1本10円って… 格安自販機 大阪に多いのなんでなん?

100円! 80円!! 50円!!!
大阪の街では「格安」や「激安」と書かれた飲み物の自動販売機をよく目にします。
中にはなんと10円のものも…

さまざまなものが値上げされている昨今。
大阪ではなぜこんなに格安自販機がたくさんあるのでしょうか?

(大阪放送局 なんでなん?取材班 鈴椋子 横山康博)

100円自販機がいっぱい

大阪に記者として赴任して2年余り。ふと気になることがありました。
100円の自販機をよく見かけるのです。

通常の自販機では150円や160円で売られている商品でも、大阪では…
「ワンコイン!」「プライスダウン!!」
存在感のあるポップとともに黄色や青などカラフルな「格安自販機」があちらこちらに置かれています。
いったいどのくらいあるのか。
業界団体などに問い合わせると、日本全体の自販機の設置台数は分かるものの「価格帯までは把握していない」という回答が。

記者が歩いて調べてみた

そこで、大阪中心部を実際に歩いて調べてみることにしました。
選んだのはJR大阪駅の隣駅、天満です。
繁華街の周囲500mの範囲を調べてみると、公園や駐車場などで次々と100円自販機を発見。中には80円や50円などで売っている自販機も。
100円以下で売られている自販機は実に47台もありました。

どうやって利益を出しているの?

安い自販機でどうやって利益を出しているのか?
設置している会社を訪ねました。
大阪府内におよそ400台の自販機を設置している会社の道端寛之代表。
ほかの会社の自販機では120円などで販売している飲料を、道端さんは100円で販売しています。

100円自販機会社 道端寛之さん
「食品の値上げは、大阪の皆さんは敏感に反応するところですので、やっぱりワンコインの方が購入しやすい」

「お得」にこだわる人が多い大阪。道端さんは13年前の創業当時から100円で販売し続けてきました。

100円で販売できる秘密は2つあると道端さんはいいます。

秘密その1 地元に飲料メーカー

1つめは、地元の飲料メーカーの一部と良好な関係を築いてきたこと。
大阪には日本サンガリア ベバレッジカンパニー、チェリオコーポレーション、など、中堅の飲料メーカーが多く存在します。

道端さんの会社では、こうしたメーカーの一部と日頃から密なコミュニケーションをとることで、季節に合わなくなった飲み物や、ラベルのデザインが変更された旧デザインの商品などを優先的に安く仕入れることができるといいます。

メーカー側から見ても、原価は低くなっても在庫を受け入れてくれるため、お互いウィンウィンの関係を築けているということです。

秘密その2 人口密集する大阪の地理

2つめは、人口が密集する大阪の特徴にあるといいます。
梅田周辺の「キタ」、難波や心斎橋周辺の「ミナミ」、天王寺・あべのなど、比較的狭いエリアに人口が密集する大阪。

自動販売機に商品を補充する時にも効率的なルートで集中して作業できるため、配送コストが抑えられているというのです。

100円自販機会社 道端寛之さん
「大阪は狭い街なので人口が集中するエリアに集中しておけば、すごく売り上げが取りやすい」

1本10円の自動販売機も発見!

調査を進めるなか、驚きの自販機も発見しました。
なんと1本10円!
桁を1つ間違えているのではないか。もしかして見間違いかと思いながら近づくと…

商品が展示されているスペースには猫のイラスト。
何が売られているのか分かりません。

それにもかかわらず、次々と購入しに来る人の姿が。
何が出てきたのか聞いてみると…

「いいものが出てくるときもあれば、あまりよくないものが出てくるときもある」
「夏にお汁粉とか出てくるときも。別にもう10円やから、まあええわ」

取材した日は蒸し暑く、お汁粉が出ないことを祈りつつ購入してみると…
出てきたのは500ミリリットルのペットボトルに入った日向夏味のドリンクでした。

それにしても、なぜ10円で販売できるのか。
自販機を設置した会社の釜坂晃司さんに聞いてみると…
「もう赤字覚悟ですよ」

やはり10円では利益は出ないようです。
でもなぜ10円での販売を続けているのでしょうか。

関西で50円から100円の自販機を500台ほど設置しているこの会社。
安く提供するため賞味期限が近い商品を仕入れていて、天候によってあまり売れない日が続いた時には、大量の在庫を抱えてしまうこともあるそうです。

廃棄のためにかかる費用は1本当たり20円ほどといいます。
10円自販機会社 釜坂晃司さん
「1000ケースあって、800ケースは自販機で普通の値段で売れそうやと。でも200ケースはこれ残りそうやなと。賞味期限切れなっちゃうと。廃棄料がかかることを思ったら、10円で200ケースさばいたほうがプラスになるやないですか」

10円自販機は50円や100円の自販機の横に2台設置。
10年前に設置し始めた直後から、飛ぶように売れたといいます。

10円自販機は赤字でも、それによって客を呼び込み、本業の50円や100円の格安自販機で購入してもらう機会につなげたいと話していました。

格安自販機を飲料メーカーはどう見てる?

格安自販機は私たちにとってはありがたい存在ですが、商品を作っている飲料メーカーはどう見ているのでしょうか?

大阪に本社があるダイドーに聞きました。
ダイドー担当者
「やはり定価で売れた方がうれしい。でも、スーパーなどで販売しようとすると、価格競争が激しく、値崩れが起きやすい。その半面、自販機は安定的に収益を得られるメリットがある」

価格以外でもアピール 変わる自販機

ダイドーは売り上げの8割を自販機が占めていて、価格以外でもアピールしようと自動販売機の高度化や多角化を進めています。

例えば、顔認証機能がついた自動販売機。
あらかじめ顔を登録しておけば小銭を持たずに飲み物が買え、代金が自動で引き落とされます。

食品工場などで働く人から「財布などを持ち込めず、更衣室に取りに行くのが面倒だ」という要望を受けて開発されたそうです。

また、大阪メトロの駅構内の自販機でジュースの隣で売られているのは、ストッキングや紙おむつ。
ストッキング、気がついたら伝線していたという人にとっては、助かるかもしれません。

飲み物だけでなくさまざまなものが自動販売機で買えるようになっています。

大阪の自動販売機は安さがウリなだけでなく、新しい自販機文化もまた生まれようとしているのかもしれません。

この内容は6月23日午後6時からのNHK総合の関西向けニュース「ほっと関西」でお伝えします。

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