「H3」初号機の打ち上げは7日午前10時37分、鹿児島県の種子島宇宙センターで行われ、計画では、打ち上げからおよそ17分後に、搭載した地球観測衛星「だいち3号」を軌道に投入する予定でした。
ところが、発射から13分55秒後、ミッションを達成する見込みがないとして地上からの指令でロケットを爆破する「指令破壊」の信号が送られ打ち上げは失敗しました。
「H3」の打ち上げは当初、2020年度の予定でしたが、新型のメインエンジンの開発が難航するなど、延期が続いていました。
先月17日には、発射直前にロケットの1段目にある装置が異常を検知したため打ち上げが中止され、その後、JAXAなどが原因の究明を進め対策を講じてきました。
「H3」は国産の主力ロケットとして日本の今後の宇宙開発の“切り札”と位置づけられていただけに、初号機の打ち上げ失敗による影響は避けられない見通しです。
H3ロケット打ち上げ失敗 2段目が点火せず JAXAは原因究明へ
日本の新たな主力ロケット「H3」の初号機が7日午前10時37分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられましたが、2段目のロケットが点火せず、その後、指令破壊の信号が送られ、打ち上げは失敗しました。
これを受けてJAXA=宇宙航空研究開発機構が会見し、山川宏理事長は「ご期待に応えられず、深くおわびを申し上げます」と謝罪しました。
発射から13分55秒後に「指令破壊」
専門家“エンジンの問題でなく「着火信号が行っていない」では”
三菱重工業の宇宙事業部長などを務め、ロケット開発に詳しい淺田正一郎さんは「第2段エンジンは、H2AやH2Bといったこれまでのロケットを踏襲したもので、使用実績もたくさんある。信頼性も高く、いかなる状況下でも着火するシステムなので、これが着火していないということは、エンジンの問題ではなく、着火信号が行っていない、ということだろう。過去に第2段エンジンが燃焼しなかった例は聞いたことがない」と話していました。
そのうえで「第1段エンジンに燃焼などの指示はできているので、第2段エンジンを制御するコンピューターの問題だと思われるが、現時点では原因について何ともいえない」と話していました。また打ち上げ失敗の影響については「日本にとってインパクトが大きい。ロケットの打ち上げがうまくいかないこととともに、人工衛星が打ち上げられないことが非常に痛手で、諸外国に遅れをとることが懸念される。原因究明によって自分たちが把握できていなかったことを見つけることになると思うが、次の打ち上げに反映し、信頼性の高いロケットに仕上げてほしい」と話していました。
そのうえで「第1段エンジンに燃焼などの指示はできているので、第2段エンジンを制御するコンピューターの問題だと思われるが、現時点では原因について何ともいえない」と話していました。また打ち上げ失敗の影響については「日本にとってインパクトが大きい。ロケットの打ち上げがうまくいかないこととともに、人工衛星が打ち上げられないことが非常に痛手で、諸外国に遅れをとることが懸念される。原因究明によって自分たちが把握できていなかったことを見つけることになると思うが、次の打ち上げに反映し、信頼性の高いロケットに仕上げてほしい」と話していました。
12:20ごろ 文科省の対策本部初会合「ロケットは予測区域に落下」
オンラインで開かれた初会合で、本部長を務める井出庸生文部科学副大臣は「失敗という事態が発生したことについては誠に残念であり、徹底的な原因究明が必要だ」と述べました。そのうえで「適切な対策の検討などに総力を挙げて取り組み、日本の宇宙開発利用に関する信頼を取り戻すべく全力を傾注したい」と述べました。
文部科学省の担当者からは1段目と2段目のロケットは、解析の結果、ともに1段目のロケットの落下予測区域に落ちたこと、現時点で第三者の被害は確認されていないことなどが報告されました。
文部科学省の担当者からは1段目と2段目のロケットは、解析の結果、ともに1段目のロケットの落下予測区域に落ちたこと、現時点で第三者の被害は確認されていないことなどが報告されました。
14:15ごろ JAXA記者会見 冒頭に理事長が謝罪
