介護事業者の中にはITを活用した業務の効率化によるコスト削減を進める動きが出ています。
都内などで30か所のデイサービス施設を運営する会社では、介護が必要な高齢者などすべての施設をあわせると1日平均でおよそ700人が利用しています。
円安や原材料価格の高騰による運営コストの上昇が続いていて施設の経営状況は厳しくなっているといいます。
ことし9月の電気代・ガス代の光熱費に水道代を含めた経費は施設全体でみると去年の同じ月と比べておよそ30%増えました。
さらに
▼利用者の送迎に必要なガソリン代を含めた車両費はおよそ10%、▼相次ぐ食料品の値上げで施設で利用者に提供する食事の材料費は10%から15%ほど、去年の同じ月より上がっています。
このため、運営会社ではITを活用して、業務を効率化することでコスト削減に取り組んでいます。
具体的には、▼利用者の体温などのデータは自動で管理して記入の手間と時間を省いたり、▼利用者の住所を入力すると効率よく回れる送迎ルートを表示するシステムを利用したりして、ガソリン代の節約や残業時間の削減につなげています。
「ベストリハ」の山本健太取締役は、「介護事業所は地域のインフラでこれから高齢者が増えていく中で、減ってはいけないと思っている。ITを活用して生産性を上げることで、今の状況をなんとか乗り切りたい」と話していました。
介護事業者の倒産 過去最多ペース コロナで利用控えや物価高も
ことし1月から9月までの介護事業者の倒産は100件と去年の同じ時期の倍近くに上り、過去最多のペースとなっています。分析した信用調査会社は「コロナによる介護サービスの利用控えや物価の値上がりなどの影響で経営不振が続く事業者を中心にさらに相次ぐおそれがある」としています。
東京商工リサーチによりますと、ことし1月から9月までに倒産した介護事業者は全国であわせて100件に上り、去年の同じ時期の51件から倍近くに増えました。
調査を始めた2000年以降、9月までに倒産が100件に達したのは初めてで、その後10月も倒産した事業者は相次ぎ、年間118件に上った2020年を上回るペースだということです。
内訳は、
▽デイサービスなどの「通所・短期入所」が45件と最も多く、
▽「訪問介護」が36件、
▽「有料老人ホーム」が10件と
いずれも前の年の同じ時期よりも増えています。
倒産の要因としては、
▼ヘルパーなどの人材不足や
▼感染が拡大した時期の介護サービスの利用控えによる減収、
▼コロナ関連の国や自治体などからの事業者への支援が減ったことに加え
▼食材などの物価や光熱費、燃料費の高騰などが考えられるとしています。
東京商工リサーチは「原油高や円安でコストが大幅に増える一方で、介護事業は価格転嫁が難しいケースも多く、経営不振が続く小規模事業者を中心に倒産がさらに相次ぐおそれがある」と指摘しています。