熱中症対策に「手のひら冷却」を

梅雨明け直後は多くの人が暑さに慣れていないため、熱中症のリスクが高くなります。

専門家は、熱中症対策のひとつとして、「手のひら」などを冷やすことが効果があるとしています。

手のひらに体温調整の役割担う血管

体温調節の仕組みに詳しい、神戸女子大学の平田耕造名誉教授は「両手のひらは、面積が体全体の5%しかないが、AVA=動静脈吻合(どうじょうみゃくふんごう)という、体温調整の役割を担う血管があり、そこに熱い血液を流して、手のひらから熱を逃がしている。空気中に手のひらをさらしているだけでも熱は逃げていくが、冷たいものと接触させることで、体温を早く下げやすくする効果がある」と話します。
平田名誉教授によりますと、手のひらや足の裏のAVAを流れる血液の量は、毛細血管を流れる血液に比べて1万倍ほど多く、手のひらや足の裏を冷やすことによって、効率よく体を冷やすことができるということです。

練習中に手のひら冷やし熱中症対策

京都市右京区にある京都先端科学大学の野球部では、練習中の熱中症対策として、大阪の企業が開発した、1時間から2時間ほど冷却効果を保つ特殊な保冷剤を手で握って、体温を下げる取り組みを、試験的に始めています。
まず、学生たちは練習を始める前に保冷剤を握って手のひらを冷やし、その後、走り込みなどの合間の休憩のたびに、こまめに手のひらを冷やしていました。

水分補給などと合わせて行うことで、体温を下げて熱中症のリスクを下げる効果を期待しているということです。
野球部の部員は「涼しい状態で楽に運動ができました」と話していました。
京都先端科学大学野球部の梶田和宏コーチは「短い時間で簡単に体温を下げられるのがいい。学生たちが熱中症の対策をしながら上手に部活動をするうえで、強力なサポーターになってくれると思います」と話していました。

冷やしすぎには注意

神戸女子大学の平田名誉教授によりますと、手のひらなどを冷やす際には、氷など10度を下回る冷たすぎるものではなく、15度程度のものを使うとよいそうです。

AVAを冷やしすぎてしまうと、たくさんの血液を流すために拡張していた血管が、逆に収縮してしまうことがあり、熱を発散しにくくなるということです。

平田名誉教授は「水道水を洗面器などにためて、そこに手や足を入れるだけで、十分、効果的に体温を下げることができる」と話していました。

“体の反応が真夏ほど追いついていない”

平田名誉教授は、梅雨が明けたばかりで厳しい暑さが続く今の季節の注意点として「6月や7月の上旬というのは、すでに非常に暑くなっているにもかかわらず『血液をたくさん流そう、たくさん汗を出そう』という、暑熱順化といわれる体の反応が、真夏ほど追いついていないため、注意する必要がある」と指摘しています。

そのうえで「暑熱順化が追いついていないことを自覚したうえで、積極的にエアコンを使うとか、水分補給を積極的にするとか、早め早めに対策してほしい」と呼びかけています。

(大阪放送局 鈴椋子 金武孝幸)