打ち上げ失敗を受け、JAXA=宇宙航空研究開発機構は、午後2時すぎから会見を開いています。会見の冒頭、山川宏理事長は「搭載された衛星に関係されたみなさま、地元をはじめ、関係するみなさま、そして多くの国民のみなさまのご期待に応えられず深くおわび申し上げます」と謝罪しました。
JAXA理事「1段目と2段目の分離までは計画どおり所定の性能発揮」
JAXAの布野泰広理事は「打ち上げ後、新たに開発した補助ロケットが燃焼終了して計画どおりに分離され、同じく衛星を覆うフェアリングも分離された。メインエンジンの『LEー9』の燃焼も計画どおり行われた。1段目と2段目の分離までは計画どおり、所定の性能を発揮したと評価している」と説明しました。
「機体はフィリピン沖の深海に 回収は考えず」
布野理事は「指令破壊」された「H3」の機体について「1段目の落下予想区域であるフィリピンの東方沖の海上に落下した。『指令破壊』のコマンドを送ったのが打ち上げから13分55秒後ということは分かるが、いつ落下したのかは弾道で落ちていくことからの推定になり、現時点で明確な時間は把握していない。機体を破壊していて、フィリピン沖の深い海に落下しているということもあり機体の回収は基本的に考えていない」と説明しました。
今後の宇宙開発への影響について「予断差し控えたい」
山川理事長は「打ち上げ実施機関の長として責任を重く受け止めているが、まずは原因究明に尽力し、ロケットの信頼性を回復させたい。影響については政府などで議論されると思われ予断は差し控えたい」と述べました。
JAXA理事 “試験機での衛星打ち上げはこれまでも実施”
文部科学省の原克彦大臣官房審議官は、「H3」に搭載されていた衛星の「だいち3号」について「再開発の要否も含めて今後の衛星開発については関係機関や民間企業と対応を進めながら検討することが必要だと考えている。『だいち3号』の次の衛星についてもロケット側の失敗の原因分析を踏まえ、今後の打ち上げスケジュールについては検討していく必要がある」と述べました。
また「H3」の試験機に衛星を搭載したことについて、布野理事は「これまでも『H2B』の試験機では宇宙輸送船の『こうのとり』を打ち上げている。ロケットの開発においては万全を期して効率的な打ち上げを実施するという意味でも試験機で衛星を打ち上げるということはこれまでも実施してきている。『H3』でも万全な開発を行ってきたが、このような結果になって申し訳なく思っている」と説明しました。
また「H3」の試験機に衛星を搭載したことについて、布野理事は「これまでも『H2B』の試験機では宇宙輸送船の『こうのとり』を打ち上げている。ロケットの開発においては万全を期して効率的な打ち上げを実施するという意味でも試験機で衛星を打ち上げるということはこれまでも実施してきている。『H3』でも万全な開発を行ってきたが、このような結果になって申し訳なく思っている」と説明しました。
JAXA理事「まずは1号機の原因究明を早急に」
布野理事は今後の打ち上げのスケジュールへの影響について聞かれ「まずは1号機の原因究明を早急に行うとともに次の打ち上げへの道筋をつけるのが喫緊の課題と認識している。その過程の中で2号機以降の計画をどう立て直すかあわせて検討したい」と述べました。
JAXA理事長「原因究明と対策についてできるだけ透明性示す」
国際競争力の確保を目標にしてきたH3ロケットの打ち上げが失敗したことについて山川理事長は「失敗への対策をすることでさらに時間やコスト面でも負荷がかかることになるが、価格だけでなく信頼性や使い勝手など、総合的な観点で国際競争力を確保していくことが課題だと考えている。原因究明と対策についてできるだけ透明性をもって示していくことが、特に海外のユーザーから信頼性を確保するために必要だ」と話していました。
国の宇宙開発基本計画へは「なんらかの影響があるとは想像」
今回の失敗が国の宇宙開発基本計画に与える影響について、原大臣官房審議官は「なんらかの影響があるとは想像するが、今回の原因の究明を踏まえてどの程度の影響があるのか検討する必要があり、関係機関と相談しながら分析していく」と述べました。
今後のH2Aロケットの打ち上げへの影響については
