“目の日焼け”症状は?子どもの時から目の紫外線対策が必要?

“目の日焼け”症状は?子どもの時から目の紫外線対策が必要?
突然ですが皆さん、サングラスってかけてますか?

この夏、暑さが続き、私(35)は初めて購入しました。
でも、会社の最寄り駅からは同僚に見つかって笑われるのが恥ずかしい…と、結局外して歩いています。

そんな私だからこそ、皆さんにお伝えしたい。
“サングラス、かけたほうがいいんですって!”

(ネットワーク報道部 秋元宏美 鈴木有 高杉北斗 鈴木雄大)

「通勤・通学サングラス、はやってくれ!」

私がかけるようになったのには理由があります。

いわゆる「アラフォー」に突入してから、日光を浴びると目がしぱしぱして疲れるのを実感し始めているからです。
恥ずかしさを除けばサングラス生活は思いのほか快適だったので、以前から目の病気を患っていた実家の母(65)にも勧めたところ…
お父さんにも変だって笑われるし、田舎じゃかけてる人もいなくてジロジロ見られて恥ずかしいからもうかけたくない!
と拒否されてしまいました。

お母さん、そのなんとも言えない気持ち、わかるよ。

ネット上でも、
『光過敏のせいで日ざしがしんどくてサングラス買ったら女優気取りみたいで恥ずかしい。マスクしてたらもう不審者じゃん、つらい』

『じいさんが白内障になったこともあって、日ざしがひどい日はつけるようにしようと思ったけど、そんなやつ誰一人としていなくて恥ずかしい。通学通勤サングラス、はやってくれ』
目の健康のために使いたいけど、周囲の目が恥ずかしい…。

そんな仲間がたくさんいました。

サングラス姿の運転士、どうですか?

サングラスをかけると、どうしても気になる周囲の目線。

「じゃあ実際どう思っているのか、聞いてみることにした」という会社がありました。

広島で路面電車を運行する「広島電鉄」です。
仕事柄、窓越しに降り注ぐ日ざしを浴びることも多い運転士から「太陽の光や雨上がりの照り返しがまぶしい」という声があがっていたことから、安全面はもちろん健康対策の面からもサングラスの導入に向けた検討を始めました。

実はJR西日本など一部の鉄道事業者では、すでにサングラスの着用は導入されています。

しかし、路面電車の運転士は接客業務も担うため「利用客にマイナスの印象を与えないか」を検証する必要があると考えたということです。
広島電鉄電車事業本部 竹林千尋さん
マスクにサングラスだと表情が見えないし「怖い」という印象があるかもしれません。接客に与える影響が大きいのではないかと考えました。その影響を検証したいと実際にお客様に着用した姿の印象を調査することにしたんです。

果たして“見た目”は…

今月1日から17日にかけて、3人の運転士が路面電車を運行する際に実際にサングラスを着用してみました。そして運転士の印象について、インターネットでアンケート調査を行っています。

広島電鉄によると一部の利用者から「見た目が怖い」という意見が寄せられたものの、これまでに寄せられた声のほとんどは着用に好意的なものだったということです。
広島電鉄電車事業本部 竹林千尋さん
「運転者の安全が第一」とか「運転士の健康が事故防止につながるのであれば見た目は関係ないからぜひ着用して」と言っていただいたので、うれしく思っています。

目も“日焼け”するんです

実際、太陽の光が目に入るとどんな影響があるのか。

目の病気に詳しく日本角膜学会の理事長も務める杏林大学の山田昌和教授に話を聞いてみました。

教えてくれたのは「目も“日焼け”する」という事実でした。

いったいどういうことなのでしょうか。
日本角膜学会理事長 杏林大学 山田昌和教授
日光に含まれる紫外線は殺菌に使われますが、人の細胞をも殺す作用があります。

体の表面は皮膚である程度守られているのに対して目はむき出しになっているので、光には弱いんです。

紫外線を強く浴びると目の黒い部分の「角膜」、白い部分の「結膜」の両方とも少しずつ細胞が死んでいきます。

皮膚も赤くなって腫れることがありますよね。あれと同じことが起きるんです。
なるほど、目が紫外線を強く浴びると「角膜」「結膜」の細胞が少しずつ死ぬ、ということなんですね。
山田教授によりますと、こうした場合には目が赤くなってごろごろしたり、ひどい場合は見えにくくなる「急性」の目の症状が出ることもあるということです。
山田教授
1日外で過ごして『目がゴロゴロする』などの症状が出た場合でも、軽いものはたいてい翌日には治っています。

一方でもし翌日まで『目が赤い、痛い、ゴロゴロする』という状態が続いていたら、早いうちに眼科で見てもらったほうがいいです。

子どものころの紫外線が…

一方で山田教授によりますと、こうした「急性」の症状に加えて、長い年月を経て影響が出る「慢性」の症状もあるということです。

子どものころに浴びていた紫外線によって大人になってから病気になることもあるというのです。
山田教授
皮膚にシミができるのと同じように白目の部分にシミができることがあるほか、黄色や赤っぽい隆起ができたり目に膜がかぶったりする病気があり、こうしたものが「紫外線障害」の代表的なものです。

また珍しいですが、目にがんができることもあります。放置すると失明につながる「白内障」も紫外線が原因になることがあります。

こうしたものは10年、20年と紫外線を浴び続けたことで出てくる病気なので、紫外線対策は子どものころからある程度したほうがいいです。
これまで皮膚の日焼けは気にしてきたものの「目の日焼け」やその先の症状のことは正直あまり意識したことがありませんでした。
しかも「子どものころからの紫外線対策」が必要とのこと。

