行政機関も「ChatGPT」 神奈川の市役所では“全国初”業務導入

質問を入力するだけですぐに自然で説得力のある回答が返ってくるAIとの対話ソフト「ChatGPT」の利用が、首都圏を中心に個人や企業に加え、神奈川県横須賀市役所では全国の自治体で初めて利用されるなど急拡大しています。

対話式AI「ChatGPT」の普及が急速に進む中、神奈川県横須賀市は市の業務への活用を試験的に始めました。市によりますと全面的に自治体の業務に導入するのは全国初だということです。

「ChatGPT」はアメリカのベンチャー企業「オープンAI」が開発し、去年11月に公表した対話式AI=人工知能です。

日本語にも対応していて、AIと対話するようにやりとりを進め、内容を指定して文章を作成させたり、すでにある文章を要約させたりできます。

知りたい情報を尋ねると人が作成したような、自然なことばで回答を作成できることから、幅広い分野で活用が想定されるいわゆる“生成系AI”の1つで、企業などでの利用が急速に広がっています。

こうした中、横須賀市は20日から1か月の日程で試験利用を始めました。

自治体専用のビジネスチャット上で「ChatGPT」を利用できるようにして、およそ4000人の職員が文章の作成や議事録の要約のほか、政策立案などに利用し、使い勝手やコストを検証します。

場合によっては、人がいちから文章を作る場合に比べて半分以下の時間でできあがるということで、業務の効率化を期待しています。

一方で「ChatGPT」については機密情報の取り扱いや個人情報の保護などの課題が指摘されていることから市では職員に対し個人情報や機密情報の入力を禁止しています。

「ChatGPT」を自治体の業務に全面的に導入するのは全国初だということで、上地克明市長は「テクノロジーを活用して業務を効率化し、職員は福祉分野など人だからこそできる仕事に注力できるようにしたい」と話しています。

埼玉 戸田ではルールなどまとめたガイドブックを作成

埼玉県戸田市は「ChatGPT」を自治体の業務で安全に利用するためのガイドブックを作成し、早ければ秋ごろに公表したいとしています。

戸田市は今月、デジタルに詳しい職員や課長級などあわせて16人で作る調査研究チームを設け「ChatGPT」の活用でどのような業務の自動化や効率化ができるか検討を始めました。

市ではすでに「ChatGPT」を試験的に使い、会議の資料や通信アプリ「LINE」と組み合わせて問い合わせに応答する仕組みを作ってみたということです。

問い合わせへの回答や会議の議事録作成などの自動化や効率化を想定する一方で、個人情報や機密情報を入力した場合、流出しないか懸念しています。

このため、安全に利用する方法を検証したうえで、自治体で活用する場合の業務の範囲やルールなどについてまとめたガイドブックを作成し、早ければことしの秋ごろに公表するとしています。

戸田市デジタル戦略室の大山水帆室長は、「有効な使い方ができる反面、予想しない形で情報が利用されるなどリスクや危険性も伴う。ガイドブックは戸田市の職員だけでなく全国の自治体で役に立つものにしていきたい」と話しています。

総務相「取扱いに留意点も省内での活用検討」

20日の参議院総務委員会では、急速な普及が進む、AI=人工知能との対話ソフト「ChatGPT」をめぐって議論が交わされました。

この中で、松本総務大臣は「機密情報の取り扱い、個人情報の保護、回答の正確性の確保など課題が指摘されているが、これらの課題を理由に利活用自体を止めるものではない。課題に応じて適切なルールを検討することが重要だ」と指摘しました。

その上で「一般論として、新しい技術は使ってみなければわからないものだ。総務省としても、外部の知見も借りながら、日々の業務における適切な利活用に向け、情報の取り扱いに留意しながら、まずは試みとして利用してみたい」と述べ、省内で業務への活用も検討する考えを示しました。

維新代表 “公の機関使うレベルに達していない 慎重判断を”

日本維新の会の馬場代表は、記者会見で「ChatGPTは発展途上でセキュリティーの部分での懸念があり、公の機関が使うレベルには達していないと思う。きちんとルールを作った上で使っていかなければならず、官公庁で使うにはまだ検討する事項があり、慎重な判断を求めていきたい」と述べました。

入力したデータの取り扱いや個人情報保護などの課題指摘も

「ChatGPT」の利用をめぐっては入力したデータの取り扱いや個人情報の保護などの課題が指摘されています。

開発企業は先月改訂した利用規約で、横須賀市のように別のシステムと連携して利用する場合は、入力データをAIの能力を高めるための学習には使わないとしていて、横須賀市は「市の職員が入力したデータが外部で使われることはない」としています。
さらに横須賀市は職員に対して「ChatGPT」に個人情報や機密情報の入力を禁止しています。

情報の正確性も課題になっていて、試しに横須賀市の人口を聞くと「2021年9月時点でおよそ42万5000人」と回答しました。しかし、この時点の正しい人口はおよそ38万5000人で、誤った数字でした。

原因は分からないということで、横須賀市は情報の正確性は高くないとして検索目的では極力使用しないよう職員によびかけています。