その結果、先月までにピラミッドの北側の斜面から中央部に向かって延びる通路のような形の、縦横2メートル、奥行き9メートルの空間があることが、確認されました。
ピラミッドの内部で新たな空間が確認されたのは、186年ぶりとされています。
エジプト 世界最大のピラミッド 186年ぶりに未知の空間を確認
エジプトを代表する考古学者が会見で「今世紀最大の発見だ」とその意義を強調しました。
世界最大のエジプトのクフ王のピラミッドの内部に、これまで知られていなかった空間があることが、186年ぶりに名古屋大学などが参加する国際調査チームによって確認され、いまだ多く残るピラミッドの謎の解明につながることが期待されます。
およそ4500年前に造られたとされるクフ王のピラミッドでは、内部構造を解き明かそうと、8年前の2015年からエジプトと日本、フランス、ドイツなどの国際調査チームが最新の技術を用いて調査を進めてきました。
調査にあたっては、宇宙から降り注ぐ「ミューオン」と呼ばれる素粒子の量から物質の質量を計測する、名古屋大学と高エネルギー加速器研究機構の技術が使われ、スコープを使った撮影にはNHKも協力しました。
ピラミッドがあるカイロ近郊のギザで2日行われた記者会見には、エジプトのイーサ観光・考古相や国際調査チームに参加した名古屋大学の森島邦博准教授など関係者が参加しました。
調査チームでは6年前(2017年)に同じ技術を用いて、ピラミッド内部に今回見つかったのとは別の巨大な空間が存在するという解析データも得ていて、今後さらに新しい発見につながる可能性も期待されます。
エジプトを代表する考古学者「今世紀最大の発見だ」
クフ王のピラミッドの前で2日、行われた記者会見には、世界各国の報道関係者が集まりました。
会見でエジプトのイーサ観光・考古相は「世界を魅了するこの場所で、国際的な調査チームがピラミッドの北側に、奥行き9メートルの通路を発見した」と述べました。
会見でエジプトのイーサ観光・考古相は「世界を魅了するこの場所で、国際的な調査チームがピラミッドの北側に、奥行き9メートルの通路を発見した」と述べました。
また、エジプトを代表する考古学者のザヒ・ハワス氏は、「この通路は今世紀最大の発見だ。調査を進めてくれたすべての人々に感謝したい。私はこの通路の下に何かが隠されていると信じていて、数か月後にはその結果もわかるだろう。今回の発見はピラミッドのさらなる秘密の解明につながるだろう」と話し、今回の発見の意義を強調しました。
森島准教授「建造過程や空間のもつ意味などの解明にもつながる」
クフ王のピラミッドの国際調査チームに参加した名古屋大学の森島邦博 准教授は「今回の発見で最も興味深いのはファイバースコープを使って内部を確認することができたことだ。通路は当時の様子をとどめていて、なかの構造まではっきりと確認することができた。通路は構造的にも何らかの意図をもって人工的に造られていて、非常に驚いた。この発見は今後、ピラミッドの建造過程や空間のもつ意味などの解明にもつながる発見だ」と話していました。
考古学者「ピラミッド研究の歴史に残る発見」
考古学者でピラミッドの構造に詳しい名古屋大学高等研究院の河江肖剰准教授は「クフ王のピラミッドの内部で新たな空間が見つかったのはおよそ200年ぶりのことでピラミッド研究の歴史に残る発見だ。新たな技術を使ったという点でも重要だ」と今回の発見を評価しました。
新たに見つかった空間については「ピラミッドの入り口付近にあることや中にも何もない状態であることが不思議で目的はわからない」としました。
そして、「見つかった空間の下にある入り口を構造的に守るための役割を果たしているか、もしくは儀式の中で使われていたが、最終的にふさがれたということが考えられるのではないか」と指摘しました。
新たに見つかった空間については「ピラミッドの入り口付近にあることや中にも何もない状態であることが不思議で目的はわからない」としました。
そして、「見つかった空間の下にある入り口を構造的に守るための役割を果たしているか、もしくは儀式の中で使われていたが、最終的にふさがれたということが考えられるのではないか」と指摘しました。
さらに、ミューオンによる調査でほかにも長さ30メートル以上の巨大な空間が見つかっていることについて「これまでの研究からはにわかに信じられないような空間だったが、今回の成果で、こちらの空間も間違いなく存在するということが分かった。さらにギザのほかのピラミッドから新たな空間が見つかる可能性もあるのではないか」と話していました。
ミューオンによる調査とは
ミューオンによる調査は巨大な建物などを損傷せずに内部を調べることができる新たな調査方法として注目されています。
「ミューオン」とは宇宙を飛び交う「宇宙線」と呼ばれる粒子が大気と衝突してできる「素粒子」の1つで、ふだんから地上には大量のミューオンが降り注いでいます。
非常に小さいため、さまざまな物質を通り抜けていきますが、岩など密度が高い物質では通り抜けてくる粒子の数が少なくなる性質があります。
非常に小さいため、さまざまな物質を通り抜けていきますが、岩など密度が高い物質では通り抜けてくる粒子の数が少なくなる性質があります。
この性質を利用し、建物などを通り抜けてくるミューオンの量の違いを解析することでレントゲン写真のように内部の構造を透視することができます。
ミューオンを使った調査は、これまでも火山のマグマの位置を調べたり、東京電力福島第一原子力発電所で原子炉の内部を調べたりする際に活用されてきました。
ミューオンを使った調査は、これまでも火山のマグマの位置を調べたり、東京電力福島第一原子力発電所で原子炉の内部を調べたりする際に活用されてきました。