ヤングケアラー当事者への調査 “SOS出せない”実態浮き彫りに

NHKは家族の介護やケアを担う子ども「ヤングケアラー」への支援について、当事者1000人と全国の自治体にそれぞれアンケート調査を行いました。
この中では、介護やケアについて「相談したことはない」「あまり相談していない」と答えた当事者が73%に上るなど、本人がSOSを出さなかったり、家族に拒まれて支援が届かなかったりする実態が見えてきました。

当事者アンケートでは

NHKは、「LINE」を通じて、ヤングケアラー当事者1000人にアンケートを行いました。

<相談の経験>
家族の介護や世話について、誰かに相談した経験があるか聞いたところ、「相談したことはない」「あまり相談していない」と答えたのは、合わせて73%に上りました。
<相談しない理由>
その理由について複数回答で聞いたところ、
▽「相談しても意味がない」が最も多く29%、
次いで、
▽「他人には相談しづらい」
▽「相談する必要がないと思った」などとなりました。

<実際に利用した支援・サポート>
実際に利用した支援・サポートについては、
▽「特にない」が70%にのぼり、
十分な支援・サポートを受けられていない理由については
▽「どんな支援があるか、わからないから」が45%、
▽「どこに相談すればよいのか、わからないから」が38%などとなりました。

<自由記述>
アンケートの自由記述の欄には、切実な声がつづられました。
▽「相談できる人もいなく、相談したら親に怒られると思った」
▽「兄弟のご飯の支度をしないといけなくて友達と遊べず、友達に理由を言うべきか悩んだ」
▽「睡眠不足で学校も思うように通えなくて心身共に辛かった」
▽「介護と金銭的な問題で進学出来なかった」

自治体アンケートでは

<支援の難しさ>
一方、NHKが全国155の自治体に「支援の難しさ」について、選択肢から最大3つまで選んでもらったところ、
▽「家族が支援を拒むもしくは求めてこない」が最も多く77%、
次いで、
▽「本人が支援を拒むもしくは求めてこない」が76%、
▽「問題が多岐にわたるため1つの部署・機関では対応しきれない」が50%などとなりました。

専門家「まずは子どもたちに寄り添うことから」

ヤングケアラーの調査や研究を行っている大阪歯科大学の濱島淑恵教授は、「日本社会には、まだ家族で家族のケアをするのが当たり前だというような感覚がある。なぜ拒否的なのか、いま関係ができているヘルパーやソーシャルワーカーなどから、情報を得て探っていくことも大事になってくる」としたうえで、「日常的に、たあいのない会話ができる関係になっていれば、しんどくなったときにすぐに話してもらうことも可能になり、早い段階から少しずつサポートできるようになる。まずは子どもたちに寄り添う、丁寧に一生懸命、話を聞くということから始めてほしい」と話しました。