布野理事は「H3の第2段エンジンはH2Aの第2段エンジンをベースに一部改良していて酸素と水素を燃焼させるという基本的なところは同様だが電気的なネットワークは同様ではない」と述べ、H2Aの打ち上げにただちに影響することはないと説明した上で「早急に原因を究明し、影響の有無を検討する」と述べました。
H3開発責任者“エンジンの受け側の搭載装置を見ていく必要あり”
H3の開発責任者で、JAXAの岡田匡史プロジェクトマネージャは今回の打ち上げ失敗について「このような結果になり申し訳ないと思っている。まずはきょうの失敗の原因を究明して、はやくH3が飛び立つ姿を見てもらいたいと思っている」と述べました。また原因については「まだデータをくまなく見ているわけではないので原因はわからない。ロケット本体の電子搭載機器からエンジンの受け側の搭載装置をつぶさに見ていく必要があると考えている」と話していました。
今後の原因調査について
岡田プロジェクトマネージャは「発射管制棟の中にいたエンジニアが議論しているところだがまだ『あれ』という部分はなく見当がつかない。エンジンが点火の指令を受けたが点火しなかったのか、指令そのものが出なかったのか、このあたりの識別ができていない」と述べました。
JAXAによりますと、2段目のエンジンは「H2A」の改良型で、ロケット側にある点火の信号を送る機器などに違いはあるものの、エンジン側の機器は基本的に同じ設計だということです。
岡田マネージャは「H2Aから使い続けてきた技術の中で問題が起きていれば首をかしげるところだが、刷新したところもふくめて網をかけて分析していく。機体とエンジンでどういう信号のやりとりがありどこが応答しているのか、かなりのデータがロケットから送信されているので、それを順々に見ていくことでどこで異常のきっかけが出たかなどを見ていきながら関連づけをしていきたい」と話していました。
JAXAによりますと、2段目のエンジンは「H2A」の改良型で、ロケット側にある点火の信号を送る機器などに違いはあるものの、エンジン側の機器は基本的に同じ設計だということです。
岡田マネージャは「H2Aから使い続けてきた技術の中で問題が起きていれば首をかしげるところだが、刷新したところもふくめて網をかけて分析していく。機体とエンジンでどういう信号のやりとりがありどこが応答しているのか、かなりのデータがロケットから送信されているので、それを順々に見ていくことでどこで異常のきっかけが出たかなどを見ていきながら関連づけをしていきたい」と話していました。
17:20すぎ 記者会見終了
3時間ほどにわたって行われたJAXAの記者会見は午後5時20分すぎに終了しました。
◇指令破壊までの時系列◇
【発射6秒ほど前】=10:37
ロケットのメインエンジンが燃焼し始め、メインエンジンと補助ロケットで上昇しました。
【発射の1分56秒後】
「SRB-3」と呼ばれる補助ロケットが分離される計画となっていて、地上からのカメラでも補助ロケットが分離されたとみられる様子が確認されました。この時点で、JAXAのアナウンスでは第1段エンジンは正常でロケットは順調に飛行しているとされていました。
【発射の約3分30秒後】
ロケット最上部の「フェアリング」と呼ばれる人工衛星を覆うカバーが計画通りに外れたというアナウンスがありました。
【発射の約5分後】=10:43ごろ
予定どおりメインエンジンの燃焼が停止したとアナウンスがありました。計画ではこの時点で高度258キロに達しています。その数秒後にロケットの第1段が切り離されたとアナウンスがありました。
【発射の約8分30秒後】=10:46ごろ
JAXAから、予定されていた第2段のエンジンの点火が確認されていないとアナウンスがありました。
【発射の約15分後】=10:52ごろ
ミッションを達成する見込みがないとして地上からの指令でロケットを爆破する「指令破壊」の信号を送ったというアナウンスが流れました。
本来の計画では発射から5分15秒後に第2段のエンジンが点火され、およそ11分間、燃焼したあと、燃焼を停止して人工衛星「だいち3号」を分離することになっていました。
ロケットのメインエンジンが燃焼し始め、メインエンジンと補助ロケットで上昇しました。
【発射の1分56秒後】
「SRB-3」と呼ばれる補助ロケットが分離される計画となっていて、地上からのカメラでも補助ロケットが分離されたとみられる様子が確認されました。この時点で、JAXAのアナウンスでは第1段エンジンは正常でロケットは順調に飛行しているとされていました。
