宇宙飛行士の若田光一さん ISSから地球に帰還 日本人最長滞在

国際宇宙ステーションに長期滞在していた若田光一さんら4人の宇宙飛行士が乗った宇宙船が日本時間の12日午前、アメリカ・フロリダ州の沖合に着水しました。
およそ5か月ぶりに地球に帰還し、宇宙船から姿をみせた若田さんは迎えた作業員と笑顔で言葉を交わしていました。

若田光一さんは去年10月からおよそ5か月、国際宇宙ステーションに滞在していて、この間、自身初となる船外活動や今後の月や火星探査を見据えたさまざまな実験に取り組んできました。

滞在を終えた若田さんら4人の宇宙飛行士は、打ち上げの際に乗ってきたアメリカの民間宇宙船・クルードラゴン「エンデュランス」に搭乗し、日本時間の11日午後4時ごろ、宇宙ステーションを離れました。

そして、およそ18時間後に地球への帰還に向けたエンジン噴射を行って大気圏に突入しました。

宇宙船は上空でパラシュートを開いてゆっくりと高度を下げ、日本時間の12日午前11時すぎ、アメリカ・フロリダ州の沖合に着水しました。

宇宙船が専用の船に回収されたあと、若田さんは日本時間の午前11時55分頃、宇宙船から3番目に姿を現し、迎えた作業員と笑顔で言葉を交わしていました。

JAXA=宇宙航空研究開発機構によりますと、若田さんは今回の宇宙飛行の滞在期間が157日あまりとなり、宇宙での滞在時間、国際宇宙ステーションでの滞在時間ともに日本人最長になったということです。

若田さんの今回のミッション

日本人宇宙飛行士として最多となる5回目の宇宙飛行から帰還した若田光一さんは5か月余りにわたる国際宇宙ステーションでの滞在中、さまざまなミッションに取り組みました。

この中には今後の月や火星の探査を見据えたものもあり、
▽月や火星の表面を探査する「探査車」の設計に必要なデータを集めるため、車の潤滑油などに使われる液体が無重力状態でどのようなふるまいをするのかを調べました。

そのほか、
▽尿の成分を浄化して飲み水に再生したりする実験や、
▽将来、月面を探査する際に活用される予定の新たな宇宙ステーション「ゲートウェイ」などの宇宙飛行士が滞在する施設で火災が発生した場合を想定して、さまざまな材料が無重力状態でどのように燃えるのかを調べる実験を行いました。

また、日本の実験棟「きぼう」のロボットアームを使って、超小型衛星を宇宙空間に放出したりするミッションなども行われました。

このほか、ことし1月と2月には。若田さんにとっては初めてとなる船外活動を行い、新型の太陽電池パネルを取り付ける台を設置しました。

若田さんのこれまで

若田光一さんは、現在のさいたま市出身の59歳。九州大学大学院を修了したあと航空会社のエンジニアとして勤務し、1992年に宇宙飛行士に選ばれました。

1996年にスペースシャトルで初めての宇宙飛行を行い、4年後の2000年には2回目の宇宙飛行でロボットアームを操作して、国際宇宙ステーションの建設作業に参加しました。

そして、2009年の3回目の宇宙飛行では、日本人として初めておよそ4か月半にわたり宇宙ステーションでの長期滞在を行いました。

2010年には国際宇宙ステーションに長期滞在する各国の宇宙飛行士を管理するNASA=アメリカ航空宇宙局の部門長に日本人として初めて任命され、およそ1年間、務めました。

その後、2013年から翌年にかけての4回目の宇宙飛行では、ロシアの宇宙船「ソユーズ」に搭乗して宇宙に向かい、日本人で初めて宇宙ステーションの「船長」を務めました。

5回目となる今回の宇宙飛行では、アメリカの民間宇宙船「クルードラゴン」で宇宙に向かい、宇宙ステーションに滞在中は自身初の船外活動を2度行ったほか、今後の月や火星探査を見据えたさまざまな実験に取り組みました。

永岡文部科学相「ミッション完遂に敬意」

永岡文部科学大臣は談話を発表し、「大任を終えての無事の帰還を心から喜ばしく思う。わが国にとって国際宇宙ステーションでの活動は、国際的な月探査プロジェクト『アルテミス計画』や、地球から遠く離れた『深宇宙』に向けた国際宇宙探査に必要となる技術の実証のために重要なものであり、ミッションを完遂されたことに敬意を表したい。若田宇宙飛行士には、引き続き、わが国の宇宙開発の意義を国民や世界の皆さんにしっかり見えるような形で発信していただくとともに、有人宇宙開発の未来につながるような活躍をされることを期待している」としています。