卵の値上がり いつまで続く? 背景に1400万羽の殺処分

「常にないと困るのに…」

卵の値上がりが止まりません。卸売価格は1993年以降、最も高く、去年2月の平均価格の2倍近くになっています。(今月16日時点)

今いくら?背景は?いつまで続くの?
そんな疑問をまとめました。

Mサイズ10個入りが

卵の販売状況を取材しようと、15日、東京・墨田区のスーパーに足を運びました。
この日、卵コーナーで販売されていたMサイズ10個パックの店頭価格は338円(税抜き)。店によると、去年12月と比べて50円ほど値上げし、Mサイズの販売個数は通常の半分ほどになっているということです。
買い物客に声をかけて、影響を聞いてみました。

2人の子どもがいる40代の女性
「卵はメインの食材以外にも揚げ物など、見えないところでたくさん使うもので、常にないと困ります。ほかの食材に替えることもできないので、家に残っていても特売の日にまとめて買うようにしています」

暖かくなるのを待つしかない?

スーパーイズミ 五味衛社長
「ここまで高値になるのは初めてで、特売もできず売れ行きは通常の半分くらいになっています。暖かくなり、鳥インフルエンザが落ち着いて出荷量が戻るのを待つしかないです」

1478万羽が殺処分 過去最多に

かつてない卵の値上がり。その背景の1つが鳥インフルエンザによってニワトリの殺処分が急増していることです。

農林水産省によりますと、鳥インフルエンザが猛威を振るい始めた去年10月以降の今シーズン、処分されたニワトリなどの数は、すでに合わせておよそ1478万羽。
2020年の秋から2021年の春にかけてのシーズンに記録したおよそ987万羽を大きく上回って、過去最多となっています。

卸売価格 この30年で最高値に

販売会社大手の「JA全農たまご」によりますと、卵の卸売価格の目安とされている東京地区のMサイズ1キロあたりの価格は16日に335円となりました。
これは統計が公表されている1993年以降、最も高く、175円だった去年2月の平均価格の2倍近く、先月の平均価格と比べても55円高くなっています。

ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響などで、ニワトリのエサとなるとうもろこしなどの価格が高騰していることも背景にあるとみられています。

卵を使わないわけにはいかない

卵を使う飲食店にとって影響は深刻です。

訪ねたのは東京・大田区の洋菓子店。この時期、ケーキなどの材料として生卵を週におよそ80キロ、仕入れ先の業者から購入しています。
卵の価格は去年の秋ごろまでは1キロあたり250円ほどでしたが、去年12月ごろから上がり始め、14日時点では364円と100円以上も値上がりしたということです。

店では去年の秋ごろに小麦や油などの値上がりを受けて、一部の商品について5円から30円ほど値上げしたばかりでしたが、卵の価格の高騰を受けて、さらなる値上げを検討しているということです。
洋菓子店経営 森下令治さん
「卵を使わないわけにはいかないので、言われた値段で買うしかありません。客は今でもケーキなどを買い控えているので値上げはしたくないですが材料費が上がった分は値上げせざるを得ない状況です」
さらにレストランやコンビニエンスストアなどで卵を使った商品の販売を休止する動きが出ているほか、食品の値上げにもつながっています。

鳥インフルの猛威 春ごろまで警戒

鳥インフルエンザは日本で越冬する渡り鳥によってウイルスが持ち込まれるとされ、例年、秋から春ごろにかけて発生します。

今シーズンは去年10月に岡山県倉敷市と北海道厚真町で、これまでで最も早い時期に確認されたあと、過去にないペースで発生が相次いでいます。また、これまでに発生がなかった山形県や沖縄県など6つの県でも確認され、全国どこでも発生するリスクが高まっているとしています。

鳥インフルエンザの感染拡大は春ごろまで引き続き警戒が必要です。大量のニワトリが殺処分される中、ヒナからニワトリを育てて、卵の供給体制をもとに戻すまでには一定の時間がかかるとみられ、今後の価格の推移は不透明な状況です。