【発射の約3分30秒後】
ロケット最上部の「フェアリング」と呼ばれる人工衛星を覆うカバーが計画通りに外れたというアナウンスがありました。
【発射の約5分後】=10:43ごろ
予定どおりメインエンジンの燃焼が停止したとアナウンスがありました。計画ではこの時点で高度258キロに達しています。その数秒後にロケットの第1段が切り離されたとアナウンスがありました。
【発射の約8分30秒後】=10:46ごろ
JAXAから、予定されていた第2段のエンジンの点火が確認されていないとアナウンスがありました。
【発射の約15分後】=10:52ごろ
ミッションを達成する見込みがないとして地上からの指令でロケットを爆破する「指令破壊」の信号を送ったというアナウンスが流れました。
本来の計画では発射から5分15秒後に第2段のエンジンが点火され、およそ11分間、燃焼したあと、燃焼を停止して人工衛星「だいち3号」を分離することになっていました。
岸田首相「次の挑戦に期待」
岸田総理大臣はみずからのツイッターに「非常に残念ですが、これで終わりではありません。成功は数多くの失敗の積み重ねのもとにあります。関係者のみなさんのご努力に敬意を表し、次の挑戦に期待します」などと投稿しました。
官房長官「引き続き打ち上げの成功に向け取り組む必要がある」
松野官房長官は午後の記者会見で「打ち上げが失敗となったことは大変遺憾だ」と述べました。その上で「H3ロケットは、わが国の宇宙活動の自立性確保と国際競争力強化のために重要な新たな基幹ロケットであり、引き続き打ち上げの成功に向け取り組む必要がある。失敗を重く受け止めて原因究明を早急に進め、必要な対策を講じていきたい」と述べました。
永岡文科相 “イプシロンに続きH3打ち上げ失敗は大変遺憾”
永岡文部科学大臣はコメントを発表し「H3ロケットの打ち上げが失敗となったことは、大変遺憾であり、国民や関係者の皆さまの期待にそえないことを申し訳なく思う。文部科学省として、早急に原因を究明し、対策を立て、H3ロケットに対する期待に応えられるよう、関係機関と連携しつつ全力でスピード感を持ち対応していく」としています。そして「文部科学省に対策本部を設置し、JAXA=宇宙航空研究開発機構とともに専門的な見地からの早急かつ徹底した原因究明を行うよう指示した」としています。
また永岡大臣は、参議院文教科学委員会で「宇宙分野はフロンティアとしてのみならず、新たな産業創出や安全保障の観点からも重要だ。『イプシロン』ロケット6号機に続いて『H3』ロケット初号機の打ち上げが失敗となったことは大変遺憾だ。宇宙開発、利用の進展を止めないよう、速やかな原因究明に全力で取り組む」と述べました。
また永岡大臣は、参議院文教科学委員会で「宇宙分野はフロンティアとしてのみならず、新たな産業創出や安全保障の観点からも重要だ。『イプシロン』ロケット6号機に続いて『H3』ロケット初号機の打ち上げが失敗となったことは大変遺憾だ。宇宙開発、利用の進展を止めないよう、速やかな原因究明に全力で取り組む」と述べました。
高市科学技術相 “今回の失敗を真摯に受け止め対策講じていく”
宇宙政策を担当する高市科学技術担当大臣はコメントを発表し「打ち上げが失敗に終わったことを非常に残念に思う。今回の失敗を真摯に受け止めつつ、国民の期待に応えられるよう、早急に原因を究明し、対策を講じていく」としています。その上で「H3ロケットは、宇宙活動の自立性確保と国際競争力強化のために重要な新たな基幹ロケットだ。引き続き、打ち上げの成功に向け、全力で取り組んでいく」としています。
衛星には防衛省開発のセンサーも搭載「影響を確認し適切に対応」
「H3」で打ち上げられる予定だった地球観測衛星「だいち3号」には、防衛省が開発した異なる2つの赤外線の波長を同時に検出しより高い識別が可能とされる「2波長赤外線センサー」が搭載されていました。
防衛省の青木健至報道官は記者会見で「防衛省としてどのような影響があるのか、これからしっかりと確認して適切に対応していきたい」と述べました。
防衛省の青木健至報道官は記者会見で「防衛省としてどのような影響があるのか、これからしっかりと確認して適切に対応していきたい」と述べました。
