ウクライナ避難民支援で学生ボランティアがポーランドへ出発

ロシアの軍事侵攻を受け、ウクライナから避難した障害のある人などを支援しようと、日本財団が派遣する学生ボランティアの出発式が行われ、ウクライナの隣国のポーランドに向けて出発しました。

出発式は30日に東京都内で開かれ、日本財団ボランティアセンターに応募があったおよそ230人から選ばれた人のうち、25人が出席しました。

式では財団の樺沢一朗 常務理事が「コロナの影響で国内にも海外にも出られていないと思うが、いま世界がどう動いているか知る貴重な経験にしてほしい」と述べました。

これに対し、ボランティアを代表してきょうから2週間あまりポーランドに派遣される、早稲田大学2年の齋藤凛花さん(19)は「私は生まれつき難聴がありますが、障害者の1人として避難した人たちがどれだけ不安で感情を押し殺しているか想像するだけで心が苦しいです。心細さや生活の不便さを減らしたいです」と抱負を語っていました。

財団によりますと、ウクライナ国内にはおよそ270万人の障害者がいて国外に避難した人もいますが、支援は行き届いていないとみられ、学生たちはポーランド南部のクラクフを拠点に現地のNGOと協力しながら障害者や子どもの支援、それに医薬品や食料品の配布などを行うということです。

財団では10月ごろまでにあわせて105人の学生ボランティアを派遣する予定で、今後も改めて募集するとしています。

参加する学生ボランティア「私にできるすべてを尽くしたい」

学生ボランティアとして活動するうちの1人、早稲田大学の齋藤凛花さんは、生まれつき聴覚に障害がありますが、ウクライナからの避難を余儀なくされた障害がある人たちを支えたいと考え、今回、ボランティアに応募しました。

齋藤さんは、生まれつき耳が全く聞こえず、1歳半のときから音を電気信号に変えて脳に伝える「人工内耳」を左耳に装着しています。

聴覚の訓練を受けてきたこともあって、騒がしい場所での人の声などが聞き取りづらいことはあるものの、日常の会話にほぼ不自由はありませんが、これまでに聴覚に障害があることを理由に、学級委員への立候補や海外留学に反対された経験があるということです。

大学生になってからは、さまざまな分野で活躍する専門家から話を聞いたり、障害者の支援について考えたりするゼミに大学の枠を超えて参加していて、将来は国際機関で働くことを目指しています。

今回、ポーランドを拠点に活動し、体の不自由な障害者の車いすでの移動の補助や、自閉症がある子どもたちの遊び相手になるなどの精神的な支援、それに難聴がある人が避難所で生活するための環境整備について自身の経験を生かして助言などを行うということです。

齋藤さんは、「ウクライナ、障害者支援という言葉が、目に飛び込み、参加することが自分の使命だと思いました。これまで前例がないという理由だけでやりたいことができなかった経験もあり、すごく悔しい思いを抱いてきました。障害によって生きていくことの難しさや厳しさを痛感してきた当事者だからこそ、困難な状況にいるウクライナの人たちの気持ちを理解して寄り添えると思います。現地では私にできるすべてを尽くしたいです」と話しています。