世相を反映「今年の一皿」に「冷凍グルメ」

ことしの世相を反映する象徴的な食を選ぶ「今年の一皿」に「冷凍グルメ」が選ばれました。
コロナ禍を背景に飲食店が店のメニューを冷凍食品として販売する動きが広がり、消費者の支持を得たことが理由です。

「今年の一皿」に「冷凍グルメ」

「今年の一皿」は食に関する情報の調査会社がインターネット上の検索数や消費者へのアンケートなどをもとに毎年、この時期に発表しています。

ことしは「ガチ中華」、「乳酸菌飲料」、植物由来の原材料を使った「プラントベースフード」、それに「冷凍グルメ」が候補となり、選考の結果、「冷凍グルメ」が選ばれました。

「冷凍グルメ」は冷凍食品の中でも特に、飲食店が開発から販売まで手がけた商品です。
「冷凍グルメ」が選ばれた理由について、コロナ禍を背景に飲食店の間で急速冷凍機を導入する動きが加速し、店のメニューをそのまま再現した冷凍食品が生まれたことを挙げています。

さらに飲食店でオリジナル商品の開発が進んで種類が豊富になり、店頭や自動販売機など購入方法も多様化したことで消費者からの支持を得たこと、そして保存のしやすさや食品ロス削減の観点からも社会の変化への柔軟性が高く、より一層、不可欠な存在になると考えられることを理由にしています。
ぐるなび総研の市川萌乃さんは「コロナ禍の行動制限の影響もあり、自宅でおいしい料理を味わいたいというニーズが高まっている。また、冷凍グルメをきっかけに、実際の店で同じ料理を食べてみたいという人も多く、コロナ後の外食産業にとっても良い効果が期待される」と話しています。

冷凍食品への消費者ニーズ高まる

冷凍グルメの普及が進む背景には、冷凍食品への消費者ニーズの高まりがあります。
総務省の家計調査によりますと、2人以上の世帯が「冷凍調理食品」に1年間に支出した金額は、去年が平均で9441円と、この20年でおよそ2倍になりました。

特に新型コロナの感染拡大前の2019年と比べると、わずか2年で1624円、率にして20%あまりの大幅な伸びとなっています。
日本冷凍食品協会は、共働き世帯や単身世帯が増える傾向にある中、調理の手間が少なく、時間の節約にもなる冷凍食品の需要が高まっているところにコロナ禍で自宅で食事をする機会が増えたことで、一段と市場が拡大したと分析しています。

また、飲食店の側でもコロナ禍で新たな販路を模索する中、できたてのメニューをそのまま急速冷凍することで、解凍後も風味や食感が損なわれずに販売できるよう取り組みを進めた結果、次々と新たな冷凍グルメが商品化されていきました。
品ぞろえが年々豊富になる中で、最近ではデパートやスーパーでも冷凍食品の売り場を拡大する動きが広がっているほか、店頭以外でも、冷凍食品の自動販売機が異例の大ヒットとなるなど、消費者がより身近で冷凍グルメを買えるようになったことも、支持の拡大につながりました。

ノミネートされたのは

今回は「今年の一皿」の候補として、「冷凍グルメ」を含めて4つの食べ物や飲み物がノミネートされました。

【ガチ中華】

「ガチ中華」は日本人の好みに寄せていない、中国各地の大衆に根ざした料理です。

コロナ禍で海外旅行が制限される中、日本にいる中国人向けに本場の中国料理を提供する飲食店が、現地の味や雰囲気を求める日本人のニーズとも合致し、話題になりました。

【乳酸菌飲料】

「乳酸菌飲料」は、乳酸菌や酵母で発酵させた乳製品などを加工したり、主な原料としたりする飲料です。

これまでの整腸作用などへのニーズに加え、最近では「睡眠の質の改善」や「ストレス緩和」といったキーワードが注目され、さまざまな企業が効果をうたった商品を提供。

SNS上でも話題になりました。

【プラントベースフード】

「プラントベースフード」は植物由来の原材料を使用した食品です。

食の好みが多様化する中、肉や魚などの代替食材として商品の種類が広がり、飲食店でも提供されるようになっています。

肉の生産などと比べ、環境負荷の軽減につながる食品としても注目を集めています。