種子島の公園で発射を見守った人たちは
南種子町の長谷公園では、午前10時37分に打ち上げられると、訪れた人たちが歓声を上げたり拍手をしたりしながらロケットの軌道を追っていました。しかし、その後、場内アナウンスで指令破壊の信号が送られ、打ち上げが失敗したことが伝えられると、落胆した表情を浮かべながら帰り支度をしていました。
東京都から家族で訪れた30代の男性は「改めてロケットの打ち上げは厳しいものなのだと思いました。失敗と言われてしまうかもしれませんがいい経験値になると思うので、これからも応援しています」と話していました。
東京都から家族で訪れた30代の男性は「改めてロケットの打ち上げは厳しいものなのだと思いました。失敗と言われてしまうかもしれませんがいい経験値になると思うので、これからも応援しています」と話していました。
◇H3に関わった全国各地の人たちは◇
OKIサーキットテクノロジー(山形 鶴岡)
この会社では「プリント配線板」と呼ばれる、電子機器を正常に動かすための部品を製造しています。今回「H3」に搭載されたおよそ100種類のプリント配線板の多くをおよそ7年前から開発しています。
社内の休憩室でおよそ50人がインターネット上で打ち上げの様子を見守り、ロケットが打ち上げられた瞬間、歓喜にわきました。しかし数分後「2段目のエンジンの点火が確認されていない」というアナウンスが流れ、ロケットを爆破する信号が送られたことがわかると集まった社員たちは肩を落としていました。
開発を担当した社員の富樫康久さんは「残念だ。打ち上げる前なら修正もできただろうが、打ち上げたあとでは原因が特定できるのかわからない。次がいつになるかわからないがまた挑戦してもらいたいし、関わっていきたい」と話していました。
社内の休憩室でおよそ50人がインターネット上で打ち上げの様子を見守り、ロケットが打ち上げられた瞬間、歓喜にわきました。しかし数分後「2段目のエンジンの点火が確認されていない」というアナウンスが流れ、ロケットを爆破する信号が送られたことがわかると集まった社員たちは肩を落としていました。
開発を担当した社員の富樫康久さんは「残念だ。打ち上げる前なら修正もできただろうが、打ち上げたあとでは原因が特定できるのかわからない。次がいつになるかわからないがまた挑戦してもらいたいし、関わっていきたい」と話していました。
長岡工業高等専門学校(新潟 長岡)
この学校の卒業生などは、アナログ式の温度計などの数値をデータ化して送ることができるAI=人工知能を搭載したカメラを開発し、種子島宇宙センターにある「H3」の燃料格納庫の温度や湿度の遠隔監視にも使われています。
学校では先月「H3」の打ち上げが中止されたときに続き、学生たちが打ち上げの様子をインターネットの中継で見守りました。打ち上げ時刻になり上昇していくと、学生たちから歓声が上がりましたが、その後、打ち上げの失敗を伝えるアナウンスが流れると落胆した表情を浮かべていました。
学校では先月「H3」の打ち上げが中止されたときに続き、学生たちが打ち上げの様子をインターネットの中継で見守りました。打ち上げ時刻になり上昇していくと、学生たちから歓声が上がりましたが、その後、打ち上げの失敗を伝えるアナウンスが流れると落胆した表情を浮かべていました。
打ち上げを見守った学生は「非常に残念な気持ちでことばが出ません。一筋縄ではいかない難しさを感じました」と話していました。長岡工専の矢野昌平教授は「まだ信じられない気持ちで残念です。宇宙産業に技術を採択してもらいましたが、簡単なものではないと改めて思いました」と話していました。
◇2段目のエンジン「LE-5B-3」は新開発エンジン◇
「H3」は、打ち上げ速度を上げるため1段目のエンジンの燃焼後、切り離してから2段目のエンジンを燃焼させます。この「H3」の第2段エンジンは「LE-5B-3」と呼ばれ、全長およそ2.8メートル、重さはおよそ300キロです。現在の主力ロケット「H2A」の第2段エンジンも液体水素と液体酸素を使って燃焼しますがより低燃費で燃焼時間を長くすることを目指し新たに開発されました。
燃焼はこれまでと同様に複数回可能で、今回の計画では、打ち上げから5分15秒後におよそ11分間燃焼したあと、衛星の分離後に再び燃焼し、安全な海域に落下する計画でした。
