新型コロナ専門家会合 新規感染者数増加続く可能性 第8波も

新型コロナウイルス対策について助言する、厚生労働省の専門家会合が開かれ、全国の新規感染者数は増加に転じ、増加傾向が続く可能性があると指摘しました。専門家はヨーロッパやアジアの一部の国々の状況からみても「第8波」が起きる可能性が非常に高いと分析しています。

専門家会合は、新型コロナの現在の感染状況について連休の影響を考慮する必要があるとしたものの、ほぼすべての地域で増加に転じ、特に北海道や東北で大きく増加していると指摘しました。

高齢者の新規感染者数も増加に転じていて、減少が続いていた重症者や亡くなる人の数は下げ止まりとなっているとしています。

また、ワクチン接種や感染によって獲得した免疫は時間とともに低下すると考えられ、60代以上では感染による免疫の獲得は少ないことから、今後、高齢者での感染拡大が懸念されると指摘しました。

そして、不確実性はあるものの、大都市などでの短期的な予測では増加傾向が続く可能性があるほか、インフルエンザとの同時流行も懸念されるとしています。

会合では、専門家が今後の感染拡大の「第8波」のリスクについての評価を示し、国内の多くの地域で感染者数が増加に転じていることや、ヨーロッパやアジアの一部の国々で感染拡大が起きている状況などから「第8波の流行が起こる可能性は非常に高いと考えられる」と分析しました。

専門家会合は、高齢者や重症化リスクの高い人に限られた医療資源を適切に提供するための医療体制の強化と重点化や、新型コロナとインフルエンザのワクチン接種を進めることが重要だとしました。

そして、感染者数が膨大となり医療のひっ迫が生じた場合や、ウイルスの変異で病原性が強まった場合などは、行動制限を含めた強力な措置が考えられると指摘しました。

そのうえで改めて、場面に応じた正しい不織布マスクの着用や換気を行うこと、飲食はできるだけ少人数で飲食時以外はマスクを着用すること、症状があるときは外出を控えることといった基本的な感染対策を続けるよう求めました。

前週比1.35倍 およそ2か月ぶりに増加

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、19日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.35倍と8月下旬以来およそ2か月ぶりに増加に転じています。

首都圏の1都3県では
▼東京都が1.25倍
▼神奈川県が1.16倍
▼埼玉県が1.23倍
▼千葉県が1.20倍と
増加に転じています。

関西では
▼大阪府が1.40倍
▼兵庫県が1.49倍
▼京都府が1.22倍

東海でも
▼愛知県が1.28倍
▼岐阜県が1.46倍
▼三重県が1.45倍となっていて
▼和歌山県が1.75倍
▼北海道と香川県が1.60倍など、沖縄県を除く46の都道府県で増加しています。

人口10万当たりの直近1週間の感染者数は
▼山形県が426.49人と全国で最も多く
次いで
▼北海道が396.93人
▼秋田県が336.63人
▼長野県が325.63人などとなっているほか
▼大阪府が204.99人
▼東京都が169.36人
▼全国では196.71人となっています。

加藤厚労相「接触機会増加の影響を注視」

加藤厚生労働大臣は現在の感染状況について「新規感染者数は増加に転じ、重症者数や死亡者数も下げ止まりとなっている。社会経済活動の活発化によって、人と人との接触機会が増加することの影響を注視していく必要がある」と指摘しました。

そのうえで「新型コロナとインフルエンザの同時流行に対応するため、地方自治体に地域の実情に応じた外来などの体制整備をお願いしており、緊密に連携して備えていきたい」と述べました。

脇田座長「気候の要因なども踏まえて注意必要」

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で脇田隆字座長は、現在の感染状況について「第7波では、中国や四国、九州・沖縄など西日本の感染レベルが高く、東北地方や北陸はそれほどではなかった。しかし、いま、北日本中心に感染者数の増加のスピードが速くなっていて、寒くなっている地域から感染拡大が始まっているかもしれない。こうした気候の要因なども踏まえて今後、感染拡大の状況を注意して見ていく必要がある」と指摘しました。

そのうえで、感染拡大の「第8波」が始まったのかと問われたのに対し「先週の連休の影響や検査の実施状況なども含めて評価すべきだ。一過性の増加なのか、次の感染拡大の波となるか、しばらく様子を見ていく必要がある」と述べました。

専門家「第8波の流行が起こる可能性は非常に高い」

20日に開かれた専門家会合では、東北大学の押谷仁教授や京都大学の西浦博教授ら専門家が感染拡大の「第8波」のリスクについてまとめた資料を示し、「第8波の流行が起こる可能性は非常に高いと考えられる」と評価しました。

この中で専門家は、現在の新型コロナウイルスについて、広がるスピードや感染した場合の重症度、それに感染する可能性のある人の多さなどを考慮したうえで最近の感染状況を踏まえてリスクを評価しています。

それによりますと、「第8波」のリスクについて、国内では多くの地域で感染者数が増加に転じているほか、海外でもECDC=ヨーロッパ疾病予防管理センターの報告ではヨーロッパの30か国中17か国で感染者数の増加傾向が見られ、アジアでもシンガポールなどで増加傾向が見られるとして、「第8波の流行が起こる可能性は非常に高いと考えられる」としています。

また、アメリカ・ノースカロライナ大学のグループの研究で、ワクチンの重症化予防効果が8か月程度で下がってきているという報告を紹介したうえで、多くの高齢者は3回目の接種から8か月たっているとしたほか、4回目の接種率が76%程度であることや、60歳未満の多くの人は今後4回目の接種となることが第8波のリスクに影響する可能性があるとしています。

また、感染状況に影響する可能性があることとして、日本では人口あたりでみた感染者の割合が海外よりも低いことも挙げています。

これに加えて、呼吸器に感染するウイルスが流行しやすい冬に向かっていくことや、12月以降、忘年会などさまざまなイベントがあることや人の移動が増えていることが感染拡大のリスクを高め、冬場には心筋梗塞や脳卒中などで救急患者が多くなることもあり、「第8波」でも医療ひっ迫が起きるリスクは高いと考えられるとしています。

押谷教授は会合のあとの会見で「感染の波が少しずつ立ち上がっている可能性があり、『第7波』を超える規模になるかはまだ分からないが、大きな流行や医療がひっ迫する状況は避けなければいけない」と述べました。

また、京都大学の西浦博教授は取材に対して「すでに『第8波』が始まっていると考えている。都心部や北海道など全国的に増加傾向にある。これまで自然に感染する人の割合があまり多くなかったところで、特に増えているようだ」とコメントしました。