知床 観光船遭難事故 新たに子ども1人死亡確認 死者は計11人に

北海道の知床半島の沖合で乗客・乗員26人が乗った観光船が遭難した事故は、新たに子ども1人の死亡が発表され、これまでに現場海域の周辺で救助された11人全員の死亡が確認されました。

事故から3日目となる25日も海上保安本部や自衛隊などが範囲を広げて捜索を続けています。

23日、乗客・乗員26人を乗せ斜里町ウトロを出港した観光船「KAZU 1(19トン)」が知床半島の沖合を航行中に遭難した事故は24日、現場海域の周辺で見つかった男性7人、女性3人の合わせて10人が死亡したほか、第1管区海上保安本部は25日、24日夜に新たに救助された子ども1人の死亡が確認されたと発表しました。

これでこれまでに救助された11人全員の死亡が確認されたことになり、第1管区海上保安本部が身元の確認を進めています。

範囲を広げて捜索継続

一方、現場海域の周辺では事故から3日目の25日も海上保安本部や自衛隊、それに地元の漁業関係者などが捜索に当たっています。

ただ知床半島沿岸の海域は場所によって水深が100メートル以上と深いところがあるうえ潮の流れが速く、海上保安本部によりますと、救助された人の中には半島の先端から東へ14キロ余りの沖合に流されていた人もいたということです。

海上保安本部などは時間の経過によってほかにも沖合に流された人がいるとみて、さらに範囲を広げて捜索を続けることにしています。

死亡した子ども 東京の3歳の女の子か

斜里町によりますと、新たに死亡が確認された子どもは東京都内から両親と訪れていた3歳の女の子とみられるということです。また町によりますと、一緒に乗船していたとみられる両親はまだ見つかっていないということです。

国の船舶事故調査官 当時の海域の状況など情報収集

国の運輸安全委員会の船舶事故調査官が斜里町を訪れ、運航会社「知床遊覧船」の事務所や地元の漁協などを回り当時の海域の状況などについて情報収集を行いました。

25日午前、国の運輸安全委員会の船舶事故調査官3人は斜里町役場のウトロ支所に設けられた現地対策本部を訪れました。続いて正午ごろ観光船の運航会社「知床遊覧船」の事務所に入り、従業員から話を聞きました。社長への聞き取りは救助や遺族対応の支障とならないよう25日は行っていないということです。

さらに午後2時ごろには地元の漁協を訪れ、現場海域の特徴などについて情報を確認したということです。

日程を終えた大熊寛章 統括船舶事故調査官は「事故当時は天候が悪かったと聞いているので海面や天候の状況を分析していく。今後は関係者や地域をよく知る人から気象や船体についての情報を収集していく。船体が見つかっていないので可能なかぎり船体に関する情報を多方面から収集したい」と述べました。

船舶事故調査官は26日も情報の収集と分析を続けることにしています。

斜里町ウトロ 小型の観光船運航の4社 来月8日まで運航自粛

斜里町ウトロで小型の観光船を運航している4社は遭難事故を受けて、観光船の運航を来月8日まで自粛することを決めました。

知床斜里町観光協会によりますと「知床小型観光船協議会」は23日に発生した遭難事故を受けて、観光船の運航を来月8日まで自粛することを決めました。

自粛するのは遭難した観光船を運航していた「知床遊覧船」を含めて協議会に所属している4社で、いずれも乗員50人程度の小型船を運航しています。来月9日以降、運航するかどうかは未定だということです。

観光協会によりますと「知床遊覧船」は23日から、そのほかの3社のうち2社は早ければ今月28日から運航を始める予定だったということです。

また大型の観光船「おーろら」についても、運航会社が今月28日から始める予定だった運航を来月8日まで取りやめる方針だということです。

官房副長官「政府一体となって対応に全力」

磯崎官房副長官は記者会見で「亡くなられた方々に心より哀悼の意を表するとともに、ご家族の方々にお悔やみを申し上げたい。事案の発生を受け岸田総理大臣から人命救助を最優先にあらゆる手段を尽くして救助に取り組むよう指示があった」と述べました。そのうえで「おととい午後5時半に官邸内に情報連絡室を設置し関連情報の集約を行うとともに、現場周辺海域では海上保安庁の巡視船艇や航空機などが連携しながら捜索救助活動を行っている。またきのう国土交通省が現地対策本部を設置し国土交通大臣を派遣するなど、政府一体となって対応に全力を挙げている。引き続き行方不明者の捜索救助活動に全力を尽くしていきたい」と述べました。

また磯崎官房副長官は「当日の運航の判断は各運航事業者が作成する安全管理規程に基づいて当日の気象などを考慮して行うことになっている。現在実施中の特別監査でこれらの点についても確認を行っており、監査結果などを踏まえて早急に再発防止策を取りまとめたい」と述べました。

官房副長官 初動対応を説明

一方、磯崎官房副長官は記者会見で「海上保安庁の捜索部隊が現場に到着するまで時間がかかった理由はなぜか」と問われたのに対し「午後1時13分ごろに救助要請を受けた。最も近い釧路航空基地所属の回転翼機は当時、哨戒業務中で現場海域が遠方で、つり上げ救助などの活動時間を確保するために燃料を補給する必要があった」と述べました。そして「救助活動を行うための海上保安庁の潜水士を同乗させる必要があったことから午後2時38分に釧路航空基地へいったん帰投し、給油活動および潜水士を同乗させたのちに午後3時20分に基地を出発し午後4時30分に現地付近海域に到着した」と述べました。

そのうえで「今般の捜索活動では狭い区域で一度に航空機が集中しないよう管内の航空基地からの距離、機体の状況などを踏まえて関係機関も含めた空域調整をし、現場海域において連続した捜索活動を行うために必要な勢力を投入した」と述べました。

また船による救助について「航空機と同じく午後1時22分ごろに道東を管轄する部署に所属する巡視船に対して発動の指示を行った。通常の速力であれば、より早期に現場付近に到着できたと考えられるが当日、海上が荒天下だったため通常の速力が出せず最初に到着した巡視船も午後5時55分に現地付近に到着した。海上が非常に荒天だったことが通常よりも時間がかかった原因だと認識している」と述べました。

さらに「海上保安庁と自衛隊との連携など初動対応に問題はなかったか」と問われたのに対し、磯崎官房副長官は「救助要請を受けた時点で現場付近海域の具体的な状況が不明だったことから、海上保安庁の航空機による現場確認を実施したうえで災害派遣を要請した。海上保安庁の航空機ではカバーできない夜間の時間帯も連続して捜索を行うため航空自衛隊と分担調整を行い災害派遣の要請が受理された。しっかりと連携が取れた中で行動したと承知している」と述べました。

公明 山口代表「原因調査し再発防止策を確立してもらいたい」

公明党の山口代表は訪問先の熊本市で記者団に対し「犠牲になった方のご冥福を心からお祈り申し上げる。船の安全性や操船に問題はなかったか、気象条件を甘く見すぎていなかったかなどさまざまなことが考えられるので、国土交通省には原因をしっかり調査し再発防止策を確立してもらいたい。大型連休で人出が増えると予測されるので、事業者などには乗り物や遊具などの安全点検をしっかり行ってもらいたい」と述べました。