水際対策きょうから大幅緩和 入国上限撤廃 個人旅行も解禁

新型コロナウイルスの水際対策が11日から大幅に緩和されます。入国者数の上限が撤廃され、個人の外国人旅行客の入国も解禁されるなど、制限は、ほぼ、コロナ禍前の状態に戻ることになります。

具体的には1日当たり5万人としていた入国者数の上限が撤廃されるとともに、ツアー以外の個人の外国人旅行客もおよそ2年半ぶりに入国が解禁されます。

アメリカ、韓国、イギリスなど、68の国や地域から観光などで訪れる短期滞在者のビザを免除する措置が再開されるほか、地方の空港や港でも、順次、国際線の受け入れが再開される見通しです。

また、すべての入国者に対し発熱など感染が疑われる症状がなければ入国時の検査は行わず、入国後の自宅などでの待機も求めないことになります。

ただ、3回のワクチン接種を済ませたことの証明書か、滞在先の出発前72時間以内に受けた検査の陰性証明の提示を求める措置は今後も継続されます。

政府は、感染拡大が世界で最初に確認された中国・湖北省に滞在歴のある外国人などの入国をおととし2月に拒否して以降、さまざまな入国制限を行ってきましたが、ほぼ、コロナ禍前の状態に戻ることになります。

一方、国内の観光需要の喚起策として、政府が新たに全国を対象に導入する「全国旅行支援」や、スポーツ観戦や映画などのチケット価格を割り引く「イベント割」も始まります。

このうち、「全国旅行支援」は、東京都では、準備などで9日遅れて、今月20日からの開始となります。

岸田総理大臣は、先週の所信表明演説で、円安なども背景に、コロナ禍前を上回る額の、年間5兆円を超えるインバウンドの消費額達成を目指す考えを示していて、今後は、それに向けた取り組みも課題となります。

「水際対策緩和」これまでの動きは

日本を訪れる外国人旅行者は新型コロナの感染拡大前の2019年には3188万人と、5年間で2.3倍に増加し消費額は、年間4兆8000億円に上っていました。

しかし、新型コロナの感染が確認された後、政府は段階的に水際対策を強化し、航空各社では、国際線の運休や減便が相次ぎました。

このため外国人旅行者は2020年は411万人と前の年に比べて87.1%減少、2021年は24万人と、2019年と比べて99.2%減りました。

ことしに入ってからは水際対策が徐々に緩和されます。

4月には、日本人の帰国や、留学生など外国人の入国希望に対応するため、1日当たりの入国者数の上限を7000人から1万人に引き上げました。

そして6月に入り、添乗員つきのツアー客に限定する形で外国人観光客の受け入れをおよそ2年ぶりに再開。

1日当たりの入国者数の上限も2万人の範囲内に拡大しました。

しかし、受け入れが再開されたあとも、▽6月は252人、▽7月は7903人、▽8月は1万826人と、日本を訪れる外国人観光客の数は伸び悩みました。

旅行会社などからは欧米を中心に個人旅行を好む観光客が多いことや、ビザの取得が必要で手続きに時間がかかることなどが伸び悩みの理由として指摘されていました。

9月からは1日当たりの入国者数の上限を5万人に引き上げ、観光目的の外国人の入国について添乗員を伴わないツアーを認めました。

こうした中で、政府は11日から短期滞在のビザの取得免除や、外国人の個人旅行の解禁など、水際対策を大幅に緩和します。

マスクの着用のルールも整理へ

新型コロナの感染者の減少傾向が続いていることなどから、政府は、マスク着用のルールも整理する方針です。

マスクの着用について政府は、これまで、屋外では原則不要、屋内でも、人との距離が確保できて、ほとんど会話をしない場合は、必要ないとしています。

木原官房副長官は、先週「マスク着用のルールを含めた感染対策のあり方については屋外、屋内問わず全体を整理すると理解している。国内での着脱のあり方は海外から来る方も対象になる」と述べています。

