ソニーとホンダ 3年後にEV販売へ 会社設立 “車の概念変える”

ソニーグループとホンダは、EV=電気自動車の開発と販売を手がける新会社を設立し、3年後に販売を始めると発表しました。
世界的にEVの開発競争が激しくなる中、最新の技術で映像や音楽などを楽しめる車内空間にし、“車は移動手段”という概念を変えることを目指すとしています。

両社が設立した「ソニー・ホンダモビリティ」は13日、ホンダ出身の水野泰秀会長とソニーグループ出身の川西泉社長が出席して都内で記者会見し、最初に販売するEVの計画を明らかにしました。

新たなモデルは、2025年から注文を受け付け、よくとしからアメリカと日本で引き渡す計画です。

価格は明らかにしていませんが、高級車の価格帯になるとみられ、車両は北米のホンダの工場で生産するとしています。

自動運転の機能を搭載するほか、車内には、複数のモニターや音響機器などを備え、映像や音楽などのエンターテインメントを楽しめるようにします。

また、ほかの企業との協業などで新たなアイデアも取り込み、“車は移動手段”という概念を変えることを目指すとしています。

会見で、水野会長は「モビリティ業界はデジタル技術とソフトウエアを震源地とした大きな変革期を迎えている。既存の自動車メーカーとは違う全く新しい姿にしていきたい」と述べました。

また、川西社長は「最先端のテクノロジーを詰め込み、新しい体験や価値を提供する。モビリティとITの融合させ、ワクワクする車をつくりたい」と述べました。

EVの開発競争が激しくなる中、新会社は車に新たな価値を加えることで、世界のライバルとの差別化を図りたい考えです。

日本勢 存在感示せるか

日本では、充電設備の不足などで新車販売に占めるEVの割合が1%未満にとどまる一方、中国やヨーロッパなどでEVは急速に普及しています。

このため、EVの販売台数で世界トップのテスラをはじめ、各国の自動車メーカーの間で新型EVを市場に投入する動きが加速しています。

調査会社のマークラインズによりますと、去年1年間に世界で販売されたEVは、アメリカのテスラが93万台、中国のBYDが32万台と販売台数を伸ばしています。

また、EV市場の拡大を見込んで、中国のネット検索大手バイドゥや台湾の電子機器の受託生産大手、ホンハイ精密工業がEVの開発に乗り出すなど、異業種の参入も相次いでいますが、日本メーカーの存在感は大きくないのが実情です。

こうした中、時代を先駆けた製品や技術を生み出してきたソニーグループとホンダが組み合わさることで、存在感のある次世代のEVを生み出せるかどうかが焦点です。

両社はともに独創性のある開発で業界をけん引してきました。

ソニーは、これまでにウォークマンや犬型ロボットのaibo、それにプレイステーションなど、さまざまな市場で新風を巻き起こしてきました。

また、ホンダも、厳しい環境規制を世界に先駆けてクリアしたこともあるエンジン開発の技術をはじめ、自動車以外の分野でも、2足歩行の人型ロボット「アシモ」や小型のビジネスジェット機「ホンダジェット」を開発するなど、世間を驚かせてきました。

「車は移動手段という既存の概念を変える」ことを掲げた新会社が、どのような車づくりを進めていくかに関心が集まっています。

次世代の車 関連業界も期待

自動運転のEVなど次世代の車の開発が活発になる中、関連業界でもこうした分野を新たなビジネスチャンスと捉えています。

このうち、ガラスメーカー最大手のAGCは、新しい車の窓ガラスの開発を進めています。

見た目は透明で、一見すると従来の車のガラスと何も変わりませんが、表面に特殊な加工を施しているため、プロジェクターを使って映像を投影することができます。

このガラスを使えば、将来的には自動運転での走行中に車のすべての窓をスクリーンにして映画やゲームなどを楽しんだり、仕事の打ち合わせをしたりすることが可能で、これまでにない車内空間を提供できるとしています。

会社は、2025年度までにこうした次世代のモビリティ分野に関連する売り上げを現在のおよそ2倍の400億円に引き上げる目標です。

大西夏行モビリティ事業本部長は「これからの車は車内の空間でどう過ごすかという点が非常に重要になってくる。車がどのように進化していくか先回りして考えることで、この分野の事業を成長させていきたい」と話しています。
また、車の内装デザインなどを手がける大阪市の総合インテリアメーカー、住江織物は、次世代の車の開発に対応するため、4年前に新たなプロジェクトチームを立ち上げました。

会社では自動運転が普及すれば運転席や助手席といった区別はなくなり、車内が自宅やホテルの一室のようなくつろぎの空間になると想定しています。

乗車している人が向かい合って座ることもできるよう、車内全体を取り囲むようにソファーを設置したり、高級なイスやテーブルを配置したりするなど、新しい車内のデザインを検討しています。

このプロジェクトを手がける古林成英さんは「次世代の車はこれまでにない新しい価値観が必要で、私たちもワクワクドキドキしている。内装デザインというわれわれの強みをいかしてビジネスチャンスにしていきたい」と話しています。