物価高が追い風に!? 食品ロス削減の新たな動きに注目

食べられるのに捨てられてしまう、食品ロス。国内でも1年間で東京ドーム4個分の食材が捨てられ大きな課題になっています。

一方、最近では記録的な物価高のなか、対策の一つとして「食品ロス」を減らす取り組みが注目されています。新たな技術にサービスの動き、その最前線を取材しました。

日本の食品ロスのいまは

FAO=国連食糧農業機関の調査ではまだ食べられるのに捨てられている食品、「食品ロス」が世界全体で年間13億トンにのぼると推計されています。

こうした食品ロスは廃棄に伴う温室効果ガスの排出や貧困問題などさまざまな観点から国際的な課題となっていて、日本でも2019年に食品ロスの削減を進めるための法律が施行されました。
この法律で政府は企業に対し、製造や販売などの過程で食品ロスを出さないよう生産体制やサービスの見直しを求めています。

一般の消費者に対しても「賞味期限」が過ぎてもすぐに捨てずに食べられるかどうかを判断することや、買い物や外食などでは食べきれる分だけを購入するなど食品ロス削減への協力を呼びかけています。
こうした取り組みの効果もあり、日本国内で発生した食品ロスの量は、2020年度には522万トンと推計され、2019年度より48万トン削減されました。

それでも、容積に換算すると東京ドームおよそ4個分の食品が捨てられている計算となり大量の食品ロスが出続けています。

新型コロナ収束後に 食品ロス増加の懸念も

政府は2030年度に食品ロスの発生量を2000年度と比べて半減させるという削減目標(489万トン)を掲げていますが、新型コロナの感染拡大が収束し経済活動が本格的に再開されると、今後、食品ロスが再び増えていくことも懸念されています。

“年間1000トン削減目指す” 食品加工の現場では

こうした中、食品宅配大手の「オイシックス・ラ・大地」は、見た目や大きさが不ぞろいな規格外の野菜などを加工する専用の施設を神奈川県内に新たにつくり、今月、本格的に稼働を始めました。

そのまま食べられるものはカット野菜に加工し、皮に近い部分や硬い部分は、加熱・冷凍などの独自の技術を使って材料として活用します。

会社では、3年後には年間1000トンの食品ロスの削減を目指すとしています。

東海林執行役員 “消費者にも得になる施設に”

経営企画本部の東海林園子執行役員は「最近では物価高や円安が進んだことで限られた食材を大切に消費しようという意識が広がってきている。生産者だけでなく、消費者にとっても得になる施設にしていきたい」と話していました。

“食べきれないなら 持ち帰ろう” レストランでは

全国のデパートでつくる「日本百貨店協会」はデパートのレストランで食べきれなかった料理を客に持ち帰ってもらう実証試験を今月行っています。

全国18のデパートに入る飲食店が参加し、このうち東京・池袋にあるデパートの中華料理店では、食べ残した料理を持ち帰るための専用の紙の箱を希望する客に提供しています。

1日10組ほどが利用しているということです。

訪れた客は「取り組みのおかげで持ち帰りたいと気軽に言えるようになりました」と話していました。
そごう・西武の佐藤宏一さんは「寄せられたお客様の声も聞きながら、今後の導入などを検討していきたい」と話していました。

農水省 “値上げで食品ロス問題はますます重要に”

農林水産省の担当者は「最近ではさまざまな食品の値上げや円安による輸入食材の高騰もあり、食品ロスの問題はますます重要になっていると思う。引き続き、企業や消費者に幅広く削減への協力を呼びかけていきたい」と話しています。