東京23区 12月の消費者物価指数4.0%上昇 40年8か月ぶり高水準

東京23区の先月の消費者物価指数は、天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が、前の年の同じ月と比べて4.0%上昇しました。
4%台の上昇となるのは、1982年4月以来40年8か月ぶりの高い水準となります。

総務省によりますと、東京23区の生鮮食品を除いた消費者物価指数は、先月中旬時点の速報値で、1年前の100から103.9に上がり、上昇率は4.0%となりました。

4%台の上昇となるのは、1982年4月以来40年8か月ぶりの高い水準となります。

主な要因は食料品の相次ぐ値上げで「生鮮食品を除く食料」は前の年の同じ月と比べて7.5%上昇し、1976年8月以来46年4か月ぶりの水準となっています。

具体的には
▽「食用油」が32.5%
▽「焼き魚」が24.6%
▽外食の「ハンバーガー」が18.3%
▽「炭酸飲料」が15.6%
▽「輸入品の牛肉」が13.1%
▽「チョコレート」が9.2%
▽「牛乳」が8.6%
と、それぞれ上昇しました。
エネルギーをみると
▽「ガス代」が36.2%
▽「電気代」が26%上がったほか、
去年11月に東京23区などのタクシー運賃が値上げされたことを受けて
▽「タクシー代」が14.4%上昇しました。

また、併せて発表された、東京23区の去年1年間の消費者物価指数は、速報値で、生鮮食品を除いた指数が前の年と比べて2.2%上昇しました。

2.2%の上昇率は2014年以来8年ぶり、消費税率引き上げの影響を除くと、1992年以来30年ぶりの水準となります。

総務省は「4%台の上昇率となった背景にはスーパーなどの小売りの現場でも値上げの動きが広がっていることがある。物価の動向を引き続き注視したい」と話していました。

東京23区の指数は全国の指数に先立って公表されるため、先行指標として注目されています。

先月の全国の指数は今月20日に発表されます。

【QAで詳しく】4.0%の上昇 専門家に聞く

4.0%上昇した今回、専門家はどう見ているのか。

SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストに聞きました。

Q.4.0%の上昇率について受け止めは?

A.上昇率は3.8%と予測していたが、それを大きく超えて4%に到達し驚きをもって受け止めている。

Q.大きく上昇した要因は?

A.「生鮮食品を除く食料」がおよそ46年ぶりの高い上昇率となるなど食料品の値上がりが全体を押し上げている。

円安や資源高の影響で、肉類や乳製品、魚介類などの価格が上がっているだけではなくさらにそれらを原材料にしている加工食品や外食にも値上げが広がり、価格転嫁が2重にも3重にも波及している。

Q.今後の物価の見通しは?

A.食料品の値上がりやエネルギー価格の上昇によって12月の全国の消費者物価指数は、生鮮食品を除く指数の上昇率が4%に到達する可能性がある。

その後、1月までは4%前後の高い上昇率が継続する。
2月になると電気代やガス代の負担軽減策によって、2%台後半になるのではないかと見ているが、それでも高い伸び率であるのには変わりはない。

その後は、ことし春には電気代の値上げも予定されることなどからことしも高い上昇率が続きそうだ。

Q.今後、物価高対策としては何が重要?

A.4%の上昇率は、今の現役世代が経験したことがない物価上昇であって、節約志向になりやすい。
足元では、コロナ禍からの回復で経済が正常化している過程なのでそこまで消費が悪くなっていないが、ことし高い物価の上昇率が続き、実質賃金がマイナスである状況が続くと、個人消費への影響はボディーブローのように徐々に出てくるのではないかと見ている。

