AEDで小学生の命救う バスケチームのコーチなどに感謝状 埼玉

埼玉県所沢市で、ことし2月にバスケットボールの練習中に突然意識を失った小学生に、AEDを使ったり心臓マッサージをしたりして命を救ったとして、チームの関係者などに消防から感謝状が贈られました。

17日は所沢市の埼玉西部消防局で感謝状の贈呈式が行われ、岸文隆消防局長からバスケットボールチームのコーチや保護者など合わせて5人に感謝状が手渡されました。

5人はことし2月、市民体育館で行われていたバスケットボールの練習中に、6年生の女子児童が突然倒れた際、すぐにAEDを取りに行ったり、119番通報をしたりして協力して救命措置に当たりました。

5人のうち1人の保護者は看護師で、女子児童の脈を確認しましたが確認できず、周りが協力してAEDのボタンを押したり心臓マッサージや人工呼吸を行ったりしたということです。その結果、救急隊の到着前に心拍と呼吸が再開し、女子児童はその後、元気になったということです。

岸消防局長は「皆さんの勇気ある迅速な行動で尊い命を救うことができた。感謝します」と述べました。

AEDを取りに行ったコーチの後藤崇志さんは心臓の手術を受けたこともあって、体育館の受付近くのAEDの設置場所を事前に把握していたということで、「その場に居合わせた人たちの協力のおかげで命を助けることができ一安心しました。同じようなことがあったときに備えて、チームでAEDの使用方法を確認していくことにしました」と話していました。

また、看護師の青木紀江さんは都内の病院に勤務していますが、AEDのボタンを押したのは初めてだったということです。

青木さんは「女の子が回復して流れる涙を見た時に本当によかったと思いました。医療に携わっている自分でもAEDのボタンを押すのは怖いという思いがありました。AEDの使用方法を周知させていくことが必要だと思いました」と涙ぐみながら話していました。

AED「使用率」おととし減少に転じる

AEDの普及を進めている「日本AED財団」によりますと、毎年7万人を超える人が心筋梗塞など心臓の異常で突然死していて、救急車が駆けつけるまでの間の処置が重要だということです。

この際の救命処置に用いるAEDは、普及が進んで全国でおよそ60万台以上が設置されています。

総務省消防庁によると、誰かの目の前で倒れた人がAEDで電気ショックの処置を受けた割合を示す「使用率」は、年々上昇し、3年前の2019年は5.1%でしたが、おととしは4.2%と減少に転じ、減少幅はこれまでで最も大きくなりました。

救命率の指標となる、心停止から1か月後に社会復帰できた人の割合も、おととしは7.5%で、2019年の9%から低下しています。

日本AED財団は、突然の心停止から命を救うには、まず119番通報して、胸骨を圧迫する心臓マッサージを行い、AEDによる電気ショックを与えることが重要だとしています。

救急隊の到着を待つだけでは8.2%の人しか救命できないのに対し、心臓マッサージも行うことで12.2%の人を、さらにAEDも用いると53.2%の人を救うことができるということです。

「日本AED財団」理事長 “使用率低下 背景にコロナ禍か”

「日本AED財団」の理事長を務める三田村秀雄医師は、「AEDの使用率が下がった背景として、コロナ禍で感染リスクを心配して、目の前にAEDの使用が必要な人がいても手を貸していいのかちゅうちょするケースがあったのではないか」と指摘しています。

そのうえで、「コロナ禍であっても、AEDの使用自体は感染リスクはほとんどなく、胸骨圧迫の際には患者の口や鼻から息が漏れるので、患者がマスクをしていれば取る必要はないし、していない場合は患者の口と鼻に布やハンカチをかけて胸骨圧迫を行えばリスクは下げられる。AEDを使うことで貴重な命を救える可能性がかなりの確率で高まるので、ぜひオンラインの講習会などにも参加して、コロナ禍であっても目の前の人が倒れた際は勇気を出してその人を救うことに専念してもらいたい」と話していました。