定の海賊版サイトも増え、監視を避けるため、日本からは閲覧できないものも出ているということです。

このため海賊版対策には、海外の捜査機関と情報共有するなど、国をまたぐ連携が不可欠となっています。