その中で、欠かせないのが賃上げだ。

企業各社は、生産性を上げるなどして賃上げに取り組み、社会全体で賃上げを進めていくことが、消費の活性化につながっていくので、ことしの春闘は注目される。

商店街では物価高に苦境の声

さまざまな物の値段の上昇。東京 板橋区の商店街では、店の経営者や買い物客から物価高による苦境を訴える声が聞かれました。
このうち全国の特産物の販売店は、物価高の影響で商品の仕入れ値が上昇し、2000ほどある商品のうち、およそ半数を値上げせざるをえない状況になっているということです。

この販売店の店長は「お客さんの中には年金生活をしている高齢の人も多いので、これ以上の値上げはもうしたくないです」と話していました。

一方、値上げをせずに営業しているという店もあります。
この商店街にある老舗の和菓子店では、小豆や砂糖など多くの原材料が値上がりしていますが、消費者の買い控えへの不安から販売価格に転嫁することができないといいます。

70歳の職人の男性は「物価高に加えて新型コロナの感染拡大の影響もあるので、40年前よりも厳しい状況だと感じています。節約できるものを節約する、それを1、2年は続けざるをえない。今は耐えるしかないです」と話していました。

また、商店街に買い物に来た人たちも物価高による生活の厳しさを訴えていました。
子どもが生まれたばかりの30代の母親は「おむつの値段などが上がっているのに賃金は上がらないので、生活が厳しいです。育休中なので、できるだけお惣菜を買わず、自炊して節約しようとしています」と話していました。

日用品を買いに来た介護士の女性は「モノの値段は高くなっているのに、賃金は上がらないので厳しいです。1年前と比べると、1回の買い物にかかる金額は、500円くらい高くなったと思います。より安いスーパーを探して買うようにしています」と話していました。

売れ残りの歳暮用食品など安く販売 多くの客でにぎわう

都内のデパートでは、安い商品を求める多くの買い物客でにぎわっていました。

東京 上野の「松坂屋上野店」では、毎年この時期に前の年に売れ残った歳暮用の食品ギフトなどを割安な価格で販売しています。
会場では、食用油やコーヒー、乾麺など価格が上昇している商品や、今後値上げが予定されている商品の詰め合わせの多くが、メーカーの希望小売価格の半額程度で販売されています。

店によりますと、例年、食用油や菓子、コーヒーなどの詰め合わせが人気だということです。
松坂屋上野店で催しの企画を担当している山田隆之さんは「油やコーヒーの取り扱いについては、セールの開催前から問い合わせが多くありました。去年は記録的な値上がりの年だったと思うので、少しでも安く商品を提供したいです」と話していました。

松野官房長官「物価上昇を超える賃上げを」

松野官房長官は、記者会見で「原材料価格の上昇や円安の影響により光熱費や食料品など日常生活に密着した品目で値上げが続いており、物価上昇から国民の生活を守るとともに、物価上昇を超える賃上げを実現する必要があると認識している」と述べました。

そのうえで「電気、ガス料金などの上昇に対する負担緩和策について、1月の使用分から値下げを開始するとともに、賃上げに取り組む中小企業への支援の拡充などを促進し、構造的賃上げを実現していきたい。また予備費の機動的な活用を経済、物価の状況をしっかりと見極めたうえで必要に応じて検討していきたい」と述べました。

経団連 十倉会長「物価高に負けず 一過性でない賃上げを」

一方の経済界。
ことしの春闘が今月下旬から事実上スタートするのを前に「経団連」の十倉会長は10日の記者会見で物価の上昇に応じた賃上げを加盟企業に呼びかける考えを明らかにしました。

経団連の十倉会長は、東京23区の先月の消費者物価指数が前の年の同じ月より4%上昇し40年8か月ぶりの高い水準となったことについて「数字一つ一つにあまり反応するのではなく、2023年の物価の行く末、このあたりをよく吟味したいと思う」と述べました。

そのうえで「賃上げと物価上昇のいい循環となるよう、物価高に負けず、一過性でない賃上げを呼びかけていきたい」と述べ、ことしの春闘に向けた経団連の基本方針を近くとりまとめたうえで加盟企業に賃上げを呼びかける考えを示しました。