G7で証明書の提示求める措置継続は日米2か国のみ

帰国者を含めすべての入国者に、ワクチン接種を済ませたことの証明書などの提示を求める措置は国内では今後も継続されます。

外務省によりますと、こうした措置をとっているのはG7=主要7か国では日本とアメリカの2か国だということです。今後の扱いについて政府は、国内外の感染状況や各国の対応などを見極めて検討することにしています。

台湾では日本の旅行への問い合わせ相次ぐ

日本の水際対策が緩和されることを受け、台湾では日本への旅行の予約や問い合わせが相次いでいます。

日本政府観光局によりますと、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の1年間に台湾から日本を訪れた旅行者は延べおよそ490万人にのぼり、国や地域別では中国と韓国に次いで3番目に多く、日本への旅行は人気を集めていました。

先月、日本の水際対策の緩和が発表されて以降、台湾では、旅行会社に日本への旅行の予約や問い合わせが相次いでいるということです。

このうち、台北市内に店舗がある大手旅行会社では、このところ海外旅行のなかでも日本を目的地とした旅行の問い合わせが最も多いということで、店長の男性は「11月の紅葉狩りや、冬の北海道でスキーや砕氷船、温泉などを楽しむプランが人気です」と話しています。

また、この旅行会社によりますと、団体旅行の予約も大幅に増え、およそ半数の行き先が日本だということで、人気の高さが伺えます。

台湾の大手旅行会社の広報責任者、頼一青さんは「この2年ほどは海外旅行の業務がなくなってしまいましたが、先月末以降は問い合わせが多く寄せられ、とても忙しくなりました。旅行業者にとっては非常によいニュースです」と、話していました。

香港では

香港でも日本への旅行を計画する人が増えています。

香港の北部に暮らす夫婦は、新型コロナウイルスの感染が広がる前、毎年、年に3回ほど日本を訪れていましたが、この2年半余りは、一度も行くことができませんでした。

しかし先月、香港で義務づけられてきた隔離措置が撤廃されたのに続き、日本で自由な個人旅行が認められるようになったことから、日本への旅行を計画しています。

2人はガイドブックをみながら訪れる場所を考えたり、旅行代理店を訪れて航空券とホテルの代金の見積もりをとったりして、具体的な旅行先を検討していました。

また、これまでにたびたび両替店を訪れて買い物などで使うための資金としておよそ60万円を用意したということです。

48歳の妻は、日本への旅行について「楽しみです。早く行きたいです。大阪、東京、北海道とか。食べ歩きや買い物がしたいです」と話していました。

また51歳の夫はこの2年半余り、日本に行けなかったことについて「旅行に行けなくて、すごく退屈でした。香港の人たちは日本のことを第2の故郷だと思っています。最低でも10日は行きたいです」と話していました。

香港で日本は人気の旅行先で、リピーターも多いと言われていて新型コロナウイルス感染拡大前の2019年には、延べおよそ230万人が日本を訪れています。

松野官房長官「円安のメリットも生かしつつ需要回復を」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で、「国内でウィズコロナに向けた新たな段階へ移行していることや、G7各国による水際措置の撤廃が進んでいることなどを踏まえたものだ。円安のメリットも生かしつつ、国際的な交流を一層活発化させるもので、わが国の社会経済活動に資する。また、全国旅行支援も開始されるので、国内外からの観光旅行も促し、コロナ禍からの需要回復、地域の活性化につなげていきたい」と述べました。

山際経済再生相「インバウンド盛り上げるメニューを」

山際経済再生担当大臣は閣議のあとの記者会見で、「経済が活性化されることを期待している。インバウンドの利益を最大化させるように官民あげてやっていかなければならず、今回、取りまとめる経済対策の中にも、インバウンドを盛り上げていくメニューをあげていかなければならない」と述べました。

加藤厚労相「変異株の情報分析 収集を」

加藤厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で、「3密の回避や換気、必要に応じたマスク着用などは海外の方も含めてお願いしていきたい。海外でも日本でも変異株の情報は常にチェックしているので、情報の分析、収集をしっかり進めていきたい」と述べました。