医学部入試“性別で不利益は差別的” 順大に賠償命令 東京地裁

順天堂大学の医学部入試で、女性が不利になるような基準で判定され不合格になったとして、受験した女性13人が大学側に賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所は「性別だけで一律に不利益に扱う判定基準は不合理で差別的だ」として、大学側に合わせて800万円余りの支払いを命じる判決を言い渡しました。

平成23年度から30年度にかけて、順天堂大学の医学部を受験し不合格となった女性13人は「女性の合格を制限するため、男性の受験者と比べて不当に高い基準をもとに合否を判定された。性別による差別を禁止した憲法の趣旨に反する」として、大学を運営する学校法人に賠償を求めていました。

19日の判決で、東京地方裁判所の加本牧子裁判長は、「大学は入学者の選別に関し、憲法の趣旨を尊重する義務を負っているのに、女性の受験者を性別だけで一律に不利益に扱う判定基準は、医師としての資質や学力の評価とは直接関わりのない事柄で合否の判定を左右するもので、不合理で差別的だ」と指摘しました。

そのうえで、「大学側はこうした基準の存在を秘密にして募集をかけていて、受験生がほかの大学を受験する意思決定の自由を侵害した。不合理な差別的扱いを受けた女性たちは精神的な苦痛を受けたと想像できる」として、それぞれの受験回数に応じて、1人当たり30万円から90万円の慰謝料を認め、合わせて800万円余りの賠償を大学側に命じました。

原告女性 “時間は戻らず 泣く泣く別の道を歩んだ”

判決を受けて原告側の弁護団が記者会見し、受験生だった女性のコメントが読み上げられました。

医学部が不合格となり、ほかの分野に進学した女性は「不法な行為だと認められたのはよかったですが、時間は戻ってきません。確固とした信念を持って医師を志した受験生がその道を閉ざされ、泣く泣く別の道を歩んだことを忘れないでほしい」としています。

神原みわ子弁護士は、「判決が、性別だけで一律に不利益な扱いを受けることは不合理で差別的だと明確に指摘したことは評価できる」と述べました。

一方で、「認められた慰謝料は非常に低額で、人生の選択にかかわる重要な場面で不当に差別され、裏切られた受験生たちの大きな精神的苦痛について裁判所は正面から評価していない」と批判しました。

順天堂大学「コメント差し控える」

判決について順天堂大学は、「コメントを差し控えます」としています。