ニホンウナギの稚魚や幼魚 北海道の川から相次いで見つかる

絶滅のおそれが指摘されているニホンウナギの稚魚や幼魚が、これまで生息地とされていなかった北海道の川から相次いで見つかったと、東京大学と北海道大学の研究グループが明らかにしました。気候変動などの影響でウナギの生息地が北上している可能性もあるとして、詳しく調べることにしています。

東京大学と北海道大学によりますと、おととし5月、北海道南西部の川で調査を行ったところ、体長6センチほどのニホンウナギの稚魚、16匹が見つかりました。

このため、去年も同じ川を調査した結果、稚魚9匹に加え、より成長した体長20センチほどの幼魚も確認されたということです。

研究グループによりますと、北海道で成長の初期段階のウナギの稚魚の生息が確認されたのは初めてで、さらに今月の調査でも、同じ北海道南西部にあるほかの川で幼魚などが見つかったということです。

このため研究グループは、これまでウナギの生息地とされていなかった北海道が、気候変動などの影響で新たな生息地となっている可能性があるとしていて、北海道の川でウナギがどう育っているのか、生態を詳しく調べることにしています。

東京大学大学院情報学環の黒木真理准教授は「今後、地球が温暖化すると、北海道がウナギの重要な生息地になる可能性がある。どのような場所を好んで生息しているかを知ることが保全の上でも重要だ」と話しています。

ニホンウナギの回遊ルートは

ニホンウナギは、日本や中国、韓国、台湾などの東アジア地域に生息していて、太平洋のマリアナ諸島沖で生まれた稚魚が北赤道海流や黒潮に乗って東アジア地域の沿岸にたどりついたあと、川などで育つと考えられています。

東京大学と北海道大学の研究グループによりますと、日本での生息地の北限は青森県とされていて、北海道では過去に、成長したウナギが取れたとの記録がわずかにあるものの、かつては放流も行われていたことから、天然のウナギかどうかはわかっていなかったということです。

研究グループは、稚魚が北海道の川にまでたどりついていると指摘したうえで、気候変動などの影響で黒潮の流れが強まったり海水温が上昇したりして回遊ルートが北上している可能性があり、さらなる調査が必要だとしています。

また、今月、北海道南西部で行われた調査では、水温17度ほどの川で、ヤマメやニジマスなどサケの仲間とともにウナギが採集されたということです。

北海道の川は、本州より水温が低く餌も異なることから、研究グループでは川でウナギがどう育っているのかを調べるとともに、北海道で育ったウナギがマリアナ諸島付近まで産卵のために戻っているのかについても調べたいとしています。

老舗うなぎ料理店の店主「驚いた」

札幌市中央区にある創業74年の老舗うなぎ料理店の店主は、北海道でニホンウナギの稚魚や幼魚が見つかったことについて「生息地は青森までだと思っていたので驚きだ」と話していました。

「うなぎ二葉」では夏の土用うしの日を前に、21日も昼前から大勢の客でにぎわっていて、うな重を食べに夫婦で訪れた札幌市内の80代の男性は「1年に1度、この時期にうなぎを食べに来る。やはりおいしいね」と話していました。

店では主に九州や東海地方で稚魚から養殖されたうなぎを仕入れていて、1匹を有効に利用しようと大きめに育てられたうなぎを仕入れるようにしているということです。

ただ、この夏は、土用のうしの日に向けた稚魚の漁獲時期が遅れて産地での養殖が遅く始まったため、流通しているうなぎの量が、平年より少ないということです。

うなぎ二葉の店主、松野吉晃さんは「ウナギの生息地は青森県までと聞いていたので驚いた。北海道がウナギの生息地になることは、資源を増やすという観点ではよいことだと思う」と話していました。