燃焼はこれまでと同様に複数回可能で、今回の計画では、打ち上げから5分15秒後におよそ11分間燃焼したあと、衛星の分離後に再び燃焼し、安全な海域に落下する計画でした。
難航極めたメインエンジン開発
【2度の打ち上げ延期】
「H3」の初号機の打ち上げは当初、2020年度の計画でしたが、開発が難航し、年度をまたぐ延期を2度、余儀なくされました。延期の原因は、ロケット開発の最大の難所で、「魔物が潜む」とも言われるメインエンジンの開発でした。
【「LE-9」とは】
「H3」は、パワー増強とコストダウンの目標とともにこれまで築いてきた打ち上げへの高い信頼性の維持が掲げられました。その重要な鍵となるのが、新型のメインエンジン「LE-9」です。従来のメインエンジンと大きく異なるのが、燃料を送り込む装置「ターボポンプ」の駆動方法。これまでは、「ターボポンプ」を動かすための強力なガスを生み出す「副燃焼室」がありましたが、「LE-9」では構造をシンプルにするため、「副燃焼室」をなくしました。これによって部品の数を3分の1程度に減らすことで「コストダウン」につなげるのがねらいでした。
【壁となった「振動問題」】
しかし、「ターボポンプ」を強力に動かすために内部を大きくしたことなどから装置の一部に負荷がかかり、2020年5月に実施したエンジン燃焼試験で、特殊な振動が生じた影響で部品にヒビが入る問題が浮上。JAXA=宇宙航空研究開発機構は2020年9月、初号機の打ち上げを翌年度に延期すると発表しました。その後、ターボポンプを改良するなどして特殊な振動による影響は改善されましたが、おととし10月のエンジンの燃焼試験で、またしても装置の一部で特殊な振動が確認されます。このため去年1月、JAXAは2度目となる打ち上げ延期を発表しました。
【「日々是燃焼」の精神で】
開発チームは、「ターボポンプ」の製造に数か月かかることなどを考慮し、異なる対策を施した「ターボポンプ」を5種類製造し去年3月以降、燃焼実験を次々に実施して検証。去年11月に実施した最終段階の試験をクリアし、打ち上げにこぎ着けていました。
「H3」の初号機の打ち上げは当初、2020年度の計画でしたが、開発が難航し、年度をまたぐ延期を2度、余儀なくされました。延期の原因は、ロケット開発の最大の難所で、「魔物が潜む」とも言われるメインエンジンの開発でした。
【「LE-9」とは】
「H3」は、パワー増強とコストダウンの目標とともにこれまで築いてきた打ち上げへの高い信頼性の維持が掲げられました。その重要な鍵となるのが、新型のメインエンジン「LE-9」です。従来のメインエンジンと大きく異なるのが、燃料を送り込む装置「ターボポンプ」の駆動方法。これまでは、「ターボポンプ」を動かすための強力なガスを生み出す「副燃焼室」がありましたが、「LE-9」では構造をシンプルにするため、「副燃焼室」をなくしました。これによって部品の数を3分の1程度に減らすことで「コストダウン」につなげるのがねらいでした。
【壁となった「振動問題」】
しかし、「ターボポンプ」を強力に動かすために内部を大きくしたことなどから装置の一部に負荷がかかり、2020年5月に実施したエンジン燃焼試験で、特殊な振動が生じた影響で部品にヒビが入る問題が浮上。JAXA=宇宙航空研究開発機構は2020年9月、初号機の打ち上げを翌年度に延期すると発表しました。その後、ターボポンプを改良するなどして特殊な振動による影響は改善されましたが、おととし10月のエンジンの燃焼試験で、またしても装置の一部で特殊な振動が確認されます。このため去年1月、JAXAは2度目となる打ち上げ延期を発表しました。
【「日々是燃焼」の精神で】
開発チームは、「ターボポンプ」の製造に数か月かかることなどを考慮し、異なる対策を施した「ターボポンプ」を5種類製造し去年3月以降、燃焼実験を次々に実施して検証。去年11月に実施した最終段階の試験をクリアし、打ち上げにこぎ着けていました。
過去の「指令破壊」
「指令破壊」とは、ロケットが、打ち上げたあと計画していた飛行ルートから外れ地上に被害を与えるおそれがある場合、安全を確保するために地上から信号を送り、ロケットに積んである火薬を起爆させて機体を破壊し、飛行を中断させることを指します。
【イプシロン6号機】
