【詳しく】電動キックボード 7月から新ルール どう変わる?

手軽な交通手段として都市部を中心に利用が広がっている電動キックボードについて、警察庁は、ことし7月から、最高速度や大きさなどの基準を満たしたものを対象に、自転車と同様の交通ルールを適用する方針を決めました。

電動キックボードの新たなルールについて、制度がこれまでとどのように変わるのかなど、ポイントをまとめました。

これまでの制度は?

現在、電動キックボードは大きく2つの種類に分けられてルールが決められています。
▽1つ目は、原付バイクやオートバイとして分類されるものです。

モーターの出力や最高速度に応じて、それぞれ原付バイクや普通自動二輪車などとして扱われます。このため、走ることができるのは車道のみで、ヘルメットの着用も義務づけられています。もちろん、運転免許が必要です。

▽2つ目は、国の実証実験として貸し出されているものです。

国の認証を受けた事業者が現在、東京や大阪など19の都府県で実施しています。最高速度が時速15キロ以下に設定されていて、法律上は「小型特殊自動車」として扱われます。1つ目の原付バイクやオートバイのものと異なってヘルメットの着用は任意となり、自転車専用道路も走ることができるなどの特例があります。利用する際は運転免許が必要です。

新たな制度でどう変わる?

原付バイクやオートバイとして分類されていたものは、これまでと変わりません。

一方で、7月1日から新たな制度が始まる見通しとなったことを受けて、国の実証実験の制度が廃止されます。そのうえで、最高時速など、基準を満たせば「特定小型原動機付自転車」として分類できる新たな制度が法律に設けられます。

「特定小型原動機付自転車」に該当するための基準は、
▽最高速度が時速20キロ以下に設定されていること。
▽車体に最高速度を表示する緑色のランプが備えられていること。
▽車体の大きさは、長さが190センチ以下、幅が60センチ以下などとされているほか、
▽ナンバープレートの取得や、ライトやミラーの装備も必要となります。

運転免許は必要なく、ヘルメットの着用も努力義務とされます。

ただ、16歳未満の運転は禁止されます。

法律改正のねらいは

一部の車両については運転免許が要らず、ヘルメットの着用も努力義務にとどまるなど、自転車と同じ感覚で利用できるようになる電動キックボード。7月から始まる新たなルールは「より手軽な利用」を広めたい事業者などの声に沿った形です。

一方で懸念されるのは事故や違反の増加。

このため、新たなルールでは、安全装備や違反行為についても詳細に定めていて、利便性の確保と交通安全の実現の両立を目指した内容となっています。

どこを走れる?

新たなルールが始まれば、地域を限定せず、走ることができます。また、公道では、原則として車道を走行します。

ただ、最高速度を時速6キロまでに制御できるなどの条件を満たすものについては、「特例特定小型原動機付自転車」として分類され、自転車と同様に歩道を走行することができるようになります。

歩道を走行中は車体に取り付けられている緑色のランプが点滅する仕組みになっていて、自転車と同様の交通ルールが適用されることになります。

交通違反したらどうなる?

交通違反は反則切符、いわゆる「青切符」などの対象となります。ただ、運転免許が必要ないため、点数が減点されることはなく、反則金の納付が求められます。

警察庁は、「特定小型原動機付自転車」の交通違反として信号無視や通行区分違反のほか、携帯電話を利用しながら走った場合など、17の違反項目を指定し、こうした違反を繰り返した場合は、専用の講習が求められます。
警察庁によりますと、各地の警察からの集計を始めた2021年9月から去年6月までに電動キックボードの交通違反で検挙されたケースは、全国で合わせて654件確認されています。

このうち、歩道を走行するなどの「通行区分」の違反が全体の65%を占め、427件と最も多かったほか、信号無視が14%に当たる89件でした。このほか、公道を走る際に必要なライトやミラーといった装備が適切に設置されていないなど、「整備不良」として指導・警告された件数が264件でした。

事故も相次いでいて、2020年から去年6月までに49件発生し、51人がけがをしたということです。

去年9月には東京 中央区の駐車場で、酒を飲んで電動キックボードに乗っていた50代の男性が車止めにぶつかり頭を強く打って死亡する事故も起きました。警視庁によりますと、この事故の際に乗っていた電動キックボードは国の実証実験で貸し出されたものだったためヘルメットの着用義務はなく男性もヘルメットは着けていなかったということです。

警察庁は、新たな制度で行われる交通違反者を対象にした安全講習などの対策を通して事故の防止につなげたいとしています。

今持っている電動キックボードはどうなる?

そもそも、最高速度や車体の大きさが基準に満たなければ「特定小型原動機付自転車」には該当しません。このため、既存の車両の多くは原付バイクやオートバイとして扱われることになる見通しで、必要な装備やヘルメットの着用、運転免許が必要です。

最高速度や車体などの基準を満たす場合は、緑色のランプの装着は来年12月まで猶予され、自治体で専用のナンバープレートを取得するなどした場合、「特定小型原動機付自転車」として利用することができようになります。

ただ、歩道は走行できません。