“肉の厚み”も表現 「大豆ミート」がより身近に

大豆を原料に肉のような味や食感を出した「大豆ミート」に代表される、植物由来の原料で作られた食品。健康志向や環境意識の高まりを背景に、日本でも市場が徐々に拡大しています。

最近では、ホテルのレストランで大豆ミートを使った料理が提供されたり、大豆ミートを作るメーカーが“肉の厚み”を表現する新たな技術を開発するなど、その存在は私たちの生活により身近なものになろうとしています。

バイキングのメニューに大豆ミート

大阪中心部にあるホテルのレストラン。

営業が始まる午前11時半になると、バイキング目当ての客が次々に訪れます。

およそ80種類のメニューが並ぶ豪快なバイキングの中で、訪れた客が物珍しそうに見るのは、揚げなすに、大豆ミートで作ったそぼろ味噌をかけた一品。
このレストランではこれまでも大豆ミートを使った麻婆豆腐やロールキャベツなども提供し、客の反応は上々だといいます。
レストランの客
「言われないと分からなかったです。おいしくしっかり食感もあります」
「すごく消化によさそうなので、小さい子どもさんや年配の方でもおいしくいただけるなと」
このホテルのグループでは、牛の飼育と比べて環境への負荷が小さい大豆に着目。

環境問題への関心を高めてもらおうと、大豆ミートを去年12月に導入しました。

今後、客の反応も見ながら、メニューを増やすことも検討することにしています。
阪急阪神ホテルズ SDGs推進部 鳥井由佳部長
「食の選択肢を広げながら社会問題や環境問題への関心を高めてもらいたいという思いから、大豆ミートの提供を始めました。今後も食を通じて環境問題の解決につながるような取り組みを続けていきたいです」

大豆ミート 市場規模は拡大

「大豆ミート」に代表される植物由来の原料で作った食品が注目を集める背景には、健康志向や環境意識の高まりがあります。

日本は、欧米と比べれば普及が遅れてきましたが、ここ数年、食品メーカーや外食チェーンなどが相次いで参入し、市場が拡大してきました。
日本能率協会総合研究所がまとめた調査によると、「大豆ミート」の市場規模は2019年度には15億円でしたが、品質の改善や商品数の増加によって、今年度(2022年度)には25億円、そして2025年度には40億円に拡大すると予測しています。

食品メーカーも開発強化 メニュー増やし “肉の厚み”も

こうした市場拡大の好機を捉えようと、大阪の食品メーカー「不二製油」が7日、東京都内のホテルで戦略説明会を開きました。

この中で、会社側は、自社での植物由来の食品について、国内外での売り上げを2030年に1000億円まで拡大させる方針を明らかにしました。
売り上げ拡大に向けて鍵を握るのが「メニュー」の数です。

説明会に合わせて行われた試食会。

会場となった「ニュー・オータニ」の料理人が考案した、えびかつ風バーガーやミートシチュー、マーボー豆腐丼など、10品目以上が並べられました。
取材した記者がミートシチューとえびかつ風バーガーを試食してみましたが、味や食感は本物の肉に近い印象を持ちました。
この会社では、大豆の加工を工夫して肉の厚みを表現する技術の実用化にめどが立ったことから、8月から新しいタイプの大豆ミートを販売するということです。

そして、開発体制を強化して食材の数をさらに増やしていく考えです。
不二製油 大森達司社長
「地球の人口が2050年に100億になるというふうに言われています。選択肢の一つとして植物性の食品をある程度選択いただくことが、持続可能な地球環境にも人にも優しいと、信念を持って進めていきたいと考えております」
一方、会場となったホテルでは、レストランのメニューの一部に大豆ミートなどを取り入れることも検討しているということです。

ニュー・オータニ 中島眞介 総料理長
「植物性の食材は味をつけやすい、味が分かりやすい。食材との組み合わせを相当何万通りとあると思いますので、それを私たちは引き出してひとつの味にするということに汗をかいていきたい」
植物由来の原料で作られた食品は、欧米と比べて普及が遅れていましたが、国内でもスーパーなどで見かけるようになりました。

まだ牛肉などと比べると割高なことも事実ですが、新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻の影響で牛肉などの価格が高止まりする中、代替食品としての可能性が高まりつつあるかもしれません。

(大阪放送局 記者 吉田幸史 千田慎太郎)