去年10月に計画された日本の小型ロケット「イプシロン」6号機の打ち上げが失敗した際も「指令破壊」が行われました。この原因について、JAXAは、ロケットの向きを制御する装置に燃料を送り込む配管がふさがったため、十分に作動しなかった可能性が高いとみて分析を進めています。
【H2A 6号機】
またH2Aロケットでは2003年11月、6号機が発射後に、2本の補助ロケットのうち1本を切り離すことができず、予定の飛行ルートから外れたため「指令破壊」されました。
【イプシロン6号機】
去年10月に計画された日本の小型ロケット「イプシロン」6号機の打ち上げが失敗した際も「指令破壊」が行われました。この原因について、JAXAは、ロケットの向きを制御する装置に燃料を送り込む配管がふさがったため、十分に作動しなかった可能性が高いとみて分析を進めています。
【H2A 6号機】
またH2Aロケットでは2003年11月、6号機が発射後に、2本の補助ロケットのうち1本を切り離すことができず、予定の飛行ルートから外れたため「指令破壊」されました。
ロケットの打ち上げ 国際的な競争が加速
内閣府によりますと、人工衛星などの打ち上げ需要が高まる中、去年1年間にロケットの打ち上げに成功した回数は世界で177回にのぼり、データがある2013年の77回と比べて2倍以上に増えています。
このうち、実績を大きく伸ばしているのがアメリカと中国です。去年、アメリカは83回、中国は62回、打ち上げに成功していて、前の年と比べて、アメリカは35回、中国は9回増えました。
その背景について内閣府は、両国を中心に進む宇宙利用の拡大のほか、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を続ける中、ロシアに人工衛星の打ち上げを発注できなくなり、代わりにアメリカで受注が増えたことが、要因だとしています。
特にアメリカは、コスト面で競争力を強めています。複数の民間企業がロケット開発に取り組んでいて、去年、アメリカで打ち上げに成功したロケットの90%は、イーロン・マスク氏が率いる「スペースX」や新興企業によるものだということです。中でも「スペースX」は、再使用型のロケットによって打ち上げ費用を低く抑えているとしていて同社の「ファルコン9」の費用は6700万ドル、日本円でおよそ91億円となっています。これに対し、これまでの日本の主力ロケット「H2A」は打ち上げ1回あたり、およそ100億円かかります。
一方、中国政府は、2030年までに世界の宇宙開発をリードする「宇宙強国」を目指すという目標を掲げ去年には独自の宇宙ステーションも完成させました。中国メディアによりますとことしは宇宙ステーションの運営などのために70回近いロケットの打ち上げを予定しているということで国際的な競争が加速しています。
このうち、実績を大きく伸ばしているのがアメリカと中国です。去年、アメリカは83回、中国は62回、打ち上げに成功していて、前の年と比べて、アメリカは35回、中国は9回増えました。
その背景について内閣府は、両国を中心に進む宇宙利用の拡大のほか、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を続ける中、ロシアに人工衛星の打ち上げを発注できなくなり、代わりにアメリカで受注が増えたことが、要因だとしています。
特にアメリカは、コスト面で競争力を強めています。複数の民間企業がロケット開発に取り組んでいて、去年、アメリカで打ち上げに成功したロケットの90%は、イーロン・マスク氏が率いる「スペースX」や新興企業によるものだということです。中でも「スペースX」は、再使用型のロケットによって打ち上げ費用を低く抑えているとしていて同社の「ファルコン9」の費用は6700万ドル、日本円でおよそ91億円となっています。これに対し、これまでの日本の主力ロケット「H2A」は打ち上げ1回あたり、およそ100億円かかります。
一方、中国政府は、2030年までに世界の宇宙開発をリードする「宇宙強国」を目指すという目標を掲げ去年には独自の宇宙ステーションも完成させました。中国メディアによりますとことしは宇宙ステーションの運営などのために70回近いロケットの打ち上げを予定しているということで国際的な競争が加速しています。