最近サングラスを買ったばかりの私は、これからどうしていけばいいのか。

山田教授はチェックすべき注意点と有効な対策についても教えてくれました。
山田教授
自分の目をよく見たときに、シミや隆起があるならばダメージのサインです。

悪化を防ぐために対策をしたほうがいいでしょう。

薄い服を一枚着ているだけで皮膚の日焼けを防げるように、基本的には素通しであってもメガネをかけることである程度目に入る紫外線を防げます。

さらに言えば「紫外線カット」と書いてあるサングラスを選ぶのがいいです。

あとはコンタクトレンズもたいてい紫外線カットになっているので、そういうことを気にして選んでいただいたほうが望ましいです。

野球少年がサングラスをかけるまで

実際に、目に紫外線の影響が出てサングラスをかけるようになった小学生もいます。

少年野球に打ち込む小学6年生のまさひろくんです。
まさひろくんがサングラスをし始めたのは小学4年生のころです。

ある日練習から帰宅すると、父の征洋さんがまさひろくんの目が充血していることに気付きました。

はじめは寝不足かも、などと話していましたが、野球の練習や試合から帰宅するたびに症状が出るので、眼科で診察を受けることにしました。

医師の診断は「目の充血には紫外線が影響している」というものでした。

将来的に白内障などになるかもしれないとの話もあり、征洋さんは紫外線から目を守るための対策として「サングラスをかけよう」と判断。

そのことを少年野球チームの監督にも説明し、了承を得ました。

ところが当のまさひろくん、はじめは「まわりと違う」という抵抗感からかけることを拒みました。

それまでメガネもしていなかったので、目の周りに何かを着けること自体に違和感もありました。

あの手この手の結果…

それでもなんとか息子の目を守りたい父。

まわりの目を気にする息子に、あの手この手の作戦を実行します。
作戦その1「選択肢増やす作戦」
はじめはサングラスの色は黒だけでしたが、その後赤や緑のものも購入し、まさひろくんが気分で違う色を選べるようにしました。

作戦その2「まさひろくんよいしょ作戦」
まさひろくんがサングラスをかけた姿を見て「おお、メジャーリーガーみたいやん!」と言って必死に「よいしょ」する。
特に阪神ファンのまさひろくんには「鳥谷も近本もサングラスかけてる!」のひとことが効果てきめんだったとのことです。

こうした父の努力が功を奏し、まさひろくんはサングラスをかけるようになりました。
ところがこのあと、思わぬ壁が立ちはだかります。

サングラスは“ファッション”?

それは、野球の大会関係者からの指摘でした。

市の大会に出場したまさひろくんがショートの守備についていた時。
その姿を見た大会関係者から「なんでサングラスなんて着けているんだ」という指摘を受けたのです。

これを受けて父・征洋さんは、その後の試合ではサングラスを外して出場させました。

後日開かれた会議で大会運営側からは
「もし守備の際にボールが当たってサングラスが割れ、ケガをしたらどうするのか」

「野球はファッションでやっているのではない。サングラスをかけているとチャラチャラしているように見える」
といった意見が出たということです。

こうした意見に対して父・征洋さんは「全国軟式野球連盟では投手以外のサングラスの着用が認められていること」を説明したほか、紫外線による目の充血が起きたまさひろくんの症状や、将来への影響の可能性についても丁寧に伝えました。

その結果、大会でもサングラスの着用が認められるようになったということです。

「かけるかどうか選べる環境を」

今では同じチームの仲間たちもかけるようになり、近隣の小学校のチームでも着用する子も増えてきたとのことです。
まさひろくんはそうした状況に「俺のマネをしている!」と誇らしげな様子で、今では「きょうは緑をつけていくわ!」とサングラスをして意気揚々と試合に行っているということです。

征洋さんは一連の出来事を通して「サングラスをかけるかどうか選ぶことが気軽にできるような環境になってほしい」と願っています。

「自分の目を守るために」

サングラスをかける人への印象や固定概念、かける側にとっての抵抗感のようなものは、なかなか簡単には変わっていかないかもしれない、と思います。

それでも電車の運転士や少年野球のケースのように「自分の目を守るためにかけている」という知識や考えを持つ人が増えていくことで、かけようとした時に抵抗なく選べるようになっていってほしいと思います。

私も最寄り駅から歩く時、人目を気にして外したりせずに歩いてみることにします。

そして実家の母にも、もう一度サングラスを勧めてみようかな、と思案中です。

あの手この手の作戦の手始めに、まずはこの記事を読んでもらうところから始めてみようと思っています。

最後に…紫外線の豆知識

最後に紫外線について、役に立つ豆知識を少しだけ。

環境省がまとめた「紫外線環境保健マニュアル」によると「太陽が頭上にくるほど強い紫外線が届く」ということです。

1日のうちで最も強いのは「正午ごろ」、また1年の中では「6月から8月にかけて」が最も紫外線が強くなります。

つまり、今とこれからの時期、ということになりますね。

一般的に日本では北から南にいくにつれて強くなり、たとえば沖縄と北海道では年間の紫外線量は2倍ほどの違いがあるということです。

また山に登ると空気が薄くなるので、より強い紫外線が届き、経験がある方も多いと思いますが雪や砂は紫外線を強く反射するのでスキーや海水浴では強い日焼けをしやすくなるということです。

日陰にいたり帽子をかぶったりしていても、地面や建物から反射する紫外線までは防ぐことができません。

こうした場合、紫外線防止効果のあるメガネやサングラスを適切に使用すれば、目に入ってくる紫外線の9割を防ぐことができるということです。

この際、マニュアルでは「顔にフィットしたものを着用すること」としているほか、

注意すべき点として、

「色の濃いサングラスをかけると目に入る光の量が少なくなるため瞳孔がふだんより大きく開き、紫外線カットの不十分なレンズではかえってたくさんの紫外線が目の中へ侵入する場合がある」

として、注